今年から株式投資を始めましたが、相場がどう動くのかわかりません。どのように投資すればよいでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 株式相場の行方を見通すのは至難の業です
  • 積立投資は、毎月一定の金額で買い付けを続けていきます
  • NISAの成長投資枠でも積立投資ができます

  石田 佳奈さん(仮名 29歳 会社員)のご相談

今年からNISAが拡充されたことで、株式投資を始めました。ところが、買ったら下がってばかりで思うようにいきません。マネー雑誌やネットの記事を参考にしていますが、いろいろな意見があり、相場の先行きがわかりません。今後どのように投資していけばよいでしょうか?

石田 佳奈さん プロフィール

ご相談者 手取り年収
石田 佳奈 さん  29歳(会社員) 270万円
貯蓄額 200万円

積立投資を長期に続けることで、相場の先行きを心配する必要がなくなります

1.最近の株式相場、為替相場は予想が難しくなっています

今年(2024年)から少額投資非課税制度(NISA)が拡充され、株式や投資信託での運用を始められた方は多いことでしょう。石田さまもその一人ですね。ところが、始めてみたものの、思うようにはいっていないとのこと。今年の相場は大きな変動もあり、損失が生じている人は少なくありません。今まで預貯金だけだった方にとっては、投資した商品が値下がりして損失となるのは、精神的に負担が小さくありません。不安になって証券投資から手を引いてしまった人もいれば、投資の勉強を本格的に始めた人もいるようです。石田さまも雑誌やネットで情報収集されているようですが、今後の見通しがますますわからなくなってきたとのことです。特に最近は株式相場や為替相場が大きく動くことが少なくなく、予想外の動きに驚くこともしばしばです。

確かに、今は株式や為替相場の見通しが難しい状況だと思います。その理由の1つとして、コンピューターによるシステム売買が盛んになり、相場の変動が激しくなっていることが挙げられます。システム売買ではコンピューターが、相場の動く方向に大量に注文を出す手法がとられます。相場が上がる時には買い、下がる時には売る、という具合です。そのため、上がる時も下がる時も、その振れ幅が大きくなる傾向があります。最近、〝暴騰〟や〝暴落〟が多いのはこのためです。
理由の2つ目としては、世界経済が密接に関係しており、さまざまな要因が相場の行方に影響を与えることが挙げられます。日本の景気だけでなく、金利の動き、海外の経済状況など、多くの要因が影響し、株式や為替相場は動きます。その動きをすべて把握して、影響の程度を適切に判断するのは至難の業です。
さらに、今の景気状況が良くなっているのか、悪いのか、微妙なところにあるということも挙げられます。為替相場が円安ドル高になっていることもあり、業績が良くなっている企業が増えています。一方、物価上昇に賃金の上昇が追い付かず、消費は停滞気味です。どちらをより重視するかで、今後の相場の見方はまったく異なってきます。

2.相場の見通しは、専門家の間でも見解が分かれます

経済評論家やエコノミストなどの専門家の意見を見ても、その見解はまちまちです。医療や法律など、ほかの分野では「医者が言っている」「弁護士によると」などと、専門家の意見を参考にします(それでも人によって見解が異なることもあります)。しかし、こと相場についてはまったく逆の意見を目にすることも多く、「専門家がこう言っているから」と判断の基準にはできません。
しかし、考えてみますと、そもそも見通しが一致するようであれば、市場で取引は成立しません。売りたい(これから下がると思う)人と買いたい(これから上がると思う)人がいるから取引が成立して株価や為替レートが付くのです。どちらか一方だけ(例えば、売りたいという人だけ)であれば、取引は成立せず、価格は付かないのです。専門家の間でも意見が分かれるのはやむを得ないところです。

では、専門家の中でも見通しが当たった人を見つけ、その人の意見に従って投資をすれば利益が得られるかというと、それも難しいのが現状です。経済や相場の専門家と言われている人たちの中には、いつも「今後は上昇する」と言う強気の人と、「今後は下落に注意」という弱気の人がいます。上昇相場では強気の人が、下落相場では弱気の人が〝当たる〟ことになりますが、それがいつまでも続くわけではありません。
そもそも、予想が外れて投資で損失を被った場合でも、信頼していた専門家が損失補てんをしてくれるわけではありません。専門家の意見は意見として、参考に留めるのがよいでしょう。
このように相場の専門家でも意見は違いますし、参考程度とするのであれば、ますます今後の見通しは難しいものとなります。ここは、今後の見通しを考えるよりも、「相場の先行きはわからない」ものと考えた上で投資を行う方が良いのではないでしょうか。

3.積立投資がお勧めです

では、「相場の先行きはわからない」ということを前提とすると、どのように投資をすればよいでしょうか?ここでは、そのような前提で有効な投資法として、積立投資をご紹介いたします。
積立投資は、「毎月、一定の金額で投資を行う」投資法です。毎月5,000円でも1万円でも構いませんが、できるだけ長く続けられるように、無理のない金額を設定するとよいでしょう。毎月一定の株数(投資信託であれば口数)ではなく、一定の金額で買い付けることがポイントです。そうすることで自然と、価格が安い時には多い株数(口数)を、価格が高い時には少ない株数(口数)を購入することになります。その結果、購入価格の平均が低くなり、利益が得やすくなります。
もちろん、一番下がった時にまとめて購入した方が利益は大きくなります。しかし、そればかりはわかりません(それがわかるのであれば、そのタイミングでは買う人だけとなり、取引が成立しません)。一か八かで勝負するのではなく、できるだけ損失の可能性を低くするための次善の策です。
積立投資をしていると、精神的にも良い面があります。まとめて購入した場合は、それがうまく当たると良いのですが、購入後に下がってしまうと精神的にかなりダメージを受けます。投資の予算をすべてつぎ込んでしまった場合は、後は株価の回復を祈るだけとなってしまいます。それに対して積立投資は、毎月継続して購入していきますので、購入後に下がった場合、次はより安い価格で買い増しをすることになります。「次はさらに安い価格で購入できる」と考えると、購入している商品が下がっても前向きに考えることができます。もちろん上昇すれば、値上がり益を得ることができます。つまり、上がっても下がっても前向きに捉えることができるというわけです。

NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの非課税枠が用意されています。つみたて投資枠は、対象の投資信託を積立投資するのが規定となっています。それに対して成長投資枠では年間240万円までであれば、まとめて投資することができます。しかし、成長投資枠でも、積立投資をすることは可能です。株式であれば、NISAの口座で株式累積投資を設定すれば、選んだ銘柄を毎月一定の金額で買い付けされます。投資信託も積立投資を設定することで、毎月買い付けがなされます。つみたて投資枠よりも幅広い銘柄が対象になっていますので、投資対象や投資地域を選ぶことができます。いずれも一度設定しておけば、後は毎月自動的に買い付けがなされます。年間の投資枠を超えないようにすることを注意しておけばよいでしょう。
その上で、できるだけ長い期間にわたって積立投資を続けていくとよいでしょう。積立投資は、長期間続けることでリスクを減らし、投資の成果を確実にする効果があります。NISAは期間の制限がなくなりましたので、長期にわたって積み立てを続けることができます。


最近話題になっているNISAに興味があります。どんな商品を選べば良いのか教えてください。
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