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大学生の子どもと義父母への仕送りで精一杯です。
貯蓄をするには、どこを改善すればよいでしょうか。
村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール |
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斉藤洋子さん(仮名 40歳 主婦)のご相談
この春から長男が東京の大学に進学し、一人暮らしを始めました。そのため、毎月10~13万円(アパート代、食費等)の仕送りが必要になりました。また、それとは別に年金暮らしをしている別居の義父母にも毎月8万円の仕送りをしています。
毎月のやりくりで精一杯のため、貯金がほとんどできません。どこを改善したらよいでしょうか。アドバイスをお願いします。
斉藤洋子さん(仮名 40歳 主婦)のプロフィール 家族構成 : ご本人 40才 主婦、夫 45歳 会社員、長男 18歳 学生 収入
支出
現在の貯蓄残高
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今は負担が大きく、貯蓄がしにくい時期。
お子様が大学を卒業したら貯蓄を増やしていきましょう。
お子様が大学を卒業したら貯蓄を増やしていきましょう。
1.家計が苦しい期間はあとわずかです。
お子様の大学進学。嬉しいことですが、同時に家計の負担が重く感じられるようになりますね。さらにその上、お義父(とう)様、お義母(かあ)様への仕送りもあるとなると、その負担は並々ならぬものがあります。家計の状況を拝見しても、毎月のやりくりに苦労されているのがうかがえます。
斉藤様のご家庭は、とても堅実に生活をされていて、節約に努められているようです。浪費はされておらず、無駄な支出はほとんどありません。このようにしっかりした家計管理をされていらっしゃいますので、ここからさらに節約をして貯蓄を増やすというのは、なかなか難しいことです。現在貯蓄ができないのは、斉藤様の家計に無駄があるからではなく、お子様の学費と仕送り、そしてご両親への仕送りと、家計を逼迫させる負担を抱えているからです。この負担さえなくなれば、実はかなり貯蓄ができるはずです。とはいえ、今はがんばってこの状況を乗り越えていくしかありません。ただ、この負担はいつまでも続くものではありません。現在はお子様の学費と仕送りが大変ですが、これはお子様の大学卒業までのことです。4年間我慢すれば、もう教育費の負担からは開放されます。また、ご両親への仕送りは当分続きそうですが、それとて永遠にというわけではありません。また、ご自宅のローンがありませんので、その分は負担が少なくなっています。
2.老後や万が一を支える年金制度
ところで、どうして貯蓄できないことが心配なのでしょうか。今一度、振り返って考えてみましょう。もう、子どもの教育費のための準備という時期は過ぎましたね。では、貯蓄をする目的は何でしょうか?
今の時期は、将来に対する不安が主な理由ではないでしょうか。老後にお金の心配なく過ごしていくことができるだろうか。病気などになった時に治療費の手当が十分にできるだろうか。といったことが中心でしょう。確かに、いつまで生きるのかは誰にもわかりません。健康で長生きすればするほど、経済的には不安になるという皮肉な問題があります。ただ、ご存知のように年金制度があり、特に会社員や公務員を続けてきたご夫婦はある程度の年金額を受給することができます。もちろん、公的年金だけでは豊かなリタイアメント生活を送るには不足してしまいますが、それでもやみくもに心配する必要はありません。また、ご主人に万が一のことがあった場合でも、会社員の妻は比較的しっかりと守られています。ここで、どのような年金の支給があるのか、確認してみましょう。
<老後に受け取る老齢年金>
1.老齢基礎年金
25年以上保険料を支払っている人が対象となります。専業主婦や保険料免除になっている期間も25年に含めます。基本的に65歳からの支給となります。金額は保険料を支払った期間によって異なります。満額の40年間の納付で年額79万円となります。
2.老齢厚生年金
会社員の経験のある人が、基礎年金に上乗せされて支給されます。昭和36年4月以降に生まれた男性、昭和41年4月以降に生まれた女性は65歳からの支給となります。金額は勤続年数や給与金額によって異なります。統計によると、男性の平均は年額130万円程度となっています。(社会保険庁「平成19年社会保険事業の概況」より算出)
3.加給年金
年金制度の家族手当のような制度です。20年以上会社員だった人に対しては、配偶者が年金をもらい始めるまでの間、支給されます。年額22万円に、生まれた年による加算がつきます。
<世帯主が死亡した場合の遺族年金>
