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いわゆる「お一人様」で老後が心配です。
投資を始めてみようと思うのですが、何から始めれば?
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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堀 美恵子さん(仮名 37歳 派遣社員)のご相談
私はいわゆる「お一人様」なので、老後の生活がとても心配です。
現在手持ちの金融資産はすべて銀行に預金していますが、最近「貯蓄から投資へ」という言葉をよく耳にするようになり、少しでも資産を増やせればいいなと思い始めました。
今から始めても遅くはないのでしょうか。また始めるとしたらどのような投資から始めればいいのか教えてください。
堀 美恵子さん(仮名 37歳 派遣社員)のプロフィール
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目標は老後資金の不足額1,000万円を投資で確保
商品選択と時間でリスクを分散
商品選択と時間でリスクを分散
堀さんの現状を拝見しますと、きっちりと貯蓄もされており、また住居にも恵まれて、普段の生活も充実されているようにお見受けします。
ただ、ご相談にあるように老後生活に対する不安は誰もが抱いている悩みであり、また預金金利がとても低いのも事実で、もう少しお金に働いてもらいたいというお気持ちはごもっともです。
老後の生活に不安を感じている堀さんにとって最適な投資はどういうものか、これから考えていきましょう。
まず老後に必要なお金を把握してみましょう。
現在堀さんの月収は28万円で、この内5万円を貯蓄に回されていらっしゃいます。つまり、23万円が生活費ということになります。この金額が多いか少ないかということはさておき、仮にこの生活費が一生涯必要だと仮定してみます。
お仕事を辞められた後の生活費はどの位必要になってくるのでしょうか?
日本の女性の平均寿命は86歳ですので、長めに90歳まで考えてみることにします。
60歳までお勤めになったとしたら、老後は30年ということになりますね。
23万円×12ヶ月×30年=8,280万円
が必要で、これってものすごい金額ですよね。
でも安心してください。堀さんの場合65歳から年金が支給され、現在の収入から推測すると、おおよそ月額13万円程度はもらえる筈です。
そうすると
8,280万円-(13万円×12ヶ月×25年)=4,380万円
となり、約4,500万円が60歳までの貯蓄目標額ということになります。
また将来の住宅リフォームなど、急な出費に備えるためにも余裕資金を確保しておきたいところです。
備えあれば憂いなしです。
現在のペースで貯蓄を続けたら23年後60歳時にいくらになるのでしょうか?
現在の普通預金:250万円⇒ほとんど増えない 現在の定期預金(年利0.3%):1,700万円⇒約1,820万円 毎月の貯蓄:5万円(元金1,380万円)⇒約1,430万円 合計:約3,500万円 目標額には足りませんが、あともう一歩というところですね。 ここからはお金に働いてもらう方法について考えてみましょう。
投資の考え方
投資をすれば楽して簡単にお金が増える。
決してそんなことはありません。
投資にはリスクが付き物だからです。
ここでいうリスクとは一般的にいう危険とは少し意味が違います。
ブレ幅、つまり上がったり下がったりすることを指します。
投資は必ず儲かるものではなく、損することもあるということを常に意識しておかなければなりません。
とすると、堀さんにとって最悪の場合損してもいいお金は?
