ボーナス無し、退職金無しで7年後に定年を迎えます。 ローンの繰り上げ返済を優先させるべきでしょうか?


山根 克規先生 (やまね かつのり) プロフィール
 
  • 住宅ローンの完済に貯蓄を全てつぎ込むことは精神的なストレスに繋がることも多い。 また不測の事態に対応できなくなることもあります。
  • 年金額を計算し、定年後の人生設計に必要な貯蓄に励みましょう。
  • 収入アップのために、ご自身だけではなく、「お金に働いてもらう」ことも重要です。

澤田かおりさん(仮名)のご相談

12年前に3500万の借り入れ、25年ローンで一戸建てを建築しました。その時の夫婦年収は900万ありました。4年後に借り換えをしたときに繰り上げ返済もして、4年短くなって現在あと10年残です。 しかし3年ほど前から夫婦の年収が激減。お互い退職金無し、ボーナス無しで、ローンもボーナス払いをそのままで月約15万を今均等に入金している状態です。

私は派遣の為、現在の手取り19万もいつまであるかわかりません。正社員になりたいと思っていますが、年齢的に厳しく先が不安です。私の収入が減るとかなり厳しい状況になるので、今のうちに貯蓄を崩してでもローン返済に充てた方いいのでしょうか?借り換えた住宅ローンが、後2年程で10年固定期間が終わります。 その時に繰り上げ返済をしてローンを短くした方が良いのでしょうか?

子供達の学費は以前掛けていた教育保険の満期で賄えていますが、この先の老後資金も不安です。

澤田かおりさん(仮名)のプロフィール

53歳の夫と長女25歳(海外留学中)と次女19歳の3人暮らし。

<家計の状況>
家族構成
50 歳 会社員
53 歳 会社員
長女 25 歳 学生 (海外留学中)
次女 19 歳 学生 (短大1年)
住居 持ち家(ローン返済中)

収入・預貯金
19万
25万
世帯年収 540 万円
預貯金 500万円(次女の学費100万円含む)
 
支出
ローン 15万円
光熱・通信費 5万
保険 夫1万4千円
妻1万4千円
固定資産税・車検など 2万5千円
ガソリン代(通勤含む) 1万5千円
こづかい 夫婦で3万
食費(昼代含む) 10万

ローン残(2口)
1:残年数8年
(10年固定金利3.23% 来年10月見直し)
残金1145万
2:変動金利 残年数13年 残金133万
合計 約1278万

ローン返済を続けながら家計を見直し、貯蓄を殖やして定年を迎えられるように

今の時代、住宅ローンは多くのご家庭において家計の不安材料ですね。 ましてやご夫婦で収入が減っている現状では大きなストレスだと思います。 そこで貯蓄を取り崩してでも完済したいとお考えの方もきっと多いことでしょう。

さて結論から申しますと、今回のケースでは貯蓄は取り崩さないほうがよろしいかと思います。 理由はまず完済するだけの原資がなく、もし全ての貯蓄を崩してしまいますと、それこそ大きなストレスになると考えられるからです。 確かに一部でも返済することができれば、それに応じた金利負担も減りますが、それよりも貯蓄がなくなる不安のほうが大きいと思います。 むしろ借り換えしてメリットが出るようでしたらそちらをお勧めします。

ご主人のお勤め先が、平気で給料やボーナスがカットされるようですし、奥様も派遣社員ということで不安定とのことですが、そうなりますと毎月の収入が急に途絶えることも考えなくてはいけません。そのためにもぜひ最低限の貯蓄は残しておきたいところです。今の貯蓄額も決して多くはないため、手をつけないことが大切です。

老後は住宅ローンがなければ15万円で生活ができるということですが、これまでの年金加入暦から推測し、かつ今後も今の収入を確保したとしますと、ご主人が65歳の時にどうにか夫婦で月15万円程度の年金になると考えられます。その後20万円くらいまでは見込めると思いますが、問題はご主人の定年と考えている60歳から65歳までの生活費です。 データから計算すると5年間で800万円以上不足する事になります。

現在、教育費以外の貯蓄で400万円ですから、残り400万円です。7年で貯めると言う事は年間約60万円必要です。 また4年後に自動車購入をお考えですからその分も必要です。車に関しては常に買い替えサイクルに応じて貯蓄が必要ですから、例えば7年に一度150万円の自動車を購入するなら毎年20万円以上、つまり月々2万円くらいは別途貯めないといけません。それも考慮に入れておいて下さい。さらにはマイホームのリフォーム資金なども確保したいところです。

そう考えると、毎月7万円の貯蓄が必要になります。 今の家計ではかなり無理がかかる数字です。 そのため1.今以上の収入を確保する、2.支出を見直す、3.資産運用も検討する、場合によっては60歳以降も働くという選択肢も検討しなくてはいけません。 また収入が減ってしまうと先ほどの年金にも影響が出ますので注意が必要です。

収入の確保は仕事の選択、副業の検討など、様々な角度から検討して下さい。

支出に関しては特に食費の見直しが必要でしょう。 通常の家計からすると食費にお金がかかりすぎているように見受けられます。

また住宅ローンの借り換えは十分に検討の余地があります。 借り換えのメリットを高めるには、少しでも低金利の方が有利ですので、今後金利上昇も予測される中、早いうちに銀行でのシミュレーションをお勧めいたします。

それでも目標額に達することが難しいようでしたら、60歳までの仕事をさらに延長することも検討しないといけません。 また老後の資金として個人年金にご加入のようですが、必要に応じて60歳からの生活費に当てる必要があるかもしれませんので、支給開始年齢、支給期間、支給額の確認をしておいて下さい。65歳以降に受け取りであれば、60歳時の解約返戻金としての受取額も確認しておく必要があります。

幸いなのが奥様のお母様がある程度の貯蓄をして下さっているということです。いよいよの際に助けてくれることになるかもしれませんが、お母様の今後の状況次第ではもしかしたら当てにできなくなることもありますので、あくまでもお二人の力で何とかされることを考えて下さい。

お子様お二人が独立心旺盛のように見受けられます。 きっとご両親の教育の賜物だと大変感心いたします。 昨今はパラサイトシングルやニートといった、親にいつまでも養われているお子さんも多い中、大変立派なことだと思います。 それゆえお子さんにかかる費用が、一般的なご家庭よりも少なくてすむことが、大きな救いです。

まとめますと、今後7年は最低限今の収入を確保しながら、将来への貯蓄に励んでください。その際に見直せる支出があれば、極力努力して貯蓄に回す資金を増やしましょう。合わせて収入アップが図れるように検討しましょう。 住宅ローンは、今の低金利のうちに借り換えをして低金利で金利を固定することも有効だと思います。それでも貯蓄が追いつかないようでしたら60歳以降にお仕事という事も考えなくてはいけません。

合わせて資産運用に少しでもチャレンジすることも検討してみて下さい。 今の貯蓄はなるべく割り込みたくないので、ハイリスクハイリターンの運用はあまりお勧めできませんが、資産運用にはローリスクローリターンのものから色々なものがあります。 また投資対象やタイミングを分散することでリスクを低くすることも可能です。少しずつ勉強して挑戦してみる価値はあると思います。お二人のみならず「お金に働いてもらう」という感覚は将来必ず役に立つと思います

早いうちからライフプランを立てずに、定年退職時に大変であることに気付く方も多くいらっしゃいます。そうならないためにも早め早めの準備を心がけて下さい。 ぜひ頑張って下さい。