目次
キャッシングやカードの利用で残債が460万円に。
自己破産しかないのでしょうか?
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
|
宮田 信子さん(仮名 26歳 会社員)のご相談
社会人4年目の独身、一人暮らしのOLです。会社での付き合い、洋服やコスメを購入するため、クレジットカードを使ってリボ払いやキャッシングを利用していましたが、だんだん返済が苦しくなってしまいました。カードの枚数も6枚に増え、返済しては借りるの繰り返しです。最近では返済も遅れるようになり、督促状や電話もかかってくるようになってしまいました。自己破産という制度を耳にしましたが、私にはそれしか方法がないのでしょうか?アドバイスをお願いします。
宮田 信子さん(仮名 26歳 会社員)のプロフィール
|
自己破産は認められない可能性が大。
専門家に相談して、任意整理か個人再生を
専門家に相談して、任意整理か個人再生を
現状を把握しましょう
現在宮田さんの月収からカード会社への返済と家賃をひくと4万円しか残りません。もちろん光熱費や食費、携帯電話代もかかるでしょうから、毎月借金が増え続けているのが現状のようです。ボーナスで穴埋めしても追いつかないものと思われます。
しかし、今回早めにご相談いただいたことで、必ずこの現状は解決することができるので、ご安心ください。その方法について考えていきましょう。
自己破産について
債務の返済に窮するとすぐに思いつくのが、自己破産という制度です。たしかに一番有名で、有効な制度ではありますが、メリットだけではなく、デメリットもあるので、慎重に検討する必要があります。
自己破産とは裁判所に破産を申立て、免責を受けることによって、借金を免除してもらう制度です。つまり、借金がチャラになるので、今後の生活を再生するには一番有効な制度ともいえます。
しかしながら、宮田さんには現在安定した収入があり、残債も460万円とそれほど多額ではありません。裁判所から返済不能と判断してもらえない可能性があり、専門家に依頼しても受任してもらえないケースかと思われます。
その他の方法
まずは毎月いくらなら無理なく返済できるのか計算してみてください。ボーナスを抜きにして宮田さんの月収から家賃を差し引くと16万円です。その他に食費など絶対必要な金額はいくらでしょうか?仮にその金額が10万円だとすると、毎月の返済可能額は6万円ということになります。では、その6万円を上限に返済する方法を探してみることにします。
任意整理
任意整理とは、裁判所などの公的機関を通さないで、債権者と直接交渉して、将来の利息のカット(利息をゼロにする)やこれまで支払いをしてきた高金利分を元本返済に組み入れたりして、債務を圧縮する方法です。任意整理後の借金は3~5年で返済していくことになります。この方法は自分ですることも可能ですが、通常は弁護士や司法書士などの専門家に依頼することになります。
宮田さんの場合、社会人になってからカードを利用し始めたとすると、社会人歴4年ですので、過払い利息は発生していないと思われます。そのため借金総額の減額は望めませんが、460万円を利息なしで5年間かけて返済することが可能になるため、毎月の返済が8万円弱に減ることになります。もちろん専門家への報酬は必要となりますが、依頼後は債権者からの請求・取り立てがストップし、任意整理手続き中は当該債権者への返済を中止することが可能となるので、その間に今の返済をあてて専門家への報酬を支払うことができるのです。
宮田さんの返済可能額が6万円だとすると、それよりも少し金額は多くなってしまいますが、「もう少し節約をする」、「ボーナスで穴埋めできる」、「休みの日にアルバイトをする」などが可能であるなら、検討すべき方法と思われます。一定期間ローンやクレジットの利用はできなくなりますが、専門家に依頼するだけなので、もっとも簡単な方法です。
個人再生(個人民事再生)
宮田さんがやっぱり毎月6万円以上の返済は厳しいと思う場合に、検討すべき方法が個人再生です。
個人再生は、借金を大幅に減額して原則3年で支払いを行なっていくという裁判上の手続きです。返済する額は最低弁済額と言われ、次表の金額が目安になります。
借金 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 借金の額と変わらず |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1,500万円未満 | 借金の5分の1 |
1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 借金の10分の1 |
つまり借金総額が460万円の宮田さんの場合、通常100万円を3年間かけて返済していけばいいことになります。毎月3万円程度の返済となるため、6万円の返済可能額を大幅に下回ることになるのです。
ただし、いいことばかりではありません。裁判上の手続きになるため、必要書類も結構多く、任意整理に比べて面倒です。また弁護士や司法書士などの専門家に支払う費用の他に、裁判所関連費用も約30万円必要となります。
官報にも名前が記載され(実際は誰も見ません)、もちろんローンやクレジットの利用もできなくなります。
専門家に依頼した場合の一般的な流れは、
- 弁護士や司法書士などの専門家へ依頼
- 債権者からの請求・取り立てがストップ
- 専門家への報酬を分割で支払い
- 報酬支払い完了後、専門家が裁判所へ個人民事再生の申立て、予納金の納付
- 裁判所が再生委員を選任(通常弁護士が選任されます)
- 再生委員へ報酬を分割で支払い(15万円から25万円位)
- 報酬支払い終了後、再生委員と面談(必ず本人が出席)
- 再生手続き開始決定
- 債権の確定
- 再生計画案を提出
- 債権者の書面決議または意見聴取
- 再生計画の認可・不認可
- 債権者への返済開始
となり、裁判所への申立てから返済開始まで6カ月から9カ月位が目安となります。専門家の報酬も弁護士、司法書士によって結構開きがあるので、費用はインターネットなどで、十分調べることが必要です
まとめ
上述した方法以外にも自分でできる特定調停という方法がありますが、余程の時間と労力、気力がないと難しいので、今回はご紹介しませんでした。
今回宮田さんの場合、任意整理か個人再生を検討されることをお勧めします。いずれにしても専門家に依頼した上で、よく相談していただくことが必要です。まだ年齢も若く、将来もあるのですから、一刻も早く借金苦から抜けだして、幸せな人生を歩んでいただければと思います。