ここで、堀さんの資産を3つに分けて考えてみることにします。
(1)日常生活資金:普通預金
(2)老後のための資金:定期預金+毎月の貯蓄
(3)余裕資金:毎月の貯蓄
といったところでしょうか。
この内、日常生活資金・老後のための資金はどうしても確保しなければならないお金といえるでしょうが、余裕資金については少しくらいの損ならば今後の生活を大きく変化させる要因にはならないとも考えられます。
この部分、つまり定期預金の一部と毎月の貯蓄額の一部を投資にまわしてみてはいかがでしょうか。
投資初心者の堀さんは全体資金の2割から3割位から始められるのがよいでしょう。
分散投資のすすめ
すでに述べたように投資にはリスクが付き物です。
このリスクを低減させる方法が分散投資です。
よく例えで使われるのが卵の話で、ひとつの籠に10個の卵をのせると転んでしまったら10個全部がパーになってしまいますが、10の籠に分けておけばひとつの籠が転んでも9個の卵が残っていますよという論法です。
ただ一口に分散投資といっても大きく以下の3つに分けることができます。
(1)商品の分散
(2)地域の分散
(3)時間の分散
(1)商品の分散(2)地域の分散については、大まかに国内株式・海外株式と国内債権・海外債権に分けると考えればいいでしょう。ご自分で銘柄を選定するのは非常に困難かと思われますので、最初から分散されたいわゆるバランス型といわれる投資信託や市場連動型のETFなどから始めることをお勧めします。
(3)時間の分散は、価格が上下する局面で平均取得単価を低くする手法(ドルコスト平均法といいます)なのですが、毎月の貯蓄分を投資していくことにより、自然と分散されますので問題はないと思われます。
そして一番大切なことは、23年間という長い時間を味方につけるということです。
23年の間にはサブプライム問題やリーマンショックに匹敵するような局面もきっとやってくることと思われます。しかし、裏返せばいいときも必ずやってくるのです。そして個人投資家の最大の強みは好きなときにいつでも資金を回収できることにあります。23年の間に目標額に達したら、そこで投資や~めた!と宣言することが可能なのです。
堀さんが今から投資を始めても決して遅くはないと思える理由がここにあります。
以下23年間投資した場合の具体例を挙げておきます。
●ケース1(定期預金と毎月の貯蓄分両方から投資)
現在の普通預金:250万円⇒据え置き
現在の定期預金:1,700万円⇒500万円で投資信託購入
毎月の貯蓄:5万円⇒3万円はそのまま定期預金積立
2万円で投資信託購入
投資信託の収益率が2%の場合
現在の普通預金:250万円⇒ほとんど増えない
定期預金(年利0.3%):1,200万円⇒約1,290万円
投資信託:500万円⇒約790万円
毎月の定期預金積立分(年利0.3%):3万円⇒約860万円
毎月の投資信託:2万円⇒約700万円
合計:3,890万円
投資信託の収益率5%の場合
現在の普通預金:250万円⇒ほとんど増えない
定期預金(年利0.3%):1,200万円⇒約1,290万円
投資信託:500万円⇒約1,540万円
毎月の定期預金積立分(年利0.3%):3万円⇒約860万円
毎月の投資信託:2万円⇒約10,430万円
合計:4,970万円
●ケース2(毎月の貯蓄分のみから投資)
現在の普通預金:250万円⇒そのまま据え置き
現在の定期預金:1,700万円⇒そのまま据え置き
毎月の定期預金積立分:5万円⇒全額投資信託購入
投資信託の収益率が2%の場合
現在の普通預金:250万円⇒ほとんど増えない
定期預金:1,700万円⇒約1,820万円
毎月の投資信託:5万円⇒約1,750万円
合計:3,820万円
投資信託の収益率が5%の場合
現在の普通預金:250万円⇒ほとんど増えない
定期預金(年利0.3%):1,700万円⇒約1,820万円
毎月の投資信託:5万円⇒約2,580万円
合計:4,650万円
注)もちろん収益率がマイナスになる場合もあります。
まとめ
老後の生活を安定させるためには、投資だけがすべてではありません。
同じ定期預金にしてもネット銀行のキャンペーンなどを利用して、少しでも高金利なものを探してみるのもいいでしょう。
節約をして毎月の貯蓄額をあと少し増やすというのも有効な手段です。
投資ではありませんが、堀さんの場合この先現在お住まいの土地家屋を所有されるという強みがあります。もし老後資金がショートしそうになった場合、土地を担保にお金を借りて生活資金に充当し、お亡くなりになった後に残存資金あるいは土地で返済する(リバースモーゲージといいます)といったことも可能と思われます。
投資を始める場合は、堀さんが一時的にせよ、どの位の資産の目減りまで耐えられるのか、100万円までなのか500万円までなのか、また1割までか3割までなのか具体的な数字を思い浮かべた上で、よく考えてから始めることが大切です。