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伊藤 美和先生 プロフィール |
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小川 久美子さん(仮名)のご相談
結婚3年目のDINKS夫婦です。どこに預けても金利が変わらないので、どんどん普通預金ばかり増えてしまっています。利率が良かった頃に預けた定期預金と積立火災保険ももうすぐ満期を迎えます(合計で約600万円)。これからどう運用していったらいいものかアドバイスをお願いします。株や投資には興味がありませんが、豪ドルの外貨預金ならどうかな、と考えています。またある程度の金額のお金を運用するなら「分散して預けた方が良い」という話を聞きますが、例えば600万円だとどのぐらいに分けて預けるといいでしょうか。
小川 久美子さん(仮名)のプロフィール
28歳。36歳のご主人とご主人のご両親とで自営業を営む。子供はなく、DINKSとして生活。
・収支の状況
収入 | |||
月収(夫/手取り) | 290,000 円 | 月収(妻/手取り) | 120,000 円 |
毎月のおもな支出 | 残額 157,000 円 | ||
住宅費 | 0 円 | 車関連費 | 25,000 円 |
食費 | 31,000 円 | 光熱費 | 17,000 円 |
水道費 | 3,000 円 | 通信費(携帯代を除く) | 6,000 円 |
携帯電話代 | 5,000 円 | 夫こづかい | 40,000 円 |
妻こづかい | 15,000 円 | 教養・趣味・娯楽費 | 10,000 円 |
貯蓄 | 80,000 円 | 被服費 | 6,000 円 |
医療費・雑費 | 15,000 円 | ||
ボーナスの支出(年額270万円の支出内訳) | 残額 0 円 | ||
住宅ローン(ボーナス払い分) | 500,000 円 | 繰り上げ返済 | 1,000,000 円 |
貯蓄 | 800,000 円 | レジャー・家電費など | 400,000 円 |
・現在の貯蓄
毎月の積立額 | 貯蓄総額 | 満期(満期金額) | |
通常貯金(郵便局) | —- | 240万円 | —- |
定期預金 | —- | 720万円 | —- |
積立火災保険 | —- | —- | 平成16年(200万) |
養老保険 | 13,000 円 | —- | 平成28年(200万) |
個人年金 | 9,000 円 | —- | 平成45年(年40万円×10年) |
・現在の暮らしと毎月の支出について
- 夫の両親と運送業を共同経営している。
- 夫は経理全般を担当。妻は事務作業+パート勤務。
- 自宅と店舗は別。夫の両親が店舗兼自宅に住んでいる。
- 夫婦とも国民年金に加入している。
- 被服費は毎月6000円の予算を設け、使わなかったら繰り越し。
- 交際費は月3000円ずつ積み立てている。妻の実家への帰省の交通費などに使う。
・マイホーム(一戸建て)ついて
- 購入時期 → 昭和63年
- ローン → 完済済み
- リフォームの予定 → 平成20年頃に外壁・防水工事を予定。
・今後の予定&ライフプラン
- このままDINKSの予定。
- ゆくゆくは夫の両親の店舗兼自宅の土地にマイホームを新築するかも。
- 土地100坪を相続予定。
- 老後は日々の暮らしに困らない程度の経済的ゆとりを持ちたい。
・今後の予定&ライフプラン
予定時期 | 必要額 | |
外壁・防水工事 | 平成20年 | 60万円 |
車(現金で購入予定) | 平成25年 | 250万円 |
満期金(600万円)は一度に全額を預け分けせず、資金の一部で運用の勉強を始めてみましょう
現状について
総務省の家計調査年報(2002年)によると、世帯主が30代後半の家庭の月平均貯蓄率は約23.0%です。小川家は、ご夫婦の手取り月収合計額の約20%を貯蓄している上に、さらに毎月の黒字がそのまま普通預金に積みあがっている状態です。実質的な貯蓄率は手取り月収の約50%以上で、DINKSならではの驚異の数字です。奥様は自営業の事務手伝いに加え、パート勤務もこなし、さらに堅実なやり繰りをされていて立派です。
小川家の貯蓄総額は、もうすぐ満期の積立火災保険を含めて約1160万円です。一方で貯蓄(8万)を除いた毎月の生活費は17万3000円ほど。今もし急に収入が途絶えたとしても6年半は、貯蓄を取り崩して今の生活を続けることができます。貯蓄額としては、もしものための備えも含めて十分でしょう。
ただし毎月のやり繰りや貯蓄内容には気になる点もあります。1つ目は毎月の残金が15~16万円にもなっていること。余ったお金は特に目的もなく普通預金に入れっぱなしになっています。2つ目は貯蓄内容が元本保証商品に偏っていることです。現在のようなデフレ・低金利の時期は、このポートフォリオでも問題はありませんが、このままでは経済情勢の変化に対応していくことが難しい状況です。
