固定金利期間終了後の金利変動に備えて 繰り上げ返済を考えています


汀 光一先生 (みぎわ こういち) プロフィール
 
  • 貯蓄のできる時期に貯蓄額を増やしていきましょう
  • 繰上げ返済・・・教育費と老後の貯蓄は残して
  • 貯金・ローンの定期的な見直し

濱口利夫さん(仮名)のご相談

夫婦共働きで、二人の子供を保育園に通わせています。2年前に家を購入し、3,100万円の借入があります。3年固定金利なので、今年10月までに繰上げ返済をしようと考えています。1,000万円の貯蓄があるのですが、子供の教育費等を考えると、どのくらい返済に充てたらいいのか相談にのっていただきたく、よろしくお願いいたします。

住宅ローンの内容は下記のとおりです。

借入日 2003.11.17 借入額 3,100万円
3年固定(変動金利) うち保証料率 0.14%
金利 1.74%      
返済終了日 2038.3.26      
融資残高 21,005,286円 (月返済)    
  8,508,010円 (ボーナス返済)   合計29,513,296円
濱口利夫さん(仮名)のプロフィール
33歳男性、会社員
妻(32歳、会社員)と5歳と0歳の娘さんの4人家族
世帯年収は、700万円。
毎月の家計

収 入  
330,000円 
奥様  200,000円 
その他 円 
収入計 530,000円 
ボーナス

収 入  
1,200,000円 
奥様 1,000,000円 
収入計 2,200,000円 

支 出  
基本生活費 140,000円 
住居費 82,000円 
教育費 40,000円 
生命保険 33,000円 
車税金・管理費 7,500円 
持家経費 6,667円 
支出計 309,167円 

支 出  
税金・社会保険料

1,680,000円 

住宅ローン 350,000円 
帰省・旅行 円 
損害保険 円 
車検 100,000円 
   
支出計 2,130,000円 

1ヶ月の収支 220,833円 
ボーナスの収支 70,000円 

毎月の貯蓄  
貯蓄 176,667円 

ボーナスの貯蓄  
積立定期 円 
預貯金  56,000円 
貯蓄合計  56,000円 

教育費(保育料)、生命保険、車税金・管理費、持家経費については月割り、税金・社会保険料は毎月分も便宜上ボーナスから支出とします。また、毎月及びボーナスの黒字の80%を貯蓄すると仮定して計算しています。

繰り上げ返済だけでなく、金利上昇局面では借り換えも視野にいれて

濱口利夫様ご夫婦は末のお子さんが0歳と、これからお子さんの成長とともに発展するご家族です。また、2年前ご主人31歳時には3,100万円のローンを組み住宅を購入されました。そこで住宅ローンの繰上げ返済と、生活収支やお子さま二人分の将来の教育費などの配分をどうしていくべきかということが課題となっています。現在でも1,050万円の貯蓄があり、毎年貯蓄も増えていきますので、基本的には将来の支出の増加にも耐えられるようなしっかりした家計管理がすでにできていると思われます。ただ、今後金利が上がりますと、住宅ローンが3年固定では、返済額が増えてしまいますので、繰上げ返済とともに場合によっては借り換えも視野に入れてみても良いかもしれません。

現状と将来の収支の確認

まずいただいたデータにより、濱口利夫様の家計の状況をまとめてみますと、以下の通りになります。
現状の収支は上記家計内容の通りで、(車検代を毎年平均化した場合)年間約217万円の貯蓄をされています。これは現在お子さんもまだ小さく教育費があまりかからないと、生活費を月14万円と安く抑えている努力の結果です。今は貯蓄のできる時期ですので、この調子を継続し、さらに貯蓄額を増やしていきましょう
将来の収支は次の「キャッシュフロー表」の通りです。毎年の年間収支・貯蓄残高の推移を表した下図のような表のことを「キャッシュフロー表」といいます。
物価上昇率を0%、ご主人の給与の上昇率を年1%、貯蓄額1,050万円の運用率を0.005%としています。

お子様の教育費は、高校まで公立、大学は私立短大に進学するというご希望に沿って設定しました。住宅ローンは、35年の変動金利型3年固定の元利均等返済、金利1.74%で借りています。購入後の固定資産税を含む維持費は、年間8万円としています。この維持費は将来年間30万円程度に増えると思われます。

