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投資信託の基準価格が大幅下落!売却のタイミングで悩んでいます
市田 雅良先生 (いちだ まさよし) プロフィール |
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新藤 和彦さん(仮名 49歳 会社員)のご相談
2年前に資産運用にと、知り合いが勤める証券会社から投資信託を購入しました。毎月配当が出て楽しんでいたのですが、運用会社から今までの配当を減らすという通知が届きました。投資信託の基準価格が相当減っていることを知ってはいたのですが、3割以上減ってしまっています。
間もなく子供が大学進学なのでお金が必要なのですが、これ以上損をしないために今が売却のタイミングなのでしょうか?
新藤 和彦さん(仮名 49歳 会社員)のプロフィール
現在の年間の収入
現在の年間の支出
子供2人の教育資金予測
※ 投資信託GS。毎月分配金1万口あたり40円(2009年から30円に減額)。現在の基準価格6,000円 |
「とりあえず投資」が失敗の元。長期運用が基本だが、必要であれば解約も
2008年から続く今の状況を、経済評論家は100年に一度の金融危機だといいます。今後も相場環境が好転する可能性はなかなか見えてこないといわれていますが、推移を見守っていきたいと思います。
では、そういった「経済危機?」といわれる中で、生活者はどう資産運用をしていけばいいのかを考えてみましょう。
生活者にとって資産運用が必要なのは、将来に発生するライフイベントを見据え、そのイベントをクリアする為のお金を事前に準備しておかなければならないからです。そこで、イベント達成資金調達のために、計画的に積み立てて資産運用する必要があります。
積み立てには、「ふさわしく」そして「少しでも有利な」金融商品を選んで資産運用をすることになりますが、もっとも多くの方は安全有利な貯蓄性金融資産を選ばれています。
イベントがせまっているのに準備したお金ではクリアできない!といった場合は、もう少し貯めるか、またはやむを得ず「借金」に頼るという方法をとることになります。でも、なるべく借金はしたくないものです。
「ふさわしく」そして「少しでも有利」な金融商品を見極めるにはどうすればいいのか?それがとても悩ましいところで、そして大きなポイントとなります。
ライフイベント表を作り、資産運用する金融商品を見つけるための整理の仕方を考えよう。
ステップ1-ライフイベント表で将来のイベントを確認します
ライフイベント表ステップ2 手元資金の割振りの考え方
新藤さんが貯めた金融資産550万円の資金を優先順位別に割り振ると、順位が高いのは教育資金です。準備には学資保険200万円があり、それを目的使用することになりますが、新藤さんは双子のお子様なので、あと教育費200万円が不足となります。そこで、まずは定期預金の解約で100万円の資金繰りが可能と考えられます。でも、まだ100万円が不足していますのでその捻出の仕方なのですが、次に充当したいのは投資信託GSとなります。ところが投資信託GSの基準価額は下がっていて150万円(当初投資額200万円)なので、解約すれば50万円の損失が出ることになります。新藤家のライフプランにとっては重大な問題であり、判断に悩むところとなります。選択肢としては、不足分の資金調達のために泣く泣く投資信託GSを解約して充当するか、それともこのまま投資信託GSを保有し続けて教育融資を申し込むか・・・といったことになります。
ステップ3 目的は何だった?投資信託GS!
そもそも新藤家の金融資産に占める投資型金融商品の割合は4割と高く、間もなく大きなイベントの教育資金支出を控えている状況での元本保証のない投資信託GSは、ライフプランに適さない運用商品といえます。
投資型金融商品は、短期運用よりも長期運用に適しているといわれています。短期に必要となる教育資金支出に充てようと考えて投資信託を購入されたのなら、不適格といえます。もっとも投資信託GSを購入してから毎月分配金があり、それなりに楽しんでおられたのはメリットといえるのでしょうが、「分配金」は欲しい、「元本割れ」もせずにイベントに使いたい・・・やはり「そんなウマイ話はない」と考えるべきでしょう。
新藤さんが購入された投資信託GSは、目的のない「とりあえず投資」であり、それは計画性のない投資といわざるを得ないもので、ライフプランニングとは縁がないものです。それはイベントの優先順位とは関係なく引き出され、本当に必要なイベントが出てきたときに足らないといったことがおこる可能性があります。ということは、融資を受けなければイベントが成り立たなくなる可能性もあるということです。
新藤さんが、時期が来た時にあわてて融資を考えざるを得なくなったということになれば、計画性がなかったことになります。
ここで投資信託GSの評価をしてみましょう。今解約すれば50万円の損失額となりますが、約2年間の保有していた期間に受け取った分配金は22万円あり、それを考慮に入れると、その差額28万円が実質損失となります。もちろん分配金は受け取ったものの貯蓄に回らずに消費されてしまったということなので、感覚としては50万円の損失となってしまうのでしょうが・・・。
ステップ4 投資運用ルールを家庭で決めよう
投資をする運用ルールを決めておきましょう。例えば、必要な資金調達のためには「運用していて損が出ている状況であっても、必要であるならば解約してでも使う」を基本として考えます。つまり「リスクがあるのを承知で運用していたのだから、たとえ投資額を下回っていたとしてもイベント必要資金に使っていく」という考え方です。それを覚悟で運用しましょう。
