貯蓄があれば、医療保険に入らなくても大丈夫?


上野 やすみ先生 プロフィール
いま加入している保険で保障が足りているか、ムダな保障はないかを徹底チェック!必要保障額の目安や見直し方、保険料を安くおさえる方法など、ご家族の状況や家計全体のバランスを考えながら、1人1人に合った保険選びをお手伝いします。むずかしいと思われがちな保険の内容もわかりやすい言葉でアドバイスします。

長岡 清美さん(仮名)のご相談

現在二人目の子供を望む専業主婦です。頭金もないのに住宅を買い急いだこともあり、少しずつでも貯蓄をし、繰上げ返済をしたく今回保険を見直すことにしました。
しかし、いろいろと勉強していくうちに十分な貯蓄があれば、死亡保障はともかく過度な医療保険はいらないのでは?という考えにたどりつきました。でも十分な金額っていくらくらいでしょうか?
主人の保険について、自分なりに考えたのは次の通りです。
(1)個人年金保険を解約し、繰上げ返済のほうが効果的ではないか。
(2)定期付終身も解約し、主人は東京海上日動あんしん生命の家計保障定期保険とC生命の終身医療(入院日額5000円5日型・低解約・60歳払込)、医療費用の貯蓄ができるまでの期間10年ほどはアメリカンファミリーのガン保険+特約MAX5000円を払戻しありで上乗せするのはどうか。
(3)高額療養費制度があるので日額5000円で充分だとも聞きますが、主人に入院されるとローンの返済や生活費が心配なのでそういったことも考えると終身で1万円の方がいいのか。
(4)将来もしもの入院を貯蓄で補う気でいるなら思い切って共済などの掛け捨てのみにし、貯蓄に励むべきか。
(5)終身はもし買うのであれば子供の手が離れるころに貯蓄し、一時払いで買う。
私の死亡保障は共済、医療保障はC生命の終身タイプ(入院日額5000円5日型・低解約・女性特約・60歳払込)を検討中です。
アドバイスよろしくお願いします。

長岡 清美さん(仮名)のプロフィール

28歳、主婦。同い年のご主人(会社員)との1歳のお子さんとの3人家族。現在は住宅ローンを返済中。

・家計状況

1.月間収入(手取り)
 夫 290,000 円
2.月間支出費用
 住居費 82,000 円
 車両関連費
(ガソリン代)
10,000 円
 食費
(その他支出含む)
50,000 円
 水道光熱費 13,000 円
 通信費
(固定電話・携帯2台・ADSL)
18,000 円
 交際費 10,000 円
 こづかい 夫 16,500 円
妻 5,000 円
3.保険料・貯蓄
 月保険料 41,032 円
(学資保険11800円含む)
 月貯蓄・投資額 35,000 円
(団信保険・固定資産・車任意保険年払・車検費用・税金分)
5,000 円
(給料天引きで積み立て)
4.ボーナス
 手取り 650,000 円
 ローン返済費 0 円
 その他支出費用
(冠婚葬祭等緊急出費用)
100,000 円
 貯蓄額 550,000 円
5.資産・負債の状況
 現在の貯蓄残高 600,000 円
 現在の住宅ローンの残高 20,637,913 円
 住宅ローン完済時期 平成48年4月1日

・保険の加入状況

A生命保険
種類 定期特約付終身 被保険者の名義
加入時期 平成 12年 12月 期間 65歳まで
保険金額 3,000 万円
終身部分は100万
月額保険料 11,327 円(ステップ払い)
医療保障、入院給付金の一日の額 5000円災害・短期10000円 がん15000円。全て120日
A生命保険
種類 定期特約付終身 被保険者の名義
加入時期 平成 13年 12月 期間 60歳まで
保険金額 1000万円
終身部分は100万
月額保険料 6,457円(ステップ払い)
医療保障、入院給付金の一日の額 5000円
成人婦人病10000円124日
がん15000円無制限
A生命保険
種類 10年確定年金保険 被保険者の名義
加入時期 平成 12年 9月 期間 60歳まで
保険金額 570万円 月額保険料 10,043円 予定利率2%
医療保障、入院給付金の一日の額 0円
B共済
種類 定期特約付終身 被保険者の名義
期間 18歳まで 月額保険料 1,100円
(賠償特約分100円含む)
医療保障、入院給付金の一日の額 6,000円

