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認可保育園に入れず待機児童になりました。
だからといって認可外では給料のほとんどがなくなってしまいます。
働かない方がよいのでしょうか?
森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール |
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藤原沙織さん(仮名 30歳 会社員)のご相談
職場復帰をするつもりでしたが、子供を認可保育園に入れることができず、待機児童になってしまいました。入れそうな認可外保育園の保育料は月10万円ほどかかります。
手取り収入は月15万円ほどなので、高い保育料を支払ってまで働く意味があるのか悩んでいます。
ご相談者のプロフィール
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高い保育料が負担になるのは小学校に入学するまで。
長い目で見れば仕事を続けるメリットは決して小さくありません。
長い目で見れば仕事を続けるメリットは決して小さくありません。
藤原さん、ご相談ありがとうございます。認可保育園に入れず残念なお気持ちはよくわかります。認可外保育園で高い保育料を支払うくらいなら仕事を辞めてしまった方がよいのではないかと考えてしまうのも無理はありませんが、ここは冷静に将来を見据えて考えましょう。
保育料の負担は就学前まで
確かに月10万円というのは家計にとって大きな負担です。藤原さんの給料が右から左に流れてしまうような寂しさを覚えるかもしれませんね。しかし、これが永遠に続くわけではありません。1歳では無理でも3歳、4歳で認可保育園に入れる可能性はあります。もしも途中で入園できなかったとしても、一般的には3歳からは保育料が安くなりますし、6歳になれば小学生となり、保育料の負担はなくなります。割り切れない思いは残りますが、藤原さんが仕事を続けるための必要経費だと考えてはいかがでしょうか。
小学生になると、今度は学童保育に入れるかを心配するかもしれません。自治体によっては親が働いている、いないに関わらず希望者全員が入れるところもありますが、定員制の場合には、入れなければ民間の学童保育を探すことになります。公的な学童保育では一般的に費用が安く、数千円から高くても1万円には届きませんが、民間では数万円、中には5万円を超えるところもあるようです。いずれにしても、認可外保育園に通わせるほどの負担はないでしょう。
短期間ではなく長期間での収支を考えて
藤原さんの毎月の手取り収入は約15万円。働く上で必要になる出費もあるので、保育料10万円を支払ったらほとんど手元には残らないイメージかもしれません。しかし年2回のボーナスについては、貯めるにしろ何かを買うにしろ比較的自由に使えるのではないでしょうか。厚生年金の保険料も支払うのですから、将来の藤原さん自身の年金を積み立てることにもなります。働く意味が全くないとは言い切れません。
保育料が月10万円、年間120万円かかったとしても、支払うのは小学校に入学するまでの約5年間なので最大約600万円です(生まれ月によって、また保育開始時期によっても期間は変わります。一般的には年齢が上がると保育料も安くなりますので、実際にはもう少し抑えられるでしょう)。一方、藤原さんの手取り収入は年約240万円なので、5年間では1,200万円になります。計算上ではマイナスどころか約600万円のプラスとなります。
さらに、藤原さんが現在の職場で働き続けるならば、手取り収入の合計は10年間で2,400万円、20年間では4,800万円にもなります。昇給や昇進の可能性もあるので、もしも定年まで働くことができれば、総収入では大きな金額になりそうです。子供の教育費には一人1,000万円かかると言われますが、負担が大きいのは高校・大学時です。その時に藤原さんご自身に正社員としての収入があれば、家計は大いに助かることでしょう。長い目で見れば、お金の面では働き続ける方が圧倒的に有利だと言えます。
ママのライフプランとキャリアプランも大切に
夫だけの収入でも生活できるのでお金よりも子育てを優先させたい、現在の仕事に未練がない、というのであれば仕事から離れて家庭に入り、子育てが一段落してから再就職するという選択もあるでしょう。しかし、専業主婦になった後の再就職は簡単ではないのが現実です。ここで辞めてしまえば同様の仕事に戻れる保証はありません。雇用条件(給与や待遇)も今以上の所で再就職できるかも難しいでしょう。
子供を持つお母さんが働き続けるというのは職場と家庭、両方の理解が得られなければ難しいものです。藤原さんの場合は、どちらも応援してくれているようですから、その点では恵まれているのではないでしょうか。認可外保育園を利用することになれば、一時的には大きな出費となります。しかし、働き続けることによって藤原さん自身のキャリアを積むことができますし、藤原家の家計にとっても大きなプラスとなります。
藤原さん自身に仕事を続けたい気持ちがあり、続けられる状況があるのですから、まずは認可外保育園を利用して職場復帰してもよいのではないでしょうか。