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養育費を払いながらの家計で貯蓄が増えません。
節約方法を教えてください。
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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近藤 恵子さん(仮名 33歳 主婦)のご相談
これから子供の教育資金もかかり、貯蓄が必要だと理解はしていますが、なかなか毎月の貯蓄ができません。
以前に袋分けなども試みましたが、いつのまにか袋は一つになっていました。
どこをどう節約すればいいのかアドバイスをお願いします。
近藤 恵子さん(仮名 33歳 主婦)のプロフィール
毎月の収支
※1 : 固定電話・携帯2台・新聞代・インターネット 現在の貯蓄
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現状を正しく把握したうえで毎月の貯蓄目標を。
目標とするキャッシュフロー表を作ってチェックしましょう。
目標とするキャッシュフロー表を作ってチェックしましょう。
いつまでにいくら必要なのかを把握しましょう。
以前は毎月の生活費を袋分けして、貯蓄を目指していた近藤さんですが、続かなかったとのことですね。
袋分けは非常に有効な家計管理の方法であり、一時期でも実行されたことからも近藤さんの真剣に考えている姿勢が伺われます。但し、ダイエットや禁煙などと同様、貯蓄も必要だということを理解はしていても、過程は苦しく、決して楽しいものではありません。
筆者も含め、人間ついつい楽な方向へ歩みがちになりますよね。
しかし、ダイエットや禁煙もお医者さんにこのままだと死にますよとか言われると必死に頑張れるものなのです。貯蓄をしなくても、死ぬことはない。確かに肉体的に死亡することはありませんが、経済的な死亡(家計破綻)は十分に考えられるのです。
人間何を続けるにしても目標を持つことが大切です。貯蓄に関しても、まずは明確な目標を決めてからスタートすることが、長続きのコツと言えます。
貯蓄の目標額を設定するのに最も有効なのが、キャッシュフロー表を作成することです。下記の表で現在の貯蓄ペースを続けた場合の近藤家の貯蓄推移を見てみましょう。
このキャッシュフロー表では前提となる条件を以下の通り仮定してみました。
- 現在の生活費は収入から子供関連費と貯蓄を引いた金額とする。
- 年収 496万円 {子供関連費(2万円+5.5万円)+貯蓄1.5万円}×12ヶ月=108万円 496万円-108万円=388万円
- 今後年間収入から生活費と子供関連費を引いた金額を貯蓄額とする。
- 今年北斗君が小学校に入学したこともあり、今年以後の年間子供関連費は文科省のデータを用いました。
公立幼稚園 25.1万円
公立小学校 33.4万円
公立中学校 47.2万円
公立高校 52.1万円
私立文系 入学時25.8万円 毎年89万円
私立理系 入学時27.6万円 毎年123.1万円 - 子ども手当については、現行制度が存続するものとする。
- 物価上昇は一切考慮せず、預金利息は0%とする。
- 生活費については、お子様の大学卒業に伴い、それぞれ現行の1割減とする。
- ご主人様退職時に3,000万円でマンションを購入する。
- マンション購入後も維持費等を考慮して、老後の生活費は同額とする。
お気づきかと思いますが、今回のキャッシュフロー表は今後の出費予想を お子様関連費以外ほとんど考慮していない、いわば最少出費バージョンと呼べるものであります。
また現在毎月1万5千円、ボーナス16.8万円、子ども手当年間24万円、年間合計58万8千円の貯蓄ができていることになりますが、生活費を変えないとすると、貯蓄可能額が33万円に減ってしまいます。
今後マイカーの再購入だってあるでしょうし、出費要素は沢山あるはずです。
この表を見ると、
ご主人様退職時にはまだ貯蓄があるが、その後どんどん減少していってしまい、老後資金がショートしてしまう。特に奥様の年金が満額支給となる以前の、ご主人様69歳時までは減り方が急激である。
ということが分かります。
とにかく定年時までの貯蓄ペースを少しでも上げる必要があるのです。
では、いくら必要なのかをこれから考えてみましょう。