1.遺族基礎年金
18歳未満の子どもがいる場合に支給されます。年額79万円に子どもの数による加算がつきます。
2.遺族厚生年金
会社員が死亡した場合に妻や子などに支給されます。老齢厚生年金の4分の3の金額です。老齢厚生年金を受給している夫が死亡した場合も受給できます。
3.中高齢寡婦加算
子どものいない妻は、遺族基礎年金が支給されませんので、遺族厚生年金にプラスして、40~65歳の間に支給されます。子どもが18歳となり、遺族基礎年金の支給が終わった場合も同じです。金額は年額59万円となります。
<障害になった場合の障害年金>
1.障害基礎年金
年金保険料を納付していて、1級、2級障害になった場合に支給されます。1級は年額99万円、2級は同79万円です。
2.障害厚生年金
会社員が障害となった場合に支給されます。金額は障害等級や給与金額によって異なります。
斉藤様の場合、ご主人様は会社員ですので、老後は65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されます。さらに、会社で独自の企業年金制度を設けていれば、それも支給されます。厚生年金基金や確定拠出年金などです。そして、洋子様ご自身は会社員の妻ですので、65歳から老齢基礎年金が支給されます。以前に会社などに1年以上の勤務経験があれば、その分を反映した老齢厚生年金も支給されます。洋子様への年金支給が始まるまでの間はご主人様の年金に約40万円の加給年金が加わります。
ご主人様に万が一のことがあった場合は、洋子様には遺族厚生年金が支給されます。お子様が18歳以上となっていますので、遺族基礎年金は支給されませんが、その代わりに中高齢寡婦加算が加わります。
3.貯蓄は「貯める時期」と「使う時期」があります。
上記の年金制度を考慮に入れて、斉藤様の今後の家計状況を分析してみましょう。老齢厚生年金は、今までの給与などによって金額が異なります。正確な金額は仕事を辞めるまで確定しませんが、平均的な数値を使って、おおよそのところを見てみましょう。
<シミュレーションの前提条件>
- この6月から洋子様がパートに出られるとのことですので、その分を加えています。
- 学資保険の学資金を収入金額に加えています。
- ご主人様の老齢厚生年金は120万円として計算しています。
- 給与、物価の上昇率は0%としています。
グラフを見ていただくと一目瞭然ですが、貯蓄が底をついて家計が破綻してしまうことは、現状ではありません。それほどの贅沢さえしなければ、老後も生活費の心配をせずに過ごすことができます。
家計には、「お金を貯める時期」と「使う時期」というものがあります。まず、子どもが中学生までの間はお金を貯める時期です。この期間に高校・大学の教育費を貯めていないと後で苦しくなります。そして、子どもが大学生の間は、それまでに貯めた教育費を使う時期です。この期間には貯蓄ができませんが、大きな赤字にさえならなければ大丈夫です。斉藤様の場合は、学資保険で教育費の準備をされていたので、それが今に生きていますね。子どもの大学卒業後から定年退職までの間は老後に向けて貯蓄をする時期です。この期間に十分に貯蓄をすることで、退職後はその貯蓄を使いながら老後を過ごすことができます。貯蓄を多く積むことができれば、それだけ豊かなリタイアメント生活を送ることができるようになります。
斉藤様の今の時期は、家計が多少の赤字になってもやむを得ない期間です。この6月からパートを始められるとのことですが、これで当面の苦しい期間も乗り切れます。今は貯蓄ができなくてもあまり気にする必要はありません。お子様が大学を卒業してから60歳の定年まで10年間ありますので、その間に貯蓄を増やしていけば、老後の備えは十分にできます。ご主人様が65歳まで働くことができればさらに安心です。
その上で、貯蓄を増やすためのアドバイスを2つ申し上げます。1つは洋子様の収入を増やすことです。今、年間40万円のパートを始められたところです。簡単にはいきませんが、ご主人様の協力も得ながら、本格的に仕事をされることを検討されてはいかがでしょうか。老後に余裕を持ってセカンドライフを楽しむことができるようになります。
もう1つは、生命保険の見直しです。現在は月3万円の生命保険料を払っています。詳細がわかりませんが、金額からすると「定期付き終身保険」でしょうか。お子様があと4年で独立しますので、大型の保障は必要なくなります。むしろ、現在の貯蓄額が少ないので、病気などへの備えがそれほどありません。掛け捨ての医療保険ならば、保険料が安いものもあります。「定期保険付き終身保険」を減らせば、医療保険に新規で加入してもおつりがくることでしょう。
最後に付け加えると、お子様には家計の状況をきちんと説明しておき、4年たったら自立するように約束しておきましょう。それ以降も子どもへの負担が続くようだと、老後の生活設計が成り立たなくなります。