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家計の支出を節約する巧い方法はありますか?
井上 信一先先生 (いのうえ しんいち) プロフィール |
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高橋倫子さん(40歳 仮名)のご相談
子ども3人の5人家族です。 日常の食費や通信費、被服費など、考え得るものはかなり切り詰めています。ですが毎月の余裕がなく、思うように貯蓄ができていません。マンションの引っ越しも検討したいのですが、なかなか実行できません。ワンランク上の家計の見直しについて相談させて下さい。
ご相談者のプロフィール
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さらなる収支見直しのための3つの視点と、10の方策をご提案します。
高橋様、ご相談ありがとうございます。
お子様3人で現在の年間貯蓄率は、中々頑張っておられると思います。今後、お子様の成長と共に教育費や関連費も重くなります。かつ、子ども部屋や年頃を迎えればそれぞれの個室が必要になり、引っ越しを検討せざるを得なくなりそうですね。
今回は、当面の収支改善にポイントをおいてコメントいたしますが、よろしければ、根本的な家計予算づくりに関する以下も、あわせてご参照ください。
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さて、いただきました現在の家計状況を、下図のとおり整理してみました。
お子様の習い事含め教育費に惜しみなく注ぐお考えがよくわかります。 また、保険も教育費等を目標にされた積立型商品を重視されているようですね。 一方で、夫婦ふたりの携帯料金とプロバイダー等含め通信費を格安業者に移行されるほか、食費、雑費、水道光熱費、被服費等を工夫して抑えている様子も垣間見ることができます。
すでに、充分に家計支出を掌握されていると想像できますので、今後、さらに支出が増えると予想されるなか収支改善を進めるには、抜本的な3つの視点での見直しが求められることでしょう。
視点1 優先順位の低い支出項目の切り捨て
視点2 収支改善の為に収入を増やす努力
視点3 発想を変えた節約術
以下、そのための具体的な10の方策をご提案いたします。ぜひご検討ください。
1.究極の選択として優先順位の低い支出はバッサリ捨てる
現在の支出をベースに、そこから減らそうと考えるとどうしても限界があります。そういう時は、最低限の生活水準からの積み上げを考えてみると気づくこともあります。 ポイントは優先順位。例えば、“漠然と必要に感じている”は、本当に必要でしょうか?
①習い事や塾で意味のないものはやめる
親が習わせたいことと子が習いたいこととに乖離があるなら、取捨選択の岐路です。費用対効果から子のキャリア形成に遠回りの学習費は、この際切り捨てましょう。
②医療保障等の生命保険は、“それがないと家庭が崩壊”するわけではありません
損害保険は総じて、もしもの時に“その補償なくば家計が崩壊”するものが殆ど。加入しないという選択肢がほとんど無いので、あとは割安な商品や割安な保険料払込方法を選ぶだけです。誤解を恐れずにいえば、これに対し生命保険のなかには、“入っていればラッキー”程度の保障もあります。我が国の公的医療保険制度は、民間保険に加入しなければならないほど逼迫したものではありませんよね。
③旅行や帰省は毎年必要ですか?レジャーはお金をかけねばなりませんか?
年に数回だけでも家族に残された憩いの時間とはいえ、究極の節約項目です。
2.節約効果は収入の範囲が限度。ならば収入を増やしましょう
月収40万円なら節約できる上限は頑張っても40万円。でもそれはもちろん不可能です。当たり前のことですが、支出を減らすより収入を増やす方策を検討するのが健全です。
④妻のパート時間を増やすか正社員で働く
一番下のお子様も、そろそろ終始手のかかる時期を過ぎる時分でしょう。奥様がもっと働き収入を増やす方法を検討するのが、収支改善に向けて最も近道です。
3.今までにない視点の節約も生活のなかに取り入れましょう
インターネットで検索すると、実に驚嘆すべき節約術があります。なかでも、以下の2つは私も共感できる方法です。もし、まだ試していないならぜひ。
⑤支出に工夫を
クレジットカードや店舗専用カードのポイントは、いわば「仮想通貨」に匹敵します。ムダなポイント集めや還元・割引等の罠に陥らなければ利用しない手はないです。また、外食をしたいときは我慢して、デパ地下等の総菜を買って家で食べるのもあり。気分転換も味わえ、コストは確実に安くなるようですね。
⑥予算はできるだけ短いスパンで管理する
家計の予算は長期で組むほど全体を把握できます。でも、管理は短期なほど容易です。 食費や雑費などは月単位でなく週単位で“使える金額”を管理すると、千円単位での節約にもつながります。
— 一般的な節約術では見聞きしませんが、さらに以下はFPとしてご提案する方法です。 —
⑦旅行やレジャー等の娯楽費は個別株やETF※の現物取引を利用する
一般的な、漠然と殖やす目的の投資ではなく、出費の額を減らすための投資方法です。娯楽費などの予算額を投資し、運用成果の範囲で使うのがこの方法のルールです。例えば、年間娯楽費50万円の予算なら、25%の儲けを目指して40万円投資します。目論見通り値上がりすれば、年10万円程度の節約になります。もし、失敗(値下がり)しても40万円、30万円、20万円と予算をグレードダウンした娯楽費でその年は割り切り、翌年に頑張りましょう。 ただし、目的と手段が本末転倒になる投機的銘柄選びや信用取引は禁物です。また、配当の多い銘柄選択や儲けても税金のかからないNISAの活用もベターでしょう。
※ETF=上場投資信託 Exchange-Traded Fund の略
⑧消耗品は買わない
正確には消耗品を、消耗品ではなく長く使う愛着ある資産として手に入れましょう。支出を減らすコツは、「買う頻度を減らす」か「単価を落とす」こと。このどちらかを選ぶなら、質を落とさず頻度を減らすのが断然お勧めです。壊したり無くしたりしがちな傘、文具、廉価な電化製品等や、すぐにダメになる通勤用の低品質なワイシャツやスーツ等が該当します。
⑨お子様も節約プランに巻き込みましょう
例えば、家族の娯楽費のプランをお子様に考えていただくのはいかがでしょう?親の好みでなく主役のお子様にお金の使い方を委ねるのです。もちろん予算は抑えて。近い将来に子が携帯電話を持つときや進学を考える際の金銭教育の練習にもなります。
⑩中古一戸建ての借家を探す
ファミリー向け賃貸マンションは割高です。不利な借り手目線でなく貸し手目線で探しましょう。現在の深刻な社会問題に、シニアが住むには持て余す住宅事情があります。古臭いけど、縁側に座り庭を眺めながら線香花火のできる家。それでいて部屋数は豊富。お子様の小さいうちはそんな借家暮らしも一興では? 自治体や公共団体が相場よりも割安な仲介を手掛けていますので、探してみましょう。
ライフプランや価値観にあわせ、収支管理や資産形成手段を考えるのが今までの定石です。でも、それとは逆に支出を抑えるために価値観を変えてみるのも一考ではないでしょうか。要は、カスカスでムリばかりの生活でなく、いかに生活の潤いを他に求めるかなのです。