短期間でイベントがある場合は、ある程度手堅い金融商品となるでしょう。一方、10年以上先のイベントには投資型金融商品も選択肢の一つとして考えられることになります。
ステップ5 イベントごとの「目的別貯蓄シート」を作成します。
目的別貯蓄の再構築を行い、必要資金と必要積立額を見直してみましょう。
(単位:万円)(1)目的 | 金融商品 | (2)目標金額 | 達成期間 | (3)手元資金A | (4)不足額 | (5)不足の積立額/年額 | 達成額B | トータルA+B | |
1 | 大学入学金長男 | 236 | 200 | 36 | 18/年 | 36 | 236 | ||
2 | 大学入学金次男 | 236 | 2年後 | 200 | 36 | 18/年 | 36 | 236 | |
3 | 家の修繕 | 100 | 4年後 | 100 | 100 | 25/年 | 100 | 100 | |
4 | 車の買換え | 200 | 7年後 | 0 | 200 | 約29/年 | 200 | 200 | |
5 | 旅行 | 60 | 2年後 | 0 | 60 | 30/年 | 60 | 60 | |
6 | 万が一の準備 | 50 | |||||||
550 | 約120/年 |
(1)イベントの目的を入れます。
(2)目標金額を設定
(3)今の手元資金からイベントに使える額を割り振ります。
(4)目的のイベントの不足額を出し、 積立必要な額を出します。
(5)必要年間積立額と、12カ月で割った月額必要積立額を出します。
(ここでは必要年間積立額のみ記載)
(6)<現状と計画を比較して改善点を見つける>
現在貯蓄に回せるお金は「現在の年間の支出」の表にあるにある116万円です。計画では年120万円なので、4万円を捻出しなければなりません。貯蓄計画見直しのポイントは、我慢できるのは車の買い替えで、7年→10年後とすれば、年間29万円→20万円となり、貯蓄計画は達成できる可能性が高くなります。
ステップ6 目的別の貯蓄プランができたならば、現在の貯蓄を見直そう。
ステップ5では、「金融商品」の種類がまだ記入されていません。イベントにふさわしい金融商品を、「期間」「金額」「積立方法」などに分け、候補を絞り込んでいきます。
それでは計画してみましょう。1,2,の入学金は今まで通り学資保険と短期なので定期預金など。3,の修繕費は期間が4年なので、これも定期性の預貯金が候補となります。4,の車の買い換えは10年という期間なので投資型も候補に入れたいところです。たとえば個人向け国債10年などが相応しいと考えられます。5,の旅行は例えば、旅行会社の旅行積み立てなどを選択したいところです。20万円を目標に2年間(24回)積み立てた場合では、月々8,185円×24回(2年)=196,440円。この金額で20万円の旅行券と交換となります。60万円であればこの3倍です。ただし50万円までしか取り扱わない旅行社もあるので調べる必要があります。6,は万が一に対して換金性の高い貯蓄が相応しいと思います。普通預金などでもいいのではないでしょうか。
まとめ
投資型金融商品の2008年1年間の成績を見てみましょう。<参考>の表は1年間という短期間での評価ですが、分散投資を行っていても債権、株式、為替とどれもマイナスとなっています。唯一個人向け国債だけがコンスタントに利払いがあったのでプラスとなっています。
投資は短期で考えるものではないのですが、この1年は為替変動が円高に激しく動いたためか分散効果は出ていないのがわかります。しかし今回、投資型金融商品のデメリット面が出たことで、この教訓を踏まえ「投資」を勉強するいい機会となったのではないでしょうか。
「とりあえず投資」という考え方は、元本割れのない「とりあえず貯金」と比べても、元本割れのリスクが高い分、必要なイベントに間に合わなくなる可能性がとても高くなります。そこで、金融商品を選ぶ際には、投資型にしろ、貯蓄型しろ、ライフイベントにマッチした金融商品を選ぶ目が必要です。そして、この先が読めない時代には、その目がより重要なのです。
<参考>
短期投資(2008年1月購入~12月時価)の結果 | |||||||||
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資産の種類 | 商品例 | 販売会社 | 元本 A | 購入手数料(店舗購入) B | 時価 C | 受取分配金 D | 損益 E=C+D-A-B |
利回り E÷(A+B) |
売却手数料等 |
国内債券 | 個人向け国債10年 | △□証券 | 1,000,000円 | 0 | 1,000,000円 | 6,720円 | 6,720円 | +0.7% | 6,720円 |
外国債券 | G・S・オープン | ×○証券 | 999,375円 | 15,739円 | 768,250円 | 55,000円 | ▲191,864円 | ▲18.9% | – |
国内株式 | TOPIX連動型ETF | ○△証券 | 998,300円 | 11,036円 | 537,340円 | 13,025円 | ▲458,971円 | ▲45.5% | 6,855円 |
外貨 | 米ドル建てMMF | △×証券 | 1,000,000円 | 0 | 818,975円 | 0 | ▲181,025円 | ▲18.1% | – |