今は教育費準備と住宅ローン返済を優先 ローン返済中だけ医療保障を上乗せするのも一案

長岡さんのご家庭は、これから教育費などの準備もしていくことになるので、長期的なプランが欠かせないですね。保険は自分が不安に思っている部分をカバーできるように選ぶことが大切なので、自分なりの考えをもって見直しを検討されているのはとても立派です。
保険と貯蓄のバランスを上手にとって、長岡さんのご家庭にあったリスクマネジメントを考えてみましょう。

個人年金保険よりもローン返済を優先すべき?

住宅ローンはボーナス返済なし、毎月8.2万円の返済で、ご主人が60歳のときに完済できるようにしているので、ゆとりを持った上手な組み方だと思います。しかし、早く返済すればそれだけ利息負担も少なくなり、もっと他のことにお金を使うことができますね。老後資金の準備も大切ですが、ご夫婦とも28歳で老後までまだ時間があります。今は教育費準備や住宅ローン返済を優先するといいでしょう。
個人年金保険は今解約すると、支払った保険料総額より少ない金額しか戻ってきませんが、がんばって貯蓄を増やし、繰上げ返済で利息を節約した方が効果があると思います。40歳頃になったら老後資金を意識した資産形成をしていきましょう。

貯蓄を取り崩す不安も考えて医療保障の有無を検討しましょう

十分な貯蓄があれば医療保障は加入しなくてもいいという考え方もあります。入院1日5000円、1回あたりの入院限度日数120日の医療保険に加入した場合、120日の入院で60万円の給付金が受け取れることになります。手術給付金は最大で1回20万円受け取るので、手術をしたと仮定すると合計80万円です。120日の入院(手術1回)が生涯で2回あった場合には160万円、3回の入院なら240万円の給付金となります。この240万円を貯蓄でとっておけば、保険に入ったのと同じ備えになるといえます。

ただ、入院が3回以内かどうかはわかりませんし、病気のときや老後になると貯蓄を取り崩すことへの不安も大きくなります。実際、入院したのをきっかけに保険の加入を考える方や、60代前後の方から医療保険に入りたいというご相談も多くあります。保険は「金額の損得」だけでは判断できない部分も多いので、その点も十分検討していただきたいと思います。

住宅ローン返済中だけ医療保障を手厚くするのも1つの方法です

会社員の場合、4日以上会社を休んだときには健康保険から傷病手当金として給料の60%が最長1年半にわたって支給されます。高額療養費の払い戻しもありますので、健康保険の対象となる治療であれば、1ヶ月入院しても医療費は8~10万円程度の負担です。民間の医療保険で入院日額5,000円に加入していた場合は、30日の入院で15万円の給付金が受け取れるため、医療費分はカバーできる計算です。ただ、個室に入ったときの差額ベッド代や、家族がお見舞いにいったときの交通費など、そのほかの費用がかかります。

また、住宅ローン返済中は団体信用生命保険で死亡リスクには備えられますが、病気で働けなくなった場合の保障はありません
長岡さんが現在ご検討されているように、まずは終身医療保険で入院日額5000円を確保し、ローン返済中だけ、あるいは貯蓄が増えるまでの一定期間だけ保障を上乗せする方法が適しているかと思います。

短期入院と長期入院のどちらを重視するか検討を

1入院あたりの限度日数が商品によって異なりますが、日数が長くなるほど保険料が高くなります。厚生労働省の統計によると、平均在院日数は60日未満が約80%、90日未満まで含めると約86%となっています。

病気の種類や年齢によって、平均よりも入院が長期化するケースがありますが、1入院60日まで、または120日までの保険で、80~90%はカバーできるといえるでしょう。
「長期入院する可能性は低いので短期入院に備える」、「短期入院は貯蓄でもカバーできるので長期入院に備える」といったように、自分が不安に思うのはどこか考えて検討してみてください。