物価の上昇で家計が赤字になっています。どうすればよいでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 支出の内容を分析すると、物価上昇が主な要因ではなさそうです
  • 楽しみのための支出が、仕事を理由に膨らんでいます
  • 仕事にどれほど影響があるのかを検討し、冷静に判断をしてみましょう

三浦 茉奈さん(仮名 34歳 料理教室講師)のご相談

3年前に勤めていた会社を辞め、好きだった料理を仕事にしました。当初は収入がほとんどなく、退職金を取り崩す生活でした。ようやく軌道に乗り、前職ほどではありませんが、ある程度の収入を確保することができるようになりました。しかし、このところの物価上昇で支出が増えてしまい、毎月大きな赤字となり、再び貯蓄を取り崩すようになっています。物価の上昇だけに、どうすることもできず、困っています。どうすればよいでしょうか?

三浦 茉奈さん プロフィール

ご相談者 手取り年収 貯金額
三浦 茉奈 さん  34歳(料理教室講師) 297万円 315万円

<家計の状況>

<収入>(手取り収入)

(単位:円)

月給 ボーナス 合計
給与収入 185,000 230,000 2,680,000
その他の収入 24,000 0 288,000
合計 209,000 230,000 2,968,000

<支出>

(単位:円)

毎月の金額 臨時支出(年間) 年間支出
1 居住費 68,000 816,000
2 食費 80,000 960,000
3 水道光熱費 9,200 110,400
4 医療費 3,500 42,000
5 被服費 28,000 100,000 436,000
6 通信費 4,600 55,200
7 レジャー費・交際費 30,000 200,000 560,000
8 教養費 3,000 36,000
9 雑貨・日用品 20,000 240,000
10 保険料 5,300 63,600
11 その他 30,000 360,000
合計 281,600 300,000 3,679,200

年間収支

-711,200

家計が赤字になる原因は物価の上昇だけでなく、仕事を言い訳に浪費を正当化したためです

1.家計収支が赤字になった原因は……

最近の物価上昇には、頭を悩まされますね。消費者物価の上昇率は年2.0~3.0%程度となっていますが、この状況が続くと家計には確実にマイナスの影響を及ぼします。今までは収入で賄えていたのに、このところは毎月赤字になってしまうという人は少なくないでしょう。
三浦さまは、現在は料理教室の講師の仕事を得て、さらに料理紹介のブログなどでも収入を得ているとのことです。貯蓄を取り崩す生活から脱却したいところですが、家計収支の赤字が続いているようですね。最近の物価上昇のために支出が膨らんでいるとのことですが、支出の内容を分析しながら、赤字となる原因を探ってみましょう。

いただいた家計の状況を拝見しますと、食費と「レジャー・交際費」の支出が多いのが目につきます。お一人暮らしですので、食費が月8万円(平均)というのは多いでしょう。理由を伺うと、外食が多く、それがここに含まれているとのことです。食べ歩きが趣味で、おいしいと評判のお店のうわさを聞くと、わざわざ食べに行くそうです。お仕事の参考にもなるということで、自己投資でもあるとのお話でした。また、旅行が趣味で、年数回の国内旅行に加え、海外旅行も年1~2回は行っているそうです。旅先でその地の特産品や郷土料理を食べることが、気分転換だけでなく、仕事にもプラスになっているとのことです。
被服費も多めですが、料理教室の生徒さんは女性が多く、ある程度はやむを得ないということです。「雑貨・日用品」はそのほとんどが化粧品で、「その他」の項目に計上されているのはエステサロンの費用です。こちらも同じ理由で美容にはある程度の出費が必要とのこと。さらにエステは仕事の疲れをいやしてくれる効果もあります。
お話を伺っていると、食べ歩きや旅行、そして美容関連への出費が大きく、それが家計収支の赤字の主な原因だと思われます。もちろん、物価上昇も影響しているとは思いますが、それがなかったとしても収支は赤字になっていることでしょう。

