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伊藤 美和先生 プロフィール |
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金子 昌康さん(仮名)のご相談
一昨年転職して収入が年俸制になり、毎月の収入は増えたのですが、家計管理がうまくいかなくなってしまいました。毎月10万円以上貯金していますが、交際費や家電製品の購入、車検や自動車税、帰省などの出費の穴埋めに使ってしまいます。家計管理を妻に代わればうまくいくようになるのでしょうか?
一方、定期預金に預け入れしているお金が低金利のせいでなかなか増えないし、「老後のお金は自分で貯めていかなければ」と考え、これから勉強して投資を始めたいと思っています。まずは50万円を上限としてローリスクなもので運用しようかと考えています。アドバイスをお願いします。
金子 昌康さん(仮名)のプロフィール
32歳、会社員。パート勤務の奥さま(29歳)と、賃貸アパートで2人暮らし。
・収支の状況
1.月間収入(手取り) | |||
夫 | 500,000 円 | 妻 | 60,000 円 |
2.月間支出費用 | |||
家賃(駐車場代込み) | 120,000 円 | 食費 | 45,000 円 |
外食費 | 27,000 円 | 水道・光熱費 | 19,000 円 |
通信費 (携帯電話代を除く) |
11,000 円 | 携帯電話代 | 14,000 円 |
医療費 | 6,000 円 | 車関連費 | 42,000 円 |
夫こづかい | 70,000 円 | 妻こづかい | 10,000 円 |
保険料 | 35,000 円 | 新聞・雑誌代 | 8,500 円 |
娯楽費 | 15,000円 | 貯蓄 | 137,500 円 |
・現在の貯蓄等(合計295万円)
毎月の積立額 | 貯蓄総額 | その他 | |
普通預金(銀行) | 10~15万円 | 45万円 | 100万円を超えたら50万を定期へ |
定期預金(銀行) | —- | 250万円 | 3ヶ月定期 |
・毎月&臨時支出について
- 月収(夫・手取額)は、年棒を12で割った額なので1年間は毎月同じ額。
- ドライブ&食べ歩きが趣味。温泉に入ったり、少し遊んだりして、日帰りするのがいつものパターン。
- 親が肩代わりしてくれた奨学金返済分を帰省の度に返している(10万×年2回)。「返さなくて良い」と言ってくれていたが、1年前父が退職して年金暮らしになり「やはり返そう」と思い、返済を始めた。残額は120万円ほど。
- 車関連費(今月4万2000円)は自動車ローン(3万円)を含んだ金額。自動車ローンはあと2年ほどで完済できる(残債は約70万円)。
・今後の予定&ライフプラン
- 2~3年以内に子供が欲しい。できれば2人欲しい。
- 40歳までにマイホームを手に入れたい。
特別な出費は別口座で管理し、出費をコントロール。投資の勉強を始めるのは賛成ですが、まずは借金の返済を優先で。
家計管理は夫・妻のどちらがやった方が良い?
「家計管理を妻に代わればうまくいく?」というご質問がありましたが「代わればうまくいくようになる」とは限りません。大切なのは家計の問題点を直視し無駄な出費を減らし、貯蓄を増やしバランス良く運用していくということです。実行できるなら夫と妻のどちらが家計管理をしても、あるいは協力して管理するということでも良いと思います。
ただし金子家の家計では「男性が家計を握っている」ために膨らんでいると思われる出費が目立ちます。特に見直したいのは(1)夫こづかい(7万円)、(2)食費(外食費込7万2000円)、(3)通信費(携帯代込2万5000円)などです。夫のこづかいは手取り月収の1割(5万円)が標準額です。食費は一般的に4人家族の1か月分が4~6万円ほどということを考え、月に5万円までに抑えましょう(外食費込)。遠出した時の食べ歩きのお金はレジャー費に計上します。通信費は携帯代込みで2万円ほどが理想です。以上を実行すれば毎月の貯蓄を約18万5000円(年222万円)に増やすことができます。
ボーナスがないので、特別支出は別口座を利用して年単位で管理!
