満期のきた預金の有利な運用法は?


伊藤 美和先生 プロフィール
貯蓄や投資を始めてしばらくすると、誰の頭にも思い浮かぶのが1000万円という夢の数字。「1000万円お金を貯める」ということはハードル走に似ています。100万円、300万円とハードルをクリアするごとに貯まるスピードはどんどん加速していきます。この「貯める・殖やす」のコーナーでは、皆さんがハードルを楽に越え、早くゴールにたどりつけるよう、お手伝いができればと思います。何でもお気軽にご相談ください。

緒方 蓮さん(仮名)のご相談

結婚2年目の共働き夫婦です。結婚と同時にマイホームを買った途端に、自分(夫)の収入が大幅カットになりました。現在は共働きなので返済に問題はありませんが、先々が不安です。3年以内に、車の買い替えと妻の出産を予定しています。来月満期の定期預金を繰り上げ返済に回すか、車の買い替えや出産のために使うかで悩んでいます。また、もし使うなら、それまでの間どんな商品に預けておけばいいでしょうか。

緒方さん(仮名)のプロフィール
34歳、会社員。26歳の奥様(団体職員)と結婚時に購入したマンションに2人暮らし。

収支の状況

1.収入
 月収(夫/手取り) 260,000 円  ボーナス(夫/手取り) 65万×年2回
 月収(妻/手取り) 210,000 円  ボーナス(妻/手取り) 40万×年2回
2.月間支出費用
 住宅ローン・管理費 96,000 円  新聞・雑誌代 4,000 円
 食費 29,000 円  車・駐車場代 19,000 円
 水道・光熱費 13,000 円  外食・レジャー 10,000 円
 通信費 16,000 円  生命保険 14,000 円
 夫こづかい 30,000 円  貯蓄 224,000 円
 妻こづかい 15,000 円    
3.生活費以外の出費(年間)
 住宅ローン 370,000 円  旅行 80,000 円
 貯蓄(普通預金) 650,000 円  家電購入 450,000 円
 税金(家・車) 110,000 円  その他
 (被服・両親小遣い他)
300,000 円
 保険料
 (年払いの生損保)
140,000 円    

現在の貯蓄等

   総額 備考
 普通預金 120万円  夫の給与振込み口座
 通常貯金(郵便局) 32万円  妻の給与振込み口座
 一般財形(夫) 246万円  
 定期預金(夫) 300万円  H17.6満期
 ニュー定期(妻) 240万円  
 豪ドルMMF(夫) 50万円  

今後の予定&ライフプラン

 時期 予定  必要額
 平成19年  車買い替え  180万円
 平成20年  第一子出産  50万円
 平成24年  第二子出産  50万円

※ 出産までは毎年海外旅行に行きたい(予算40万円)。
※ 妻は出産後も働き続けたいと希望しているが、通勤時間が長いので無理かも。
※ 子どもの進路は高校までは公立を希望。大学は国公立or私立?
※ 老後は普通の生活が送れればいい。

資産運用の方針

  • これまでは元本の安全な商品を利用してきたが、少しずつ運用の勉強をはじめたい。

その他

  • 住宅の購入は平成15年10月(頭金200万・親援助300万・ローン2500万)
  • 交際費がかかる月は貯蓄する金額が減る。

繰り上げ返済よりも手元に資金を!

毎月の家計管理は合格

毎月の支出では特に大きな無駄はありません。ご主人の収入の範囲で毎月のやり繰りができているので、出産後に奥様が退職ということになっても何とかやっていけそうです。ただし共稼ぎをやめて家族も増えるとなると、毎月の貯蓄は1~2万円と大幅なペースダウンとなります。交際費や被服費を今のうちから年予算を決めて計画的に支出していくようにしておくと収入が減った時に対処しやすいと思います。

<コラム> 貯め時を逃さないで!

子どもが生まれた夫婦の方がよく口にしているのが「夫婦二人のうちに、もっと貯めておけばよかった」というセリフ。子どもが生まれるとおむつやミルク代などに加えて、教育費の積立で月2~3万円の支出増になります。ですから出産を機に妻が退職する家計はたちまち火の車というケースが多く見受けられます。

出産を控えた共働きのご夫婦は「夫婦二人の今が貯め時」と考え、妻の収入は「ないもの」と考え、全て貯蓄に回し、夫の収入だけで生活費を賄うようにしておくのが理想
「夫婦二人の間に海外旅行を」というのもいいと思いますが、高価な家電を購入した時はレジャーの予算を抑えるなど、サイフの口を緩めすぎないことを心掛けましょう。

積極的な繰上げ返済は、出産後も働き続けられる見通しが立ってから!

ご主人の年収が1割ほど下がって、ローン返済が心配になる気持ちはよくわかります。でも結論から言いますと、積極的な繰上げ返済(満期金300万円を全て繰り上げ返済に回すこと)は、今は得策でないように思います。

今後さらにご主人の収入が減る可能性を否定できないこと、奥様は出産後も共稼ぎを希望されているけれど通勤時間が長いので無理かもしれないこと、車の買い替えも予定していること等を考えると、手元の資金に余裕を持たせておく方が安全策です。

子どもが大きくなると教育費をはじめとする‘子ども費’の支出が膨らむ一方です。そうなった時に大切なのは、住宅ローンの繰上げ返済よりも、新たな借入を作らないということです。次回以降も車の買い替えは現金で行うことを念頭に繰り上げ返済のペースを考えましょう。共稼ぎの現在、年間300万円強を貯蓄されているので、そのうちの100万円ほどを繰り上げ返済に回すということであれば、無理のないペースかとは思います。

定期の満期金は’殖やす’ことは考えずに運用を継続

ライフスタイルや収入が大きく変わるかもしれないこの時期、リスクをとって‘殖やす’運用を積極的に行うことはお勧めできません。また‘車の購入や出産’に使うかもしれないことを考えれば、2~3年という年月はリスク商品を利用した運用期間としては短すぎます。定期の満期金については‘殖やす’ことは考えず、元本の安全な預貯金での運用を継続してはいかがでしょうか。

一方、積極運用の勉強をはじめたいなら、普通預金から50万円を運用に回してみては?既に利用している豪ドルMMFを含めて100万円を‘老後資金’として殖やしていくのが一つの方法です。使い道を‘老後資金’と考えれば、短期の値上がり・値下がりに一喜一憂せずに済みます。別表で緒方さんの運用プラン例を考えてみました。ご参考になれば幸いです。

チェック!<緒方さんの運用プラン例>