今後の貯蓄プランの方針
人生の三大出費は「住宅費」「教育費」「老後費」と言われています。小川家は既に住宅ローンを完済し、DINKSなので今のところ教育費を貯める必要もありません。個人年金にも1本加入していて老後への備えも始めているので、現在は「お金を貯める目的を見失っている」状態です。
「普通預金はハイペースで増えているけれど、どう運用していいかわからない」という問題を解決するにはまず「今後のライフプランをご夫婦でしっかり話し合う」ことが大切です。今後は「趣味や余暇の過ごし方、そして老後はどのような生活を送りたいか」などについてご主人様とよく話し合い、お2人で夢や目標を持って生活していってみてはいかがでしょうか。使う目的や時期が定まれば、どのぐらいリスクを取れるのかも含めて、金融商品を選びやすくなります。
住宅費について
小川家は住宅ローンを完済しています。ただしお住まいの一戸建ては築15年を過ぎています。今後は現在済んでいる家を丁寧にリフォームしながら長くすみ続けるのか、それとも建て替えるか(リフォームは必要最低限に抑える)についてご夫婦でよく話し合う時期にきています。
ご両親の土地に2世帯住宅を建てる可能性があるということなので、15年後を目標に建設資金を貯めていってはいかがでしょうか。毎月8万円ずつ貯めていけば、15年後には1545万円(1%複利運用)貯めることができます。2世帯住宅を建てないということになったら、お金は今お住まいの住宅の建て替えか大規模リフォームに使えばいいでしょう。
住宅の建設資金を貯める金融商品としては「つみたてくん」、「住宅積立貯金(郵便局)」、「積立貯金」、「自動積立定期(銀行)」などが一般的です。住宅を新築する時にローンを利用する予定なら、借入れ先となりそうな金融機関で積み立てを行うのも一つの手。将来有利な条件で融資を受けられる可能性が大きくなるからです。
老後に備えるために、満期金の一部で運用の勉強を始めましょう
「老後に年金はもらえるのだろうか-」。20~30代といった世代でも最近自分の老後に不安を抱く人が増えています。自営業の小川さん夫婦が将来受け取る年金は、ご主人が年約80万円(月額6万6000円ほど)、奥様が年約86万円(月額7万1000円ほど)です。2人分を合わせれば何とか生活できそうですが、年金だけでは余裕がなさそうです。また年金生活開始後にご夫婦どちらかが亡くなると、1人分の年金では生活が立ち行かなくなる可能性があります。ご夫婦どちらかが先立たれる場合も含めて老後生活を思い描き「○歳までに○万円貯める」という目標を立てましょう。自営業のご夫婦の場合「60歳までに3000万円」というのが目安の金額です。
老後はお2人にとってまだ30年近く先の話です。ですから老後資金を貯めていくなら、元本の安全な預貯金だけでなく、投資信託や外貨預金・外貨MMFなどのリスク商品も組み合わせていきましょう。というのも、元本保証の商品は、見た目には減りませんが、インフレ(物価の上昇)や円安(外貨に比べて円の価値が安くなること)によって、実質的な価値が目減りしてしまう可能性があるからです。また年をとってから詐欺に引っかかったりしないためには、若い頃からリスクと折り合っていく経験が大切です。
まずは600万円の満期金のうち100万円で、ご興味をお持ちの豪ドル預金とユーロ預金にチャレンジし、運用の肩慣らしを始めてみてはいかがでしょうか。外貨預金で運用になれてきたら株式投資信託、不動産投信などにもトライして、利用商品の幅を少しずつ増やしていってみましょう。少しずつ投資に慣れてきて、利用商品が増えていけば、自然と預け分けができていきます。
個人向け国債は、1万円から購入できます。金利は半年ごとに見直されるので、今後金利が上がっても安心です。発行後1年経てば国がいつでも額面で買い取ってくれるので、元本割れの心配はありません。ただし中途換金の場合は、直近2回分の利子相当額が差し引かれるので、2~3年以上運用できるお金で利用しましょう。銀行で買うと年間1200円ほどの口座管理料がかかりますが、郵便で買えば無料です。平成16年4月発行の第6回債の初回の利率(半年間適用される利率)は0.55%と定期預金よりかなり得です。第5回債の初回の利子は0.62%です。
老後資金の準備法
運用の勉強を始める一方で、毎月5万円ずつ年60万円のペースで老後資金の貯蓄を始めていきましょう。運用に慣れてきたら100万円貯まるごとに5~20%ほどを運用に回し、残りのお金を元本の安全な商品に預け入れるという繰り返しで資産運用していきます。すると30年後には約2854万円貯まります(3%複利運用の場合)。