新型コロナの5類移行で生活が元に戻ったものの支出が増え、家計が赤字になってしまいました


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 物価上昇にともなう支出の増加はやむを得ません
  • 制約が解けたことで、かなり支出が増えている分野があります
  • 旅行やレジャー、外食は頻度を決めて、メリハリのある生活を

  高橋 麻衣さん(仮名 39歳 パート勤務)のご相談

コロナ禍となってからはけっこう貯金ができていたのですが、新型コロナが5類に移行してから1年、気がついたらかなり支出が増えて、家計が赤字になってしまいました。今後の教育費の増加を考えると、貯蓄をしていかなければならないと思うのですが、どのように節約をしていけばよいでしょうか?

高橋 麻衣さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 手取り年収
ご相談者 高橋 麻衣 さん  39歳(パート勤務) 144万円
ご家族 夫  40歳(会社員) 450万円
長女  10歳(小学5年生)
長男  8歳(小学3年生)
貯蓄額 320万円
直近1年間の収入と支出
収入(手取り額) 618万円(児童手当24万円を含む)
支出 624万円
年間収支 ▲6万円
支出の内訳(単位:円)
毎月の金額
(1か月)
臨時支出
(年間)
年間支出 構成比
居住費(ローン返済を含む) 89,000 400,000 1,468,000 24%
食費 114,000 1,368,000 22%
水道光熱費 15,300 183,600 3%
医療費 3,000 36,000 1%
被服費・雑貨 18,900 226,800 4%
通信費 16,100 193,200 3%
教育費 18,900 226,800 4%
レジャー費・交際費 65,000 610,000 1,390,000 22%
小遣い 45,000 540,000 9%
保険料 25,200 302,400 5%
自動車関連 19,000 73,000 301,000 5%
その他 0 0 0%
合計 429,400 1,083,000 6,235,800 100%

贅沢体質が定着しないうちに平常の状態に戻し、支出にメリハリを持たせましょう

1.物価の上昇で、生活費の支出は自然に増えています

新型コロナが5類に移行してから月で1年が経過し、ようやくコロナ以前に日常が戻ったと言えるでしょう。今年のゴールデンウィークは、行楽地がかなり賑わいました。最近は、飲食店もコロナ以前の活気を取り戻しています。総務省が公表している「家計調査」で、二人以上の世帯の消費支出の月平均額を見ると、2020年は前の年に比べて5.5%も減少しましたが、2023年にはコロナ前の2019年の水準まで回復しています。コロナ禍の頃と比べて支出が増えているのは自然なことです。ただ、それ以上に支出が増えているとなると、何か問題があるのかもしれません。支出が増えてしまった原因を考えてみましょう。

支出が増えている要因の1つは、物価の上昇です。このところ、物価が上昇していることはお感じになっているかと思います。総務省が公表する「消費者物価」の上昇率を見ると、2021年までは0.0%前後で推移していました。ところが2022年は2.5%、2023年は3.2%も上昇しています。2年間で約5.8%も上昇していることになります(2024年になってからも上昇は続いています)。これだけ物価が上昇していると、家計の支出が増えるのはやむを得ません。同じような生活をしていても、5~6%は支出が増えることになります。「特にムダ遣いをしているわけではないのに」とおっしゃっておられましたが、それでも支出が増えてしまうわけです。この点は、ある程度は支出が増えても仕方がないと割り切ってしまいましょう。食べ盛りのお子さまを抱えているご家庭ですので、無理に節約をすると、摂取カロリーの不足や、家の中がギスギスしてしまうことにもなりかねません。あえて対策を取るとすれば、まとめ買いをする、特売を狙う、など小さな工夫を積み重ねていくことが大切になります。

