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結婚2年目の夫婦。子どもは2人欲しいと思っています。
人生設計に必要な家計のやりくりについて教えてください。
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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吉野 義雄さん(仮名 29歳 会社員)のご相談
結婚して2年が経ちました。
妻はパートで働いていますが、子どもができたら小学校に上がるまでは辞める予定でいます。子どもは二人欲しいので、あと1年くらいで辞めることになると思っています。
第二子も妻が35歳までにはと思っています。
そこで、退職後の家計やりくりや貯蓄方法について教えてください。
転勤族のため、家の購入予定は今のところありませんが、55歳頃にマンションを購入したいと思っています。
退職後は家業を継いだ弟のところで働く予定です。
吉野 義雄さん(仮名 29歳 会社員)のプロフィール 家族構成 : 吉野 義雄さん(仮名 29歳 会社員)、文枝さん(仮名 28歳 パート) 現在の収入(手取り)
現在の支出の内訳(一家の生活費:毎月の支出と年に何回かの支出)について
現在の資産・負債(資産の内訳:普通預金、定期預金、株式など)
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退職まで36年もあるので、小さな積み重ねが効いてきます。
目標を明確にして、貯蓄計画を立てましょう。
目標を明確にして、貯蓄計画を立てましょう。
吉野さんの場合、現在しっかりと貯蓄もしており、順調な生活をされていらっしゃると思います。
しかし、公的年金や老後生活に対する不安は誰もが抱いているものです。
この機会に少しでも不安を減らすようにしっかり準備していきましょう。
退職後の生活は退職時に既に決まっているといえるでしょう。
つまり、現役時にいかに老後資金を蓄えられるか、がカギとなります。
まずは今後のライフイベントを把握してみましょう。
ご主人が30歳時に第一子が誕生し、34歳時に第二子が誕生したとすると、わかっているイベントだけでも下記のようになります。この他にも、マイカーの買い替えや、旅行などお金のかかる行事がたくさんありそうです。
今後のライフイベント | |
ご主人年齢 | |
30歳 | 第一子誕生・奥様パート退職 |
34歳 | 第一子幼稚園入園・第二子誕生 |
37歳 | 第一子小学校入学 |
38歳 | 第二子幼稚園入園 |
41歳 | 第二子小学校入学・奥様パート復帰 |
43歳 | 第一子中学校入学 |
46歳 | 第一子高校入学 |
47歳 | 第二子中学校入学 |
49歳 | 第一子大学入学 |
50歳 | 第二子高校入学 |
52歳 | 第一子大学卒業 |
53歳 | 第二子大学入学 |
55歳 | マンション購入 |
56歳 | 第二子大学卒業 |
60歳 | ご主人定年退職 |
参考までに
文部科学省「子どもの学習費調査」平成20年度
によれば、幼稚園から高校まですべて公立に通学した場合でも
幼稚園 | 年間 | 229,624円 × 3年 = | 688,872円 |
小学校 | 年間 | 307,723円 × 6年 = | 1,846,338円 |
中学校 | 年間 | 480,483円 × 3年 = | 1,441,449円 |
高校 | 年間 | 516,184円 × 3年 = | 1,548,552円 |
合計 | 5,525,211円 |
が必要となり、大学に進学した場合は更に4年間で500万円程度は最低でもかかります。
即ち、お子様一人につき約1千万円の教育費を用意しなければならないことになります。
現在は、お子様の教育にかかる費用については、子ども手当の支給や公立高校無償化、私立高校助成などいろいろな政策が実施されていますが、今後の見通しについては不透明としかいえないのが現実です。
ただ、このライフイベントを眺めて一番重要なことは、お子様の誕生と同時に奥様のパート収入が無くなってしまうという点です。
月々 | 120,000円 × 12ヶ月 | 1,440,000円 |
ボーナス時 | 650,000円 | |
年間合計 | 2,090,000円 |
の貯蓄をされていますが、奥様のパート収入 140,000円×12ヶ月=1,680,000円 に依るところが非常に大きいといえます。
単純に計算すれば、今後は
2,090,000円-1,680,000円=410,000円
の年間貯蓄しかできないことになります。
冒頭に述べたように、老後生活のカギは退職時に決まってしまいます。
それ以降の収入は年金しかなく、年金ですべての生活が賄えればよいのですが、豊かなセカンドライフを満喫しようとする場合、殆どのご家庭が貯蓄を切り崩していかなければならないのが、現実だからです。
それでは、どうやったら貯蓄を増やせるのか、これから考えてみたいと思います。
収入を増やす方法を考えましょう。
当たり前ですが、まずは働くことです。一番大変で一番確実な方法です。 即ち、奥様のパート就業期間、ご主人が(定年退職後)弟さんと一緒に働いている期間を少しでも長くすることです。
奥様のパート収入は、マンション購入資金の確保、老後に備えた貯蓄に絶大な効果をもたらします。お子様の入学金支払時などに単年度赤字を防ぐばかりでなく、後述しますが複利効果が期待できるようになります。
ご主人のリタイア時期を遅らせることは、老後の必要準備資金を減少させます。会社勤務時から比べると収入は減るのでしょうが、貯蓄の取り崩し開始時期を遅らせるのにとても効果的です。
ただし、収入によっては厚生年金が支給停止になる場合があるので、注意が必要です。
日本年金機構で確認されるとよいでしょう。
次に考えたいのが、運用です。
現在吉野さんは資産のすべてを安全資金で運用されていますが、ご存知の通り現在の預金金利は限りなくゼロに近いのが現状です。
仮に現在の全資産1,050万円を年利0.3%・1%・2%・3%・5%でそれぞれ運用したとすると、ご主人の年金が支給開始となる65歳到達時(36年後)にはいくらになっているでしょうか?
