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マイナス金利の影響で銀行も厳しいと聞きます。
銀行が倒産したら、と考えると預金が心配です。
村井 英一先生先生 (むらい えいいち) プロフィール |
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井上翔太さん(仮名 27歳 会社員)のご相談
銀行預金が500万あります。今までずっと銀行に預けていましたが、銀行が倒産すると戻ってこないと聞きました。
このまま銀行に預けるのが一番なのか、または郵便局に預けたり、外貨預金にするなど、他の方法も考えるべきなのでしょうか?
ご相談者のプロフィール
◆家族構成 |
外貨預金や投資信託は預金保険の保護対象外でかえって心配。
1000万円以下の預金は保護対象ですので安心して預金を増やしましょう。
1.元本1,000万円までは保護されます。
こんにちは、井上様。最近話題の「マイナス金利」の影響で、銀行の経営は難しくなっています。低金利といっても、普通預金や定期預金には利息が付きます。一方、銀行は預金で集めた資金を運用しようと思っても、なかなか運用先がなく、国債で運用するとかえってマイナスになってしまう状況です。それだけに銀行の経営環境は厳しく、万が一の事態もないとは言えません。銀行が倒産して、預金が戻ってこないということにならないように、確認をしておきましょう。
まず、銀行預金をしているということは、銀行にお金を貸している、ということになります。会社が倒産すれば、貸したお金がかえってこない、または一部しか返済されないという可能性があり、それは銀行預金でも同じです。そこで、預金保険という制度が設けられており、一定の預金については保護されています。
預金保険の対象となる金融機関は、日本国内に本店がある銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫などです。外国銀行の在日支店、海外の銀行などは対象外です。農林中央金庫、農業組合、漁業組合などは、農林漁業組合のための保険制度の対象になっています。
対象となる預金の種類とその範囲は、普通預金、定期預金、定期積金、元本補てん契約のある金銭信託、保護預かり専用の金融債が「元本1,000万円までとその利息」となっています。当座預金、利息の付かない普通預金など、一定の決済用預金は全額が保護されます。外貨預金、譲渡性預金などは保護の対象外です。
普通預金、定期預金などの「元本1,000万円まで」というのは、1金融機関についての預金者1人当たりの金額です。同じ金融機関の複数の支店に口座を持っていた場合は名寄せされて、合計額の1,000万円までが保護の対象となります。
井上様が預金しているのは国内の銀行で、現在の預金額は普通預金と定期預金で合計500万円です。預金保険の対象ですので、銀行が倒産する事態となっても心配ありません。むしろ、外貨預金は対象外となっていますので、元本が確保されない可能性があります。 郵便局に預けるということは、ゆうちょ銀行に貯金をすることになります。民営化以前に預けた定期性の郵便貯金については、政府保証が継続しますが、それ以外の郵便貯金、および民営化以降の貯金については、他の銀行と同じで「元本1,000万円までとその利息」が預金保険の対象となります。井上様の場合は、今の預金を郵便局に預け替えても、もしもの際の安全性という面では変わりありません。
2.1,000万円を超える部分については、保護の対象ではありません。
「保険で保護されている」とはいっても、すぐに降ろせなくなってしまっては心配です。銀行が倒産したと聞いたら、一刻でも早くお金を引き出したいのが心情です。では、銀行が経営破たんとなり、預金保険が適用された例を見てみましょう。1つだけ実例があります。平成22年に日本振興銀行が経営破たんした際のケースです。
9月10日の金曜日に経営破たんが発表されました。その日のうちに預金保険が適用されることが公表され、翌土曜日と日曜日に預金者の名寄せが行われました。そして、週明けの月曜日にはほとんどの支店が営業を再開し、預金の払い出しも通常通りに行われました。さらに、日本振興銀行の経営はいったん預金保険機構が設立した銀行に引き継がれ、さらにその後には別な民間金融機関に継承されました。よって、預金額が1,000万円以下の人は、定期預金の金利が引き下げとなりましたが、元本を損なうことはありませんでした。
ただし、1,000万円を超える部分については元本が保護されません。日本振興銀行の場合では、3か月後に元本の25%が仮払いされ、最終的には6割しか戻りませんでした。最後の支払いは今年の9月26日からで、実に経営破たんから6年後となっています。
3.そのほかの金融商品についても確認しておきましょう。
預金以外の金融商品についても確認しておきましょう。株式や投資信託のような変動商品には、元本の保証はありません。証券会社が倒産した場合は、預かっている有価証券を顧客に返還しますが、投資した元本が補償されるわけではありません。「投資者保護基金」という制度がありますが、これは倒産した証券会社が有価証券の返還をできない場合に、1,000万円の範囲内で、有価証券の時価を補償するようになっています。
生命保険については、「生命保険契約者保護機構」があります。国内で事業を行う生命保険会社の保険契約が補償の対象となり、責任準備金の90%が補償されます(高予定利率契約を除く)。あくまで、責任準備金の90%であって、保険金額や年金額の90%が補償されるわけではない点に注意が必要です。
損害保険については、「損害保険契約者保護機構」が補償を行います。年金払積立傷害保険のような積立型保険の場合、保険金額については90%が補償されますが、満期金、解約返戻金については80%の補償となります。(高予定利率契約を除く。)