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山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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松田恵理子さん(仮名)のご相談
数年以内にマイホームの購入を考えています。
最近までは、漠然と3年~5年後位に新築一戸建ての購入を希望していましたが、ゆくゆくは夫の親との同居も考えているため、もし一戸建てを買うなら、その時に使いやすい間取りなど考えたほうがいいかなとも思い、それまではマンションを買い暮らそうか迷っています。
金利上昇も気になるため、3年後と言わず、もっと早くに買ったほうがいいのか、最初から一戸建ての方がいいのか本当に迷っています。
松田恵理子さん(仮名)のプロフィール 31歳、会社員。33歳・会社員の夫との二人暮しで、現在は賃貸にお住まい。 世帯年収700万円、貯蓄残高1,250万円ほど。 |
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<収入について>
<貯蓄について>
<支出について>
<同居について>
<住まいについて>
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家計はしっかり、資金面でも余裕があるので
あせらず、落ち着いて計画してください
あせらず、落ち着いて計画してください
1.メリット・デメリットを整理
まずは、マイホームの購入時期とマンションか一戸建てかについて、メリット・デメリットを整理してみましょう。
購入時期については、今すぐ(今年中)か、3~5年後に加えて、「所得税の住宅ローン減税」が平成20年入居分で終了するため、2年後も選択肢に加えました。
メリット | デメリット | ||
購入時期 | 今すぐ | 低金利の恩恵 |
生活、家計の変化の真最中 |
2年後 |
住宅ローン減税 |
金利上昇リスクがある | |
3~5年後 | 貯蓄額が増える |
金利上昇リスクがある |
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家の形態 | マンション | 交通などの利便性 | 管理費等の負担がある |
一戸建て | 庭・駐車場付き |
交通などの利便性が低い |
1000万円以上の資金準備があるので、資金面では今すぐでも問題はありません。自分たちが気に入った物件があったら購入してもいいでしょう。ただし、これから赤ちゃん誕生で生活環境が大きく変わるときに、マイホーム購入という別の大きなイベントを背負うことになります。これから一生住むかもしれない家を購入するわけですから、お子様との生活が落ち着いてから、「資金計画」「利便性」「子育て環境」などを考慮しながらゆっくり選ぶという考えもあります。
購入時期を先送りする場合、注意すべきは「金利動向」と「住宅ローン減税の期限」です。長らく続いてきた住宅ローン減税ですが、適用されるのは、平成20年末の入居までということが、平成17年度税制改正で決まっています。
住宅ローン減税を使えることと、生活が落ち着いてからという点から、1~2年後を目安に購入を検討されるといいと思います。
マンションか一戸建てかという点については、最終的には一戸建てという希望があるなら、最初から一戸建てを検討された方がいいと思います。マイホームの買い替えでは、売り急ぐ必要もあるため元のマンションは思ったような価格では売れないのが一般的です。そのため、たとえ低金利の恩恵を受けても、受けた分以上に低い売却価格になってしまう可能性もあるからです。
また小さいお子様がいる場合、マンションは便利ですが、一戸建ては駐車場所が近くて子どもを連れての移動が楽などのメリットもあります。マイホームを選ぶにあたっては、保育園への入りやすさ、小学校などへの通いやすさなども考慮すべきです。松田さんは今後、子育てしながら仕事も続けられるわけですから、マンションか一戸建てかというより、仕事を続けやすい環境を総合的に考えて選ぶといいと思います。 親との同居については、すぐにということではないようなので、あまり重視する必要はないのではないでしょうか。
2.住宅ローン減税
所得税の住宅ローン減税の制度が、平成20年居住分を最後になくなることになりました。条件などの詳細は省きますが、松田さんのケースは、住宅ローン減税の対象になると思われます。税額控除額は以下のとおりです。
今後3年間の住宅ローン減税の控除額 |
年末残高の上限 | 適用年:控除率/年最高控除額 | |
H18年に入居 | 3,000万円 | 1~7年:1.0%/30万円 8~10年:0.5%/15万円 |
H19年に入居 | 2,500万円 |
1~6年:1.0%/25万円 7~10年:0.5%/12.5万円 |
H20年に入居 | 2,000万円 | 1~6年:1.0%/20万円 7~10年:0.5%/10万円 |
一覧表を見ると、早く購入するほど減税額は大きくなるように思えます。しかし、この制度は払った税金が戻る制度であり、必ずしも最高控除額まで恩恵を受けられるわけではありません。また、平成19年以降、住民税の税率が一律10%になる一方で所得税の最低税率が5%になり、住民税の負担が増える所得層(課税所得がおおむね700万円以下)の所得税額は減ることが、平成18年度税制改正で決められました。つまり、住宅ローン減税の対象となる所得税自体が減ってしまうのです。
ちなみに、松田さんのご主人の例で、10年間で戻る減税額合計を試算してみると、入居年度が平成18年では、約148万円、平成19年では135万円、平成20年では125万円となりました。平成20年までに入居すれば、減税額はそれほど変わりません。
住宅ローン減税で戻る税額の予想 |
入居年度 | H18年 | H19年 | H20年 | H21年以降 |
10年で戻る税額 | 約148万円 | 約135万円 | 約125万円 | 0万円 |
※年収600万円、妻は扶養の範囲内で働く、子1人、住宅ローンは3000万円・35年返済で試算 |
3.住宅ローン金利上昇の影響
住宅ローン金利の上昇が懸念されていますが、実際にどれくらいの影響があるか見てみましょう。すぐに購入し、[ 1 ]3,000万円を返済期間35年、金利3.5%(全期間固定)で借りた場合と、2年後に購入し、2800万円(2年分の貯蓄を差引く)を返済期間33年(2年短縮)、金利4.0%([ 2 ])、4.5%([ 3 ])で借りた場合の、毎月の返済額と利息総額を比べてみます。
(2006年8月のフラット35(全期間固定金利)の金利は、2.930%~3.740%で平均金利は3.248%です) たとえ金利が上昇しても、頭金を多めに準備できて、上昇幅が0.5%([ 2 ])なら毎月返済額で約3,500円増加、利息総額も35年で約40万円増えるだけです。しかし、1%上昇した場合([ 3 ])には、たとえ借入額が200万円少なくても、毎月返済額は1万円以上、利息総額は約372万円も増えてしまいます。今後、どれくらい金利が上昇するかが大きなポイントとなります。
[ 1 ] 3,000万円/返済期間35年 |
2800万円/返済期間33年 | ||
借入金利 |
3.5% [ 1 ] | 4.0% [ 2 ] | 4.5% [ 3 ] |
毎月返済額 |
123,987円 | 127,456円 | 135,857円 |
- | 3,469円 | 11,870円 | |
利息総額 |
22,074,257円 | 22,472,348円 | 25,799,515円 |
- | 398,091円 | 3,725,258円 |
数千万円の借金を背負うことや今後のライフプランを考えると、自己資金が準備できていない状態で、金利が低いという理由だけでマイホームを購入することはお勧めしません。
しかし、松田さんのケースでは、1,000万円を超える貯蓄があり、家計もしっかりコントロールされているなど、資金面ではすぐ購入しても問題ありません。今から、マイホーム取得のための情報収集を始めて、出産後、生活が落ち着いたら購入というスケジュールを立ててみてはいかがでしょうか。