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夫婦ともに契約社員です。
このような状況で、将来の生活設計はどうなるのでしょうか?
村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール |
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木村 真琴さん(仮名 28歳 会社員)のご相談
子どものいない共働き夫婦です。二人とも2年更新の契約社員で、将来が不安定です。このような状況では、住宅ローンを組むこともできませんし、子どもを作ることもできません。将来のことを考えると、不安で仕方ありません。
木村 真琴さん(仮名 28歳 会社員)のプロフィール
現在の家計の状況 <貯蓄>
<収入>(手取り収入)(単位:円)
<支出>(単位:円)
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ご夫婦二人だけなら心配ありませんが、
お子様を希望されるのなら、クリアすべき事は多そうです。
お子様を希望されるのなら、クリアすべき事は多そうです。
1.ご夫婦二人だけの場合
木村様、こんにちは。お二人とも、契約社員で働きながら日々の生活を送っているのですね。厳しい雇用環境の中、ご夫婦二人で協力しながら、つつましく生活されているのが、家計簿からもわかります。普段の生活はぜいたくさえしなければなんとかやっていけるのですが、将来のことを考えると、不安になりますね。
ご夫婦二人だけであれば、今のままの状況が続いたとしても、家計が行き詰る心配はありません。現状では、堅実な生活をされていますので、わずかですが、毎年貯蓄ができます。伺った家計の状況では、貯蓄できるのは1年間で60万円程度です。年間の貯蓄額としては、ほんのわずかです。しかし、たとえわずかでもこれが毎年続くと、つもり積もって大きな金額となります。現時点での推計では、60歳になる頃には2,000万円近い貯蓄ができているはずです。その後は、貯蓄を取崩しながら、年金を受給して生活することになりますが、それでも90歳時点で500万円前後の貯蓄があることになります。
もちろん、上記のシミュレーションは、現時点での条件が続くものとして計算した推計です。少し条件を変えると、長い年月の間には大きな違いとなりますので、時々は見直しが必要です。ただ、毎年少しでも貯蓄ができていれば、それほど心配する必要はありません。住宅購入については、契約社員では住宅ローンを組むのが難しいのが現状です。どの金融機関でも受け付けてくれるわけではありません。しかし、最近は契約社員でも、安定した収入がある場合は対象とする金融機関もあります。多くの金融機関に問い合わせてみれば、その中から条件に合った住宅ローンを利用できるところがあるはずです。
心配なのは、住宅ローンを組んだ後に、雇用契約が更新できずに、収入が減ってしまうことです。住宅ローンの返済を続けていくには、夫婦お二人の収入が必要であり、どちらか一方の失業でも、返済に行き詰ってしまいます。失業というリスクが小さくない状況では、マイホームの購入にそれほどこだわらない方がよいでしょう。
賃貸住宅のままの場合と、マイホームの購入をした場合で、どちらが“お得”かは、一概に言えません。ただ、賃貸の場合はその時の状況によって変更ができますが、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合は、簡単には負担を減らすことができません。もし購入を検討されるなら、十分な頭金が準備できてからがよいでしょう。40代の頃には1,000万円程度の貯蓄ができるはずです。それから検討されたのでも遅くはありません。
失業のリスクは、マイホームを購入しない場合でもついて回ります。家計は、収支がほぼ均衡している状態です。どちらか一人でも失業が長引くと、家計が行き詰ってしまう可能性があります。まだお二人ともお若いので、たとえ失業となったとしても、比較的早く仕事を見つけられることでしょう。しかし、年齢が高くなるとなかなか難しくなりますので、常に正社員になる可能性を探っておきたいものです。と同時に、できるだけ早く貯蓄を増やし、ある程度のリスクには備えられるようにしておきましょう。
家計に余裕のない中、お二人とも医療保険に加入されているのは良いことです。医療保険は入院などの医療費の保障だけでなく、収入減の補てんにもなります。貯蓄が十分でないからこそ、医療保険は、いざという場合の助けになります。
2.お子様が生まれた場合
来年、お子様が一人生まれた場合の将来の家計の状況もシミュレーションしてみました。
今の状況のままでは、お子様が生まれると、家計は将来厳しい状況になりそうです。大学などに進学せず、すべて公立の学校に進んだとしても、500万円以上の教育費がかかります。さらに、食費、衣料費、その他の生活費も増えます。その点も考慮すると、お子様が高校生の頃に、貯蓄が底をついてしまい、借金生活となってしまう可能性があります。住宅ローンのような借金ならば問題はありませんが、生活費で貯蓄が底をついて借金をしてしまうようでは、家計が行き詰ったといえます。
ただ、現状からのシミュレーションでは、貯蓄残高は大幅なマイナスとなっているわけではありません。この程度のマイナスならば、家計の見直しによってマイナスとなるのを防ぐことはできます。しかし、現在の生活でも切り詰めた堅実な生活をされていると思います。支出の削減をさらに進めても、お子様が生まれると、生活が苦しくなることには変わりありません。
では、お子様を持つことを、もうあきらめなければならないかというと、けっしてそうではありません。現在お二人は28歳です。まだ出産をあせる必要はありません。この間に、収入のアップや正社員としての就職を模索してみましょう。景気が回復してくると、採用が難しくなり、正社員の募集が増える傾向があります。幸いなことに、最近は求人難が言われるようになりました。現在の職場での正社員への転換や、他の条件の良い仕事への転職のチャンスといえます。うまくいけば、お子さんを持つ環境も整うでしょう。もちろん、そのためには普段からのスキルアップや情報収入が欠かせません。楽な道ではありませんが、希望を持って進んでください。