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内田 ふみ子先生 プロフィール |
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小木 ひろ子さん(仮名)のご相談
結婚して1年半になります。夫には前妻との間に子どもが2人おり、毎月5万円を成人するまであと10年以上払わなければなりません。家計上、私も仕事を辞めるわけにはいきません。しかし勤務先が個人経営のため、出産・育児休暇を取ることは難しいと思います。来年には出産を考えていますが、月々の生活ができるか不安です。子どもができれば、単身者用の賃貸を出なければなりません。夫の両親と祖父母は近くに住んでいますが、同居は難しい状況です。夫は体を使う仕事のため食費は多め、それから月1回はコンサートや映画に出かけています。これからの家計の見直しについてアドバイスください。
小木 ひろ子さん(仮名)のプロフィール
31歳、会社員。33歳会社員のご主人と2人暮らし。
・家計状況
月収(税金・社会保険料を除いた可処分所得) | |
夫 | 250,000 円 |
妻 | 170,000 円 |
月間支出 | |
家賃 | 45,000 円 |
自動車ローン | 25,000 円 |
夫の楽器 | 3,000 円 |
妻の奨学金返還 | 14,000 円 |
水道光熱費 | 22,000 円 |
電話代(PC・携帯を含む) | 20,000 円 |
食費 | 50,000 円 |
教養娯楽費 | 10,000 円 |
日用雑貨・被服費 | 4,000 円 |
養育費 | 50,000 円 |
歯科治療費 | 10,000 円 |
ガソリン代 | 10,000 円 |
夫のこづかい | 15,000 円 |
妻のこづかい | 15,000 円 |
雑費 | 7,000 円 |
生命保険料 | 33,000 円 |
車検費用積立 | 10,000 円 |
積立貯蓄 | 21,000 円 |
その他の貯蓄 | 50,000 円 |
年単位の収入 | |
夫のボーナス | 400,000 円 |
妻のボーナス | 450,000 円 |
年単位の支出 | |
損害保険料 | 20,000 円 |
車検 | 150,000 円 |
貯蓄等 | 680,000 円 |
貯蓄 | |
預貯金 | 1,400,000 円 |
<<希望・予定>>
- 妻は、来年出産を希望。出産の場合は退職。
<<住居>>
- 賃貸
出産退職後、仕事に戻るまでしばらくは貯蓄の取り崩しはやむをえません。今のうちに貯蓄をし、早めに再就職することを視野に入れた準備も。
現在の生活費そのものは無駄遣いしているわけではなく、むしろしっかり家計管理をしていらっしゃいます。しかし、もしご主人様だけの収入になってしまうと、養育費の支払を除けば、月20万円が実質的な収入になります。10万円近く見込まれる赤字は、ボーナスや貯蓄の取り崩しに頼らざるを得ないでしょう。前妻とのお子さんのため、と考えると、わりきれないところもあるでしょう。ただ、それを含めてのご主人ですから、養育費分は初めからないものと思うしかありません。
今できるのは、貯蓄残高を増やしておくことと、出産後の再就職を視野に入れて、仕事のスキルアップを図っておくことです。
退職後、支出が増えるもの、減らせるものを整理
出産退職で収入が急に減り、家族が増えると家計状況が一変します。慌てないために、支出の増減を整理してみましょう。
まず、支出が増えるのは家賃。子ども可のファミリー用の家賃相場を調べてみてください。子どもが病気のときなど、困ったときには協力してもらえそうなら、ご両親の近所がよいでしょう。それから、ミルクやオムツそのほか育児用品代。洗濯物が増えるので、水道代が今よりかかるかもしれません。子どもの医療費は、自治体によっては一定年齢まで無料としていることもあります。また教育資金準備を始める必要があります。これは現在毎月積み立てている2万1000円を読みかえることができます。
少なくなる支出としては、小さな子どもがいると、外出はしにくくなるので、外食や娯楽費は多少減りそうです。
奨学金の返還は、借りた先が日本育英会(現在は独立行政法人日本学生支援機構)であれば傷病や失業中の場合、猶予されることもありますので、相談してみましょう。
お子さんが生まれたら、児童手当が支給される制度(所得制限有)もあります。
上記を考慮して収支を検討してみると、月10万円程度の不足はどうしても出てしまいそうです。貯蓄の取り崩しは避けられそうにありませんので、貯蓄は今のペースを守り、できるだけ確保しておくことが大切です。
独立行政法人日本学生支援機構(児童手当については自治体の窓口)
http://www.jasso.go.jp/
生命保険は、働いている奥様にも死亡保障が必要です
生命保険は、現在の支出状況では、子ども1人の場合、ご主人の保険金額は3000~5000万円が目安でしょう。ご主人が万が一のとき、奥様が実家に戻るか賃貸に住むか、あるいは家を購入するかで必要保障額に幅が出ます。子ども1人につき、1000万円程度を教育資金分と考えます。
また、前妻に養育費を支払っている状況では、子どもの養育費・教育費を賄うのは難しいでしょう。奥様も仕事をできるだけ続けることを前提とすれば、奥様にも1500万円程度の保障は必要になります。
保険料を抑えたいところですが、万が一のとき本当に困らないように、保障は確保しておきましょう。
妊娠しても可能であれば仕事はできるだけ長く続け、仕事のスキルを上げておく努力も続けましょう
妊娠中もフルタイムで働きつづけることは珍しいことではなくなりました。勤務先の事情もあるかと思いますが、出産・育児休業は権利でもあります。仮に退職するとしても、少しでも長く働けないか、相談はしてみましょう。
退職の翌日から6か月以内の出産であれば、本人の健康保険から、出産育児一時金と出産手当金が受け取れます。妊娠直後に退職してしまった場合などには、出産時に夫の健康保険から家族出産育児一時金が支給されます。出産育児一時金・家族出産育児一時金はどちらか一方しか受け取れません。金額は健康保険組合によっても異なりますが、政府管掌保険ではそれぞれ30万円程度です。
出産一時金は、産前産後休業中の所得を補償するもので、出産前に退職しても、要件を満たしていれば受け取れます。金額は、日給(標準報酬日額)×60%×98日分です。
したがって、長く働いた方が給与だけでなく、健康保険の給付でもプラスになります。(詳しい要件は、勤務先の担当者か社会保険事務所などに確認してください。)
傷病や妊娠・出産・育児で退職して仕事に就けない場合、その間失業給付の受給期間を延長する制度もあります。
こうした制度をフルに使うことを考える一方、子どもができてからでは時間も取れないので、今のうちに仕事のスキルを上げ、少しでも再就職しやすくなるよう努めておきましょう。
ハローワーク 出産育児一時金・出産手当金
http://www.hellowork.go.jp/html/seikatsu_qa2.html#q49