2.コロナ禍の反動で、旅行・レジャー・外食の支出が以前よりも増加

もう1つの要因は、新型コロナが5類に移行したことで、旅行・レジャー・外食の支出が増えたことです。コロナ禍での制約がなくなりましたので、コロナ禍前の水準に戻るまでは「増加」することになります。コロナ禍の期間が特殊だったのですから、それが落ち着くことで、以前の状態まで回復するのは自然なことです。
もっとも、コロナ禍の3年間、旅行好きの人にとって大好きだった旅行を我慢しなければならなかったのは苦痛だったでしょう。その制約が解けたことで、今までの反動で一気に旅行に行く人が増えたようです。
高橋さまご家族も、コロナ禍の憂さを晴らすように、2023年の夏には国内旅行、2024年の年末年始とゴールデンウィークには海外旅行をされています。この1年間の支出の内訳を見ると、「レジャー・交際費」が多くなっており、旅行以外のレジャーも増えているようです。また、食費も割と多いのですが、この中には外食の出費が含まれているのではないでしょうか。
3年間、我慢の生活が続いただけに、ようやく生活を楽しめるようになったことで、この分野の支出が増えてしまったのではないでしょうか。その気持ちは十分にわかりますが、問題はこれからです。
コロナ禍での制約とその後の反動はやむを得ないとしても、これからは早く平常の状態に戻していかなければなりません。「ようやくコロナ禍から解放された」と羽を伸ばし続けていると、その状態が定着してしまいます。いったん贅沢体質が身についてしまうと、元に戻すのが難しくなってしまいます。大幅な出費が〝普通〟に感じてしまうようになるからです。

3.メリハリをつけて、「たまには贅沢を」

旅行に行ったときには、せっかくの機会ですので、その地のごちそうを食べたり、たくさんのお土産を買ったりするのは当然のことです。また、普段の生活の中でも「たまには贅沢を」ということがあってもよいでしょう。しかし、「たまには」が「ときどき」に、さらには「しばしば」になっていないか、十分に注意する必要があります。
旅行やレジャー、外食に行けば、普段の節約生活とは違って支出が増えるものです。それだけに、その頻度を決めて家計の支出が膨らまないように調整するとよいでしょう。レジャーや外食は、1ヶ月に一度など、頻度を決めて、その時だけは少し贅沢をするのもよいでしょう。旅行は年単位、あるいは数年単位で頻度を決めて計画を立てて行きましょう。その「たまに」の楽しみを目標とすると、普段の生活で支出を抑える励みにもなるでしょう。いわば、メリハリをつけた支出を行っていきましょう。くれぐれも贅沢体質が定着する前に体質の改善を行ってください。

高橋さまの場合、レジャー・交際費は支出の15%程度に収まるようにしたいものです。金額は年額で合計80万円程度になります。現状に比べて60万円近く減らすことになりますが、レジャーの回数を減らして、海外旅行を数年おきにすれば達成できるでしょう。レジャーを抑えると、自動車のガソリン代も自然と減少します。外食の機会を減らすと、食費を抑えることができます。さらに、ご夫婦のお小遣いも見直したいものです。コロナ禍が明けて、その反動で増えた分を見直せば、けっして難しいハードルではありません。そうすることで、児童手当も含めてですが、年間95万円程度(収入の15%)の貯蓄ができるようになるでしょう。できれば収入の2割程度を貯蓄したいところですが、今は物価の上昇が続いていますので、まずはこのぐらいを目標としてください。今後、収入が増えていけば、貯蓄を増やしていくこともできるでしょう。

改善後の支出の内訳(単位:円)
毎月の金額
(1か月)
臨時支出
(年間)
年間支出 構成比
居住費(ローン返済を含む) 89,000 400,000 1,468,000 28%
食費 90,000 1,080,000 21%
水道光熱費 15,300 183,600 4%
医療費 3,000 36,000 1%
被服費・雑貨 18,900 226,800 4%
通信費 16,100 193,200 4%
教育費 18,900 226,800 4%
レジャー費・交際費 40,000 305,000 785,000 15%
小遣い 40,000 480,000 9%
保険料 25,200 302,400 6%
自動車関連 15,000 73,000 253,000 5%
その他 0 0 0%
合計 371,400 778,000 5,234,800 100%
改善後の1年間の収支の見込み額
収入(手取り額) 618万円(児童手当24万円を含む)
支出 523万円
年間収支 95万円

6月から、1人当たり4万円の定額減税が始まります(人によって減税時期や方法が異なります)。これでまた羽を伸ばせると思うと、贅沢体質が定着しかねません。減税は減税として、平常の状態を維持できるように心がけましょう。


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