金子家(年俸制)の家計管理で大切なのは、漠然と15万円ほどを普通預金に積み増していくのではなく、目的別に預け分けて毎月きちんとお金を貯めていくことです。毎月の生活費以外に支出するお金の年予算をあらかじめ決め、それぞれの通帳(あるいは袋分け)で管理します。例えば被服費の年予算が30万円なら、毎月2万5000円を1つの通帳で積み立てて、洋服を買う時はその中から払うようにします。そうすれば費目ごとの出費の優先順位がはっきりし、節約する工夫も生まれてくるはずです。
年222万円(月18万5000円×12ヶ月分)のうち、120万円(手取り年収の2割)を貯蓄し、特別支出は100万円以内に抑えていくのが理想です。すると毎月では、10万円ほどを貯蓄し、8万5000円ほどを特別支出のための積み立てに回していく計算になります。
年単位で支出するのは(1)交際(冠婚葬祭)費、(2)レジャー費、(3)被服費、(4)税金(固定資産税・自動車税など)、(5)帰省費などです。また保険料は年払いすれば約2~10%(例:自動車保険料は年1割ほど)、支出を減らすことができます。
いざという時のための貯金を確保した上で、借金を整理
世帯主が年俸制勤務に変わった家庭の多くは、平均的なサラリーマンよりも収入が恵まれています。でも実力の世界だけに、契約の更改や転職を機に給与が著しく低くなったり、雇用の継続性も一般のサラリーマンより不安定です。ですから減収・失業・病気・ケガで入院をした時のために、生活費の1年分(金子さんの場合約380万円)以上のお金をいつでも解約できる預貯金等で確保しておきましょう。今の貯蓄ペースなら約8ヶ月後には貯まります。
イザという時のための貯金を確保したら、次は自動車ローンの繰上げ返済用のお金をためていきます。今から約1年4ヵ月後には自動車ローンを完済できます。完済後は毎月3万円ずつを新車の購入に備えて貯めていきましょう。次の車はローンを組まず、現金で買うようにしましょう。良い車を買いたいならレジャー費や被服費を減らすなどして、車購入用の貯金を積み増す努力をしていくことが大切です。一方ご両親に返している借金は今のペースで返していけばいいでしょう。
低金利&将来の年金不安に打ち勝つ鍵は、金融機関の有効活用と運用(の勉強)
低金利の今は、銀行を始めとする金融機関のお得・サービス情報を日ごろからチェックしておくといいでしょう。銀行とお付き合いするなら、メインバンクを決め取引を集中して賢く優遇サービスを利用したいものです。また低金利に負けずお金を殖やしていくには、投資にチャレンジするのも一つの手です。
今の20~30代は、公的年金だけで老後生活を支えるのは非常に困難になる可能性が大です。ですから若いうちから老後を意識して、お金を貯めつつ運用で増やしていこうという姿勢は大賛成です。投資額は30~50万円ほどなら妥当な額だと思います。金子さんは投資をしながら経済の勉強をしていきたいとのこと。できればローリスクにこだわるよりは、値動きの理由がわかりやすい投資商品から始めるといいでしょう。リスクは投資額を減らせば抑えられます。
例えばETF。これは投資信託のひとつですが、日経平均株価やTOPIXなど株価指数の変動に連動して価格が変動するため、投資判断がしやすい商品です。また外貨MMFなどもお勧めです。外貨預金より手数料が安く、少額で始められます。米ドルやユーロなど為替の動きに利益が左右されるので、為替や経済の動きに自然と関心を持てるようになります。また食品会社・外食産業といった身近な会社の株に投資するのも良いでしょう。ミニ株(単位株の10分の1で売買する株)なら、数万円~10万円ほどで、株式投資に参加することもできます。
ライフプランを実現していくには
これから奥様が出産→子育てということになれば、奥様が働けない期間が生じます。子育て費用の出費が増える一方で、収入が減ります。家族が増えれば「マイホームを」という気持ちも強くなるでしょう。雇用が一般のサラリーマンより不安定な年俸制勤務の金子さんが、今後生活環境の変化に対応し、マイホームを購入したいなら、アドバイス以外の費目(レジャー費・娯楽費・保険料など)の削減でも一層の努力が必要です。今の夫婦2人の生活を優先するか、将来のライフプランを優先するか、今一度ご夫婦で話し合ってみて今後の貯蓄プランをお2人で決めることが肝要かと思います。