ボーナスが大幅に減ってしまいました。ローンを毎月返済だけにできますか?


山下和之先生 プロフィール
長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

向山 有美さん(仮名)のご相談

5年前に郊外に建売住宅を買いました。借入額のほぼ半分をボーナス返済にしていますので、毎月が約7万円、ボーナス時が約31万円の支払いです。毎月は収支ギリギリですが、ボーナスが1回あたり100 万円以上あったので、そこから年間100 万円近くは貯蓄に回していました。それがボーナスが半分ほどに減って、ほとんど貯蓄できなくなってしまったのです。ですから、住宅ローン返済を毎月分だけにして、家計を切り詰めて毎月のお給料だけで何とかやり繰りして、ボーナスから10万円でも20万円でも貯蓄に回せるようにしたいと考えています。ボーナス返済をなしにして、毎月返済だけにできるでしょうか。

向山 有美さん(仮名)のプロフィール

42歳、専業主婦。ご主人は会社員。12歳の男の子、8歳の女の子のお子さんと4人家族、5年前に買った建売住宅にお住まい。

・家計状況

月間収入 計 400,000 円
住宅ローン返済 約70,000 円 教育費 60,000 円
自動車ローン・クレジット 約30,000 円 教養・娯楽費・小遣いなど 80,000 円
食費・衣服費などの生活費 80,000 円 各種保険料 40,000 円
水道光熱・通信費など 40,000 円 貯蓄 0 円
ボーナスの収入 600,000 円
住宅ローン返済 約310,000 円 レジャーなど 90,000 円
自動車ローン・クレジット 約200,000 円
現在の貯蓄高 計 6,200,000 円
普通預金 1,200,000 円 定期預金 5,000,000 円

月3万円の節約ができればボーナスの返済を0にする借り換えは可能

公庫や年金などの公的融資のほか、民間のローンでもローンの組み替え制度があります。ボーナス併用を毎月返済だけにする、元利均等返済を元金均等返済にする、毎月返済額を増額して期間を短縮することなどが可能になります。ただし、民間ローンでは元金均等返済は利用できないところも少なくないので注意してください。こうしたローンの組み替えには金融機関別に手数料がかかることがあります。ちなみに住宅金融公庫の場合には5250円になっています。

ボーナス返済無しにすると、いきなり月5万円の返済増に!

向山さんの場合、毎月返済額が約7万円で、ボーナス時が約31万円。現状では毎月の給料やボーナスもほとんど貯蓄に回せないカツカツの状況ですから、たしかに家計の見直しが必要でしょう。ボーナス返済をなくして毎月返済だけにすると、毎月返済額は約12万円になります。現在は約7万円ですから毎月の支出を5万円ほど削らなければなりません。教育費などあまり削りたくない項目もありますが、お小遣い関係や光熱費、保険料など削減余地のありそうな項目も少なくありません。ぜひ頑張って節約につとめてください。そうすれば、ボーナスから住宅ローン返済に回していた約31万円をソックリ貯蓄できる計算です。

一括返済と借り換えで返済額を圧縮

次に2.ただ、現実問題としていきなり毎月の支出を5万円も減らすにはかなり厳しい面もあります。そこで、現在の貯蓄を生かしてこれを減らす方法を考えてみる手もあります。たとえば、残高の少ない公庫特別加算分を組み替えのときに一括返済してしまいます。貯蓄は150 万円ほど減りますが、その結果、毎月返済額を7000円ほど減らすことができます。これだけでも、家計の見直しに少しはゆとりが生まれるかもしれません。

思い切って、この際住宅ローンを借り換えてしまう方法も考えられます。銀行の変動金利型に借り換えると、毎月返済額は10万円台に減らすことができます。さらに、このときに定期預金の半分を取り崩して住宅ローンを250 万円減らせば、毎月返済額は10万円を切ります。これなら現在の月々の支出を3万円減らすだけで何とか対応できることになります。少しお小遣いを我慢する程度ですむのではないでしょうか。

放っておくと、今年から更に返済額が増えることに

変動金利型には多少の不安があるかもしれません。しかし、向山さんが利用されている住宅金融公庫のローンは、11年目以降金利がアップする段階金利型で、5年前に借り入れた向山さんの場合には、年利4.0 %に上がります。このままでもその時点で借り換えを実行しないと返済負担が重くなります。それを先取りして負担の軽減を図っておくほうが得策かもしれません。とはいえ、銀行ローンに借り換えた場合には、金利変動の可能性があるので、金利動向に細かく目を配り、金利が大幅に上がりそうなときには、固定期間の長いローンに借り換えるなどの臨機応変な対応を忘れないようにしてください。

向山さんの現在の返済状況と変更後の返済計画

建売住宅購入時の資金計画
購入価格3800万円 自己資金800 万円

融資の種類 借入額 金利 残返済期間 毎月返済額 ボーナス返済額
公庫基本融資 1260万円 3.10% 35年 2万5766円 14万1060円
公庫特別加算 170万円 3.60% 35年 7124円
年金一般融資 800万円 3.21% 35年 1万5924円 9万5544円
年金特別融資 770万円 3.40% 35年 1万9223円 7万3623円
合計 3000万円 6万8037円 31万0227円

現在のローン残高

融資の種類 借入額
公庫基本融資 1152万円
公庫特別加算 157万円
年金一般融資 733万円
年金特別融資 708万円
合計 2750万円

毎月返済だけにした場合の返済額

融資の種類 借入額 金利 残返済期間 毎月返済額
公庫基本融資 1152万円 3.10% 30年 4万9192円
公庫特別加算 157万円 3.60% 30年 7124円
年金一般融資 733万円 3.21% 30年 3万1739円
年金特別融資 708万円 3.40% 30年 3万1398円
合計 2750万円 11万9453円

公庫特別加算を一括返済した上で毎月返済だけにする

融資の種類 借入額 金利 残返済期間 毎月返済額
公庫基本融資 1152万円 3.10% 30年 4万9192円
年金一般融資 733万円 3.21% 30年 3万1739円
年金特別融資 708万円 3.40% 30年 3万1398円
合計 2750万円 11万2329円

銀行ローンに借り換える

融資の種類 借入額 金利 残返済期間 毎月返済額
銀行ローン 2750万円 2.375% 30年 10万6879円

元金を減らして銀行ローンに借り換える

融資の種類 借入額 金利 残返済期間 毎月返済額
銀行ローン 2500万円 2.375% 30年 9万7163円