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山下和之先生 プロフィール |
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松本 ひろみさん(仮名)のご相談
3年前に中古マンションを買いました。ボーナス返済なしですが、毎月13万円の返済なのでけっこう厳しいと思っていましたが、もともと夫婦ともに無駄遣いしないタイプで、意外に買ってからも貯蓄が進んで、最近ようやく普通預金と定期預金を合わせると300 万円ほどになりました。でも、銀行に預けていても金利はしれています。といってリスクのある投資信託などを利用する勇気はないので、ローンの繰り上げ返済はどうかと思っています。私たちの場合、どうすればいいでしょうか。
松本 ひろみさん(仮名)のプロフィール
35歳 専業主婦。会社員の夫(35歳)と長女(7歳)、3人家族。現在は分譲マンションに居住。年収/600 万円
・家計状況
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低金利時代は預けるよりも返済に 100万円の繰り上げ返済で、約50万円もお得に
低金利時代には、銀行に預けていてもほとんど利息は付きませんから、住宅ローンの一部繰り上げ返済でローン残高をどんどん減らそうと考えるのはたいへんいいことだと思います。繰り上げ返済で利息支払いを大幅にカットできますし、しかも残りの返済期間が短縮できるので、将来の生活設計が立てやすくなるといったメリットもあります。そこで、松本さんの場合にはどうするのがいいのかを考えてみましょう。
「期間短縮型」か「返済圧縮型」か
ローンの一部繰り上げ返済には毎月の返済額を変えずに、残りの返済期間を短縮する「期間短縮型」と呼ばれる方法と、残りの返済期間を変えずに、毎月の返済額を少なくなる「返済額圧縮型」とがあります。毎月の返済が苦しいのなら、「返済額圧縮型」が無難ですが、そうでないのなら「期間短縮型」が有利です。カットできる支払い利息が格段に多くなるからです。松本のさんの場合には、家計上の問題はないのですから、ぜひこの「期間短縮型」を活用してください。
「期間短縮型」というのは、繰り上げ返済するお金がすべて元金返済分に充てられます。たとえば、100 万円繰り上げ返済する場合、それが元金30回分に相当すれば、30回分の返済をカットできる仕組みです。毎月返済額が5万円とすれば、本来ならその30回の間に5万円×30回で150 万円返済しなければならないわけですが、それが繰り上げ返済する100 万円ですみます。差額50万円分の利息支払いをカットでき、それだけトクするということになります。
松本さんの場合には、公庫基本融資、年金一般融資、年金特別融資の金利の異なる3つのローンを利用しています。通常、公庫や年金は繰り上げ返済する最低単位が100 万円以上となっています(年金は利用する協会などによって異なる場合があります)。
多少家計にゆとりがあるとはいっても、ある程度手元にお金を残しておくのが安心ですから、今回約100 万円の繰り上げ返済を行うとすれば、このうちどれから繰り上げ返済していくのがいいのでしょうか。その損得を判断する指標は次の3点です。
- 金利の高いローンから繰り上げ返済する
- ローン残高の多いローンから繰り上げ返済する
- 残りの返済期間の長いものから繰り上げ返済する
金利でみると、一番高いのは年金特別融資ですが、ローン残高でみれば公庫基本融資ということになります。どれから繰り上げ返済するのがいいのでしょうか。
そこで、実際に試算してみると、以下の通りになります。公庫基本融資なら、短縮できる回数は21回で、トクする金額は51万3729円、年金一般融資は短縮できる回数が36回で、トクする金額は58万8000円、年金特別融資なら短縮できる回数は124 回で、トクする金額は49万1840円です。トクする金額だけでみれば、年金一般融資が一番有利ですから、ここから繰り上げ返済するのが得策です。ただし、心理的には年金特別融資のほうに繰り上げ返済したほうが気分的にラクになるかもしれません。ここで、年金特別融資分を減らしておけば、残高は86万円ほどになります。次に余裕ができたときにはこれをゼロにしてしまえば、毎月の返済額も減額できます。実際の家計や、気持ちの問題や将来の生活設計も考慮してどうするのがいいのかを判断してください。
松本さんの繰り上げ返済はこうなる
マンション購入時の資金計画
購入価格3000万円 自己資金600万円
融資の種類 | 借入額 | 金利 | 返済方法 | 毎月返済額 |
公庫基本融資 | 1390万円 | 2.50% | 20年 | 7万3656円 |
年金一般融資 | 800万円 | 2.97% | 20年 | 4万4247円 |
年金特別融資 | 210万円 | 3.59% | 20年 | 1万2060円 |
合計 | 2400万円 | — | — | 12万9963円 |