目次
山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
|
川崎 奈穂さん(仮名)のご相談
収入は決して少なくないはずなのに貯蓄ができません。全体的に見直しをはかりたいと思っています。
結婚してから約15年共稼ぎでしたが2年前に退職しました。
すぐに見直して家計を引き締めればよかったのですが、退職金や失業保険があったこともあり、ずるずると今に至っています。ここ最近では大きな買い物もしないのに貯蓄を取り崩してしまっている有様です。
家計簿も最近になってつけ始めたので、どこにつけたらよいか項目に迷ったり、使途不明金が多かったりして、正確に家計状況を把握しきれていません。昨年と今年で40万円くらい貯蓄が減ってしまっています。
- 気になる点は、
- 下の子供が小さいので、定年をすぎても教育費がかかると思われること。
- 共働きの頃から多いと気になっていた保険が適正なのかどうかわからずそのままです。
- 仕事をしていた時必要だった車2台を、現在もそのまま所有しております。せいぜい週末ぐらいしか使わないのですが、とりあえず車検を受けて保有していますが不経済なこと。
どうかムダの多い家計を健全化できるアドバイスをお願いいたします。
川崎奈穂さん(仮名)のご相談 42歳、主婦。44歳、公務員の夫と14歳の長女と3歳の次女との4人暮らし。持ち家(ローン返済中)にお住まい。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
<家計の状況>
<収入>
<支出>
|
無駄な保険を減らして、目的別の家計管理を
1. 保険の整理で年間21万円の節約
掛け捨て中心なのに、保険料負担が毎月6万円以上にも達しているのは明らかに入りすぎです。会社員や公務員なら、万一のときには妻は遺族年金(遺族共済年金)が受け取れますし、仕事上の死亡やけがであれば労災などから上乗せで補償が受けられます。また、入院に関しても、公的医療保険の医療費の自己負担には月額での上限が設けられていますから、現在加入されているほどの手厚い保障は必要ありません。
ご主人の保険は、死亡保障を現在の約8600万円を半分程度に減らします。長女が私立に行っていて、次女は3歳でまだお金もかかりますが、2000万円以上の貯金があること、遺族年金や死亡退職金をもらえること、子どもが大きくなれば奈穂さんも働けることなどを考えると、4000万円程度あれば十分でしょう。入院についても、退職後も契約が続く定期付き終身保険の医療特約をベースと家族で加入している医療保険のみ残します。
具体的には、生命共済をやめてグループ保険を減額。がん保険は終身保障のもの一つだけ残します。病気でもけがでも保障される保険に複数入しているので、普通傷害保険も特に必要ありません。また、自動車保険が人身傷害補償保険で、自動車に乗っていないときにも保障するタイプであれば、家族全員の交通事故も補償されるので、交通傷害保険も必要ないでしょう。
また、奈穂さんは現在家計を担っているわけではないので、大きな死亡保障は必要ありません。加入している定期付き終身保険を解約するか、払い済みにして、終身の医療保険に加入してもいいのではないでしょうか?定期付き終身保険を残すなら、生命共済は必要ないと思います。
上記の見直しで、月々の保険料負担を約18,000円減らすことが出来ます。年間で21万6,000円、10年間で216万円ですから、大きな節約になります。保障額が適切かどうか判断するポイントは、万一のトラブルがあって保険金等を受け取ったときに、今より暮らしが楽になるかどうかです。楽になるなら、入りすぎです。保障や補償は無料では受けられないので、払う保険料との兼ね合いを考えつつ保険に加入することが大切です。
2. 使途不明金を無くす
収入が安定していて比較的多く、貯蓄も十分あるのに不安を抱えているご様子です。仕事を辞めて収入が減る一方、お子さんが私立中学に入学されて学費その他の支払い(お子さんの小遣い3万円と言うのは、定期代やお弁当代その他お子さん関連費用と考えてお答えしています)が増えたことから、漠然とした不安を抱えていらっしゃるのだと思います。今回家計を整理されて現状を把握されて問題点をはっきりさせることは、それだけでも家計を改善するきっかけになるはずです。