0.3%の場合 11,695,610円
1.0%の場合 15,023,072円
2.0%の場合 21,418,817円
3.0%の場合 30,431,922円
5.0%の場合 60,814,069円
このように36年という長い期間運用すると、複利効果によって金額に大きな違いが生じてきます。
ただし、運用にはリスクを必ず伴うので注意が必要です。
また、人それぞれにリスク許容度が違うので、自分に合った運用を心がける必要があります。
吉野さんがどうしてもリスクを取りたくないというのであれば、ネット銀行などのキャンペーン期間中の円定期預金などをお勧めします。メルマガ登録をしておくと、キャンペーンのお知らせがきますので、便利です。勿論リスクはありませんし、かなり有利な金利が設定されていることが多いようです。
国債という手もあります。
ある程度のリスクなら我慢できるという場合は、
外貨預金・外国債券(為替リスクが大きいです)
国内株式・海外株式(価格変動リスクが大きいです)
などを組み入れた運用をお勧めします。
いずれにしても、ご自身のリスク許容度をよく考えて分散投資を軸としたポートフォリオを作成した上で、長い目で運用することが大切です。
長い間にはサブプライムのような暴落も間違いなく発生すると考えておいたほうがよいでしょう。そこで慌てずに冷静に対応し、あくまでも運用の目的が何十年か先の老後資金確保だということを常に思い出すようにしたいものです。
逆の見方をすれば、長い間には必ず急騰する時期もあるのです。
支出を減らす方法を考えましょう
まずは節約です。
吉野さんの毎月の支出を拝見させていただくと、食費が高いように思われます。
最近ミセスの雑誌などで食費節約術といった類の記事をよく目にするようになりましたが、実際夫婦二人で5万円程度なら何とかなりそうです。外食の回数を減らしたり、食材調達の工夫、お昼を愛妻弁当にするなど、さまざまな工夫が盛り込まれています。参考にされてみてはいかがでしょうか。
次に検討していただきたいのが、自動車関連費用です。
カーシェアリングという方法があります。
カーシェアリングとは、1台のクルマを一人で所有するのではなく、コスト削減や環境負荷低減のために、みんなで共有(シェア)しようという発想から生まれたシステムで、日常の短時間・短距離利用に適しています。
日常の利用形態・お住まいの地域によりますが、マイカーを手放すことによって大幅な節約を可能にすることができる場合があります。
ほとんどの場合が、利用頻度に応じて、料金プランが選択可能で、駐車場代、ガソリン代、保険、税金を含み、車検や定期点検の手間もありません。
最近では、パソコンや携帯電話から24時間簡単に予約ができ、15分から30分単位で利用できるケースが多いようです。
まとめ
セカンドライフについては最初に次の計算をしてみます。
{(毎月希望生活費 × 12ヶ月) - 予想年金受給額} × リタイア後の余命年数
※余命年数は長めにしておいた方が、長生きのリスクに対応できます。
この金額を目標に貯蓄計画を立ててみてください。
どの位の金額を貯蓄に回さなければならないのかが、わかってくるはずです。
もし、目標到達は難しいと感じた場合はどうしたらいいでしょうか。
(1)マンションの購入価格を下げる。
(2)お子さまの教育費に関して、奨学金の利用を検討する。
まだまだこんな方法もあります。
そして、これらの対策からはどちらも大きな金額が捻出できます。
貯蓄にしても節約にしても小さな積み重ねが大きな果実を生み出します。
そして吉野さんの場合は、老後生活のための準備期間がまだまだタップリとあります。
今日から計画的に貯蓄をしていくことで、幸せなセカンドライフが待っていると確信しています。