毎月の貯蓄額がいくら必要なのか。
毎月の貯蓄額をあと1万円・2万円・3万円と増やした場合のキャッシュフロー表がこちらになります。
貯蓄を増やすことは容易なことではありませんが、毎月3万円増やした場合でもマンション購入を考えるとまだまだ十分とは言えなそうです。
もっとも老後資金についてはあくまでも目安であり、実際は収入の範囲内で生活しようとするので、表のように貯蓄が減ってしまうとは思いませんが、備えあれば憂いなしです。
近藤さんの場合、現在使途不明金が約1万4千円程度あるので、あと6千円頑張ってプラス2万円ペースでの貯蓄を目指してみてはいかがでしょうか。毎年の収支を予測しながら、毎月の貯蓄目標額を決めてみてください。
節約方法
毎月の貯蓄額を決めたなら、後は残りのお金でやり繰りするだけです。その金額しかないのですから、決めた以上はその範囲内で生活するしかありません。
その場合に有効な手段は、やはり家計簿をつける、あるいは袋分けに再チャレンジすることです。
忙しい中、毎日家計簿をつけるのは大変かと思いますが、給料日から給料日までの生活資金の減り具合を日々把握することによって、ムダ遣いは確実に減ってくるものです。
また袋分けにも簡単な方法があります。
毎月の給料から貯金と固定費を抜き、後はその金額を月日数で割った金額を袋分けし、毎日それ以上は何があっても使わないようにします。余ったお金は次の日の袋に入れてもOKです。
こうすることによって、今日の袋にお金がない場合、消費を遅らせることになり、ムダな出費を減らす習慣がつくのです。
給料日前に余ったお金は節約のご褒美に外食やレジャーにまわすなど楽しみを残しておくと家族全員のムダ遣いを減らせます。
出費別に見ると、少額ですが一番節約しやすいのが食費・光熱費・通信費です。
食費はちょっとした材料の工夫などで可能ですし、光熱費については震災後既に浸透していると思いますが、電化製品の待機電力を減らす、スイッチをこまめに消す、あるいはお風呂の時間帯を家族集中させるなど様々な工夫が紹介されています。
来年購入する新車も是非燃費の良い車を選んでいただきたいものです。
また生命保険の見直しも効果的です。
特にこれから教育費の出費がかさむ近藤さんの場合、終身保険を掛け捨ての定期保険にしてみたり、各種共済を組み込むことによって保険料を安くすることができる場合があります。
もっとも最低限の保障は確保しておく必要があるので、無料相談などを利用して公平な立場のファイナンシャルプランナーに相談されるのがいいでしょう。
節約以外の方法
節約して貯蓄を少しでも増やすことは一番重要なことですが、やはり限界があります。
支出を減らすのが難しい場合は収入を増やすしかありません。
- 奥様の就業期間を60歳まで延長する。
- ご主人の就業期間を65歳まで延長する。
(年収200万円でも効果は絶大です)
などの方法を検討してみてはいかがでしょうか。
さらに少しでも有利な資金運用を考える。
現在、近藤さんの貯蓄の内400万円は普通預金で運用していますが、例えば非常用の資金として100万円だけ残しておいて、300万円は定期預金に移し、少しでも金利を稼ぎたいものです。
ネット銀行や給与振り込み先銀行のキャンペーン金利などの情報を入手して、少しでも有利な金利で運用するのがポイントです。全体で0.5%位の運用を目指してみてください。
収入増を実行してみた場合のキャッシュフロー表がこちらです。
このように就業期間の延長と無理のない資産運用を組み合わすことによって大きな効果を生み出すことができます。
これなら老後生活もなんとかなりそうです。
まとめ
近藤さんの場合、家計が一番苦しくなるこれからの時期にコツコツと貯蓄を続けていくことが、豊かな老後生活を送る鍵となります。わずかなお金でも、「塵も積もれば山となる」です。
キャッシュフロー表を作成することは、貯蓄計画を立てるために最も有効な方法ですが、状況に応じて常に見直していくことが肝心です。人間の体と同じようにお金も生き物ですから、絶えずチェックして最善の処方をしてあげる必要があります。
今後景気が上向き、収入が増加する、あるいは金利が上昇することだってあるでしょう。そうなると想像以上にお金が増えることだってあるのです。しっかりとした資金計画を立てて、幸せな日々を過ごしていかれることを願っております。