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マイホームを取得し、子供もできましたが、
ローンと教育費で先々の家計が心配です。
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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山本 正さん(仮名 35歳 会社員)のご相談
結婚5年目の夫婦です。
昨年、親の援助もあり、念願のマイホームを購入することができました。
嬉しいことは重なるもので、子宝にも恵まれ、今年初めての赤ちゃんを出産予定です。
しかし、住宅ローンと教育費のダブルパンチにこの先の家計のやり繰りが心配です。
この先の見通し、改善点等があれば教えてください。
山本 正さん(仮名 35歳 会社員)のプロフィール
今後の生活計画目標
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今のままでは30年後には貯蓄も底をつきます。
でも、30年も時間があれば十分準備できます。
でも、30年も時間があれば十分準備できます。
1.現状を把握することから始めましょう
上記の【今後の生活計画目標】に基づいた資金プランニング表がこちらです。
<今後の生活計画目標に基づいた資金プランニング表を別ウィンドウで表示>
現状はいかがでしょうか。
ご主人様が働いている間は、年間収支が赤字の年はあるにせよ、何とか家計が回っているのですが、定年後は毎年の赤字が累積し、64歳時には貯蓄が底をついてしまっています。
現状のままでは、計画目標達成は極めて困難といえそうです。
2.対策を考えましょう
方法はいくつかありますが、単純に考えれば、収入を増やす方法と、支出を減らす方法しかなく、両者を取り入れることによって、より大きな効果が期待できることはいうまでもありません。
以下、詳しく考えてみることにします。
3.収入を増やす方法
ア、ご主人様のリタイヤ時期を再雇用制度の利用によって5年延ばす。
資金プランニング表を見てみると、60歳で定年退職してから、65歳の年金受給開始までの期間の年間赤字が非常に大きいことがわかります。
この期間の赤字を小さくすることの効果は絶大です。
もっとも、現在の少子高齢化社会においては、継続雇用を実現すべく高年齢者雇用安定法が改正され、65歳定年制をはじめとする 継続雇用制度の導入を段階的に進めることが義務付けられましたので、今後ご主人様がお勤めの会社の定年に関する規定も変わっていくものと考えられます。
ただ、現状では企業の再雇用制度のほとんどは、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を活用しているのが一般的です。
この場合、再雇用時の年収は会社からの給料と給付金込みで、60歳時年収の75%、もしくは約400万円のどちらか低い方となる場合が多いようです。
山本さんのご主人の場合
60歳時年収:669万円×75%=約502万円 となるため、
約400万円の年収となる可能性が高いといえます。
イ、奥様がパート勤務を始める。
お子様の教育環境に対する考え方など、ご家庭によってまちまちですが、中学入学時くらいからパート勤務を始めてみてはいかがでしょうか。
実際、「おぼっちゃん・お嬢様校」と言われているような授業料が高い私立中学に通われているご家庭でも、かなり多くの奥様が何らかの仕事をされていると言われています。
もちろん、PTAの会合や親同士のお付き合いもあるので、フルタイムという訳にはいかないでしょうが、ご主人様より少し早目の、60歳まで頑張ってみてはいかがですか。
ウ、お金に働いてもらう。
現在、山本さんの貯蓄はすべて銀行の普通預金にあり、利子が限りなくゼロに近い状態です。
普通預金は元本割れすることなく、いつでも出し入れが可能という点ではメリットがありますが、せめてすぐ使う予定のないお金は、少しでも金利の高い定期預金に預けるということを習慣にしてみてください。
72の法則をご存知でしょうか。
72を金利で割ると、おおよそ何年後に倍になるのかが分かる法則なのです。
1990年代には定期預金の金利が約6%なんて時代もありました。
72÷6=12年で倍になったのです。
現在は高くて0.05%です。
72÷0.05=1440年
1440年後なんて、地球がどうなっているかだって分かりません。
おわかりでしょうか、銀行預金でお金を増やせる時代ではないのです。
ではどうしたらいいのでしょうか?