2.「仕事にプラス」であると考え、支出が増えてしまった

三浦さまは、仕事が軌道に乗って収入が増えるとともに、それ以上に支出が増えてしまったようです。収入が増えたことで安心感が生まれ、財布のひもが緩んでしまったのかもしれません。また、コロナ禍が終わり、外食や旅行を楽しめるようになり、支出が増えてしまったという面もあるでしょう。コロナ禍前も、外食や旅行、美容にお金をかけていたのかもしれませんが、その時はお勤めで十分な収入があり、支出が多いことに気が付かなかったと思われます。コロナ禍が明けた今になって、家計収支が大きな赤字になり、驚かれたのではないでしょうか。
収入をさらに増やすことができれば、状況を改善することができますが、簡単なことではありません。やはり、支出の内容を見直して、支出額を抑える必要があります。見直すには、支出額が大きく、抑えることが可能な外食、旅行、美容関連から手を付けるのがよいでしょう。

ここで問題を難しくしているのは、これらの支出が「仕事にもプラスになっている」、仕事上で「ある程度はやむを得ない」という面があることです。〝楽しみ〟のための支出でもあるのですが、〝仕事にプラス〟〝やむを得ない〟ということを理由に、ついつい支出が増えてしまったようです。仕事を言い訳にして、自分の中で支出することを〝正当化〟してしまうようです。
確かに、これらの支出は仕事に役立っているのかもしれませんが、そのために貯蓄を取り崩してしまい、生活が成り立たなくなるようでは、本末転倒です。これらの支出を抑えた場合に、はたして仕事にどれくらいの影響があるのか、冷静に判断をしてみましょう。もし、現状の出費を続けなければ、仕事に支障が出てしまうのであれば、今の仕事では生活を支えることができないということです。根本的に仕事を見直さなければならないということになります。コスト(支出)とベネフィット(収入)を天秤にかけて、程よいバランスを探ってみてはいかがでしょうか。

3.優先順位を付けて取捨選択し、家計支出を抑えましょう

家計の赤字の脱却には、支出を抑えることが第一です。できれば貯蓄もしていきたいところですが、まずは支出を収入の範囲内に収めることを目標にしましょう。
しかし、やみくもに支出を抑えなさい、というわけではありません。大きく抑える部分と、それほど抑えない部分に区分けして、抑える部分はバッサリと大ナタを振るいます。つまり、メリハリをつけて支出の削減をするというわけです。
それには、支出の内容を振り返って、〝優先順位〟を付けてみるとよいでしょう。

  • ① 仕事において、どれほど必要性があるのか?
  • ② 純粋な楽しみとして、どうしても譲れないものは何か?
  • ③ どのくらい費用がかかっているか?

これらの観点から比較検討してみるとよいでしょう。そのため、ある程度は仕事に役立つものや自分の楽しみを犠牲にすることになりますが、それはやむを得ません。重要なものを生かして、それ以外のものを取捨選択するのです。
三浦さまの家計支出のうち、外食、旅行、美容関連の支出を半分に削減すると、下記のようになります。

<支出>

(単位:円)

毎月の金額 臨時支出(年間) 年間支出
1 居住費 68,000 816,000
2 食費 56,000 672,000
3 水道光熱費 9,200 110,400
4 医療費 3,500 42,000
5 被服費 14,000 50,000 218,000
6 通信費 4,600 55,200
7 レジャー費・交際費 15,000 100,000 280,000
8 教養費 3,000 36,000
9 雑貨・日用品 10,000 120,000
10 保険料 5,300 63,600
11 その他 15,000 180,000
合計 203,600 150,000 2,593,200

年間収支

374,800

年間収支は30万円以上の黒字となり、貯蓄もできるようになります。もちろん、このとおりにする必要はありません。三浦さまの判断で、「もっと削減する項目」や「削減しない項目」があってよいでしょう。上記に挙げた観点を踏まえて、優先順位を付けて取捨選択をされてください。家計の収支が改善できれば、心配なく生活していくことができます。せっかく好きな仕事に就かれたのですから、長く続けられるように、発想の転換をしてみてください。


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