月々赤字を出している状態を解決するため、前述の保険の見直しと併せて、以下の3つを実行することをお勧めします。
(1) | 住宅ローンを完済し、毎月支出を減らす 残高200万円を普通預金で完済してしまう。 |
(2) | 預貯金の中から長女の学費相当分を別に管理し、学費はそこから引き出して支払う 長女の学費は、中学校残り60万円(15か月分)、高校約200万円、大学約500万円と見積もり、別管理する預金口座と学資保険でまかなう。毎月の支出には計上しない。 |
(3) | レジャー費・外出費、年間64万円、使途不明金20万円を減らす 昨年と預貯金が減った40万円のうち、赤字補填分が約20万円なので、残り20万円が使途不明金です。こういう覚えのない支出はなるべく減らすようにしましょう。 |
これにより、毎月の支出合計(天引き貯蓄42,000円含む)は約48万5000円となり、お義母さんからの5万円がなくてもやっていけるようになります。お義母さんから生活費補助として5万円受け取るのは悪くないと思いますが、その分は今後お義母さんに介護などが必要になったときに備える資金として貯めておけば、自宅をバリアフリーにリフォームする費用などに使えます。
住宅ローン返済がなくなるので、ボーナスからの支払いは、固定資産税と自動車関連費用、年払い保険料、そしてレジャー費くらいになります。ここで気をつけたいのは、余裕ができたからと言ってレジャー費などを増やさないこと。逆にレジャー費や使途不明金を引き締めることで、ボーナスから90万円の貯蓄ができます。ボーナスの大半を貯蓄に回している家計状況であれば、もしボーナスが減ることになっても十分対応できます。
今回見直しはしませんでしたが、電話とインターネット代、携帯電話料金もやや多めです。契約内容の変更などで引き下げが可能な項目です。また自動車は1台に絞ればもちろん節約になります。しかし、ご主人の転勤(来年3月に異動する可能性あり)で2台必要になるかもしれないこと、それほど切迫した家計ではないことなどを考えると当面は2台所有していてもいいと思います。
3. 貯蓄を目的別に管理して、目的別に積み立てる
貯蓄額が多いのに不安を感じるのは、今後の出費と払えるかどうかの予想ができないからです。「このお金は~に使うお金」「~に備えてあと○○円貯める」と言うように、お金に色をつけて目的をはっきりさせておくことで、安心感が得られますし、管理もしやすくなります。
住宅ローンを完済した後も、約2,150万円の貯蓄が残るので、これを長女の学費、次女の学費の一部、将来の自動車買換え資金、老後およびリフォーム資金、その他万一に備える資金と言った内容で分けます。
次女の学費として準備しておきたいのは、中学から私立に通った場合の学費です。長女と同程度とすると、中学、高校がそれぞれ250万円、大学が500万円で合計約1,000万円です。今ある貯蓄の中から、まず500万円をとりわけます。これに毎年50万円、10年間で500万円の貯蓄を上乗せすれば、次女が中学校に入る頃には、1,000万円準備できます。学費相当分が準備してあれば、家計の負担もグッと楽になります。
このほか、老後資金、リフォーム資金、自動車買換え資金など、目的別に貯めていくといいでしょう。この調子で貯蓄を続ければ、自動車の買換えや、リフォーム、ボーナスの減額などがあったとしても、10年後(54歳時)には2,000万円を超える資金が準備できるわけです。
なお、まとまった貯蓄があるなら、少しの金利の違いでも利息額は大きく違ってきます。現在はただ預けている状態のようですが、少しでも金利の高い預金を探すなど、預け先についても改善していってください。
長らくお仕事をされてきた奈穂さんですから、そのうちやっぱり働きたいと、再就職されることもあるかと思いますが、今はご家族や愛犬とのゆったりした時間を楽しんでくださいね。