「お金に働いてもらう」運用を検討してみてはいかがでしょうか。
勿論、銀行預金と違い、元本が保証されているわけではないので、お金が減ってしまうことも覚悟しなければなりません。
中には利回り10%を狙うなどハイリターンを謳うファンドなども多数ありますが、山本さんの場合の運用資金は大切な今後の生活資金で、余裕資金ではないのですから、ハイリスクにさらす訳にはいきません。
しかしながら、ローリスク・ローリターン狙いで10年以上の長期国際分散投資をした場合、少なくとも過去の実績では、途中損失が発生することはあっても、最終的なプラスは確保できているのです。
金融機関によって、ポートフォリオが違うせいか公表されている利回りには差がありますが、投資開始の時期に関わらず、概ね4%以上の利回りとなっています。
但し、10年以上の投資の結果ということなので、サブプライムローン問題の時期に投資を開始した場合の結果は残念ながらまだ出ていないことも付け加えておきます。
山本さんの場合、トータルで2%程度の運用成果を求めてみてはいかがでしょうか。
たかが2%と思うかもしれませんが、長い時間をかけると複利効果で大きな違いが出てくるのです。
100万円を預けた場合の例がこちらです。(1万円以下四捨五入)
5年 | 10年 | 20年 | 30年 | 50年 | |
0% | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
1% | 105 | 110 | 122 | 135 | 164 |
2% | 110 | 122 | 149 | 181 | 269 |
3% | 116 | 134 | 181 | 243 | 438 |
0%と2%では、5年目では10万円の違いしかありませんが、10年では22万円、30年では81万円、さらに50年では169万円もの違いが生じてくることが分かります。
また2%程度の利回りだと金融機関によっては、途中解約リスクや満期期日の選択権放棄を担保に、元本保証を実現した商品もあります。
お金を使う時期等を考えて、十分に投資を勉強した上で、検討してみてください。
4.支出を減らす方法
支出を減らすというと、まず思いつくのが節約ですよね。
節約は美徳などと言う方もいらっしゃいますが、普通の人はあまり喜ばないものです。
例えば、外食を減らす、150万円のマイカーを100万円の車にする、老後の夫婦旅行を2年に1回にするなどの方法が考えられますが、少なくとも嬉しいと感じる方はいない筈です。
せっかく収入アップのために、ご夫婦で働いたり、投資の勉強をしたりと 頑張るのですから、ここでは【今後の生活計画目標】のレベルは下げずにできる方法に絞ります。
ズバリ、住宅ローンの繰り上げ返済です。
繰り上げ返済には、返済額軽減型と返済期間短縮型がありますが、トータルの支出を減らすには期間短縮型です。
短縮した期間の金利支払いがなくなるからです。
退職金が入った年に残金を全額繰り上げ返済してみましょう。
約1,100万円を返済することにより、残り10年の期間短縮となり、おおよそ140万円の利子を浮かせることになるのです。
5.まとめ
これまで提案した対策をすべて実行した場合の資金プランニング表をご覧ください。
<これまで提案した対策をすべて実行した場合の 資金プランニング表を別ウィンドウで表示>
もちろん、全ての対策を実行する必要はありませんが、山本さんにとってこれは可能で有効だなと思うことから始めてみてください。
住宅ローンの繰り上げ返済にしても、対策後のプランニング表では、もっと早い時期の返済も可能だということが分かり、更に支出を減らすことができそうです。
そして、そのお金で旅行の回数を多くしたり、もっとゴージャスな旅にしようなんて計画もいいですよね。
大切なことは、一歩先のことを考えて、常に資金計画を見直していくことです。
住宅購入・お子様誕生という、浮かれがちな人生の分岐点で、今後の家計にメスを入れた山本様はとても素晴らしい経済感覚をお持ちです。
お幸せなご家庭をお築きになられることを願っております。