将来の収支は、定年後濱口利夫様が厚生年金を受け取るまでの時期は、年間収支が赤字になりますが、預貯金を取り崩すことでカバーできますので、全く問題ありません。 また、住宅ローンは、繰上げ返済用の資金もすぐ貯まりますので、コツコツと繰上返済を活用すれば、ご主人の定年よりかなり前に完済することが可能です。

金利上昇時の住宅ローン

住宅ローン金利は、ここ数年歴史的に低い水準でしたが、既に上昇を始めています。今後もさらに上昇する可能性が強いと思われます。従って現在のような金利状況では長期の固定金利のものを中心に住宅ローンを組むべきです。
固定金利選択型も変動金利の一種で、当初一定期間の金利が固定されているタイプのものです。固定金利期間が終わると、その時点の金利が適用となり返済額も再計算されます。ただし、新返済額には、変動金利のようなそれまでの返済額の1.25倍までという歯止めがありません。金利は上昇を始めると2年ほどでかなり高くなってしまうので、金利が高いとそのまま返済額に反映されることになり、場合によっては、将来の返済額が急に40~50%も増えるというリスクもありえますので注意が必要です。同じ金融機関で固定金利の住宅ローンに変更できない場合は、その際多少金利が高くなっても長期固定金利型の住宅ローンへ借り替えるのもひとつの方法です
借り換え先の例として、金利が急に上がる前にSBIモーゲージ などにご相談されるのも良いかも知れません。

手続きの費用を含めても将来トータルコストが安くなる可能性もあります。

繰上げ返済・・・教育費と老後の貯蓄は残して。

住宅ローンの繰上げ返済は、期間短縮型の繰上げ返済が利息の軽減効果が大きくなります
また、早い時期に実行すればするほど節約できる利息が多くなります。繰上返済した金額は、すべて「元金」の返済に充てられます。返済開始後早い段階では、返済額に占める利息の割合が大きいので、「期間短縮型」を選択すると、その期間分の利息が全部カットされ、利息の軽減額が大きくなるからです。

◆返済期間短縮型の仕組み

繰上返済手数料の低い(又は無料の)ローンの場合、できるものなら繰上返済を毎年やったほうが、利息の軽減額も大きくなります。ただし、金利が低く手数料が高い場合は、毎年繰上返済することが必ずしも有利とはいえないので注意が必要です。
また、繰上げ返済は、貯蓄のほとんどを充ててしまうと家計のバランスを崩します。緊急予備費と教育資金、そして定年間近になりましたらご夫婦の老後のための計画的貯蓄は残しておいてください

繰上げ返済例
労働金庫
実施時期 月返済分 ボ-ナス返済分 返済タイプ
残債 繰上返済額 残債 繰上返済額
34歳 2,059.39 299.78 842.42 299.61 期間短縮型
35歳 1,705.83 101.07 517.7 91.38 期間短縮型
36歳 1,548.26 101.27 399.18 98.79 期間短縮型
37歳 1,387.73 101.1 271.05 91.15 期間短縮型
38歳 1,224.55 100.53 148.45 97.69 期間短縮型

今年、月返済分、ボーナス返済分とも300万円ずつ繰り上げ返済し、以後38歳まで毎年、月返済分、ボーナス返済分それぞれ100万円ずつ繰り上げ返済した場合の例です。

将来の収支は、こちらも定年後濱口利夫様が厚生年金を受け取るまでの時期は、年間収支が赤字になりますが、預貯金を取り崩すことでカバーできますので、全く問題ありません。
上のお子様が短大に入るまでは、このペースで繰り上げ返済することは可能ですが、もし預貯金の金利が長期の固定に換えた住宅ローンの金利を上回ってきたら、そのまま運用しておくのもひとつの方法です。

対策・・定期的な見直し

また、将来お子様が私立高校に進学することになったり、塾の費用が多額にかかってきた場合は、繰上げ返済の金額も少なくして、年間の収支がトントンかわずかな赤字くらいにしておいたほうが安全です。
そして病気やケガで入院などしないよう、ご主人や奥様をはじめ、ご家族全員が健康で元気でいることが一番です。マイホームという夢を実現したのですから、これからは、是非、ご家族がいつまでも元気で楽しく過ごされることをお祈りしております。
さらに、濱口利夫様ご夫婦には、今後も生活設計の変化により、定期的な見直しをされることをおすすめいたします。