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伊藤美和先生 プロフィール |
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北川 直美さん(仮名)のご相談
普通預金の残高が増えてきたので、ほかの商品に預け替えたいと思っています。「社債」の利回りは、預貯金金利よりかなり有利と聞いたのですが。
北川 直美さん(仮名)のプロフィール
29歳 派遣社員。家族は父(60歳)、母(55歳)、弟(24歳)
・家計状況
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社債は預貯金より高い利率で人気を集めているものの、安易に飛びつくのは危険。高い利率はリスクの上乗せ分と認識すること。投資には十分な注意が必要です。
社債市場の最近の動向
昨年9月のマイカルの破綻で、社債の人気は一気にしぼんでしまいました。マイカルの社債が個人向け普通社債として、初めてデフォルト(元利金の支払い不能状態)となったからです。
ところが4月のペイオフ解禁を機に、社債はお金の分散投資先として見直されはじめ、さらに預貯金金利の低下で人気が再び盛り上がってきました。
金利比較
定期預金金利 | 0.02~0.07%程度 |
5年利付国債 | 0.55%程度 |
社債 | 1~2%程度 |
社債の特徴
社債は事業会社が発行する債券です。利率は発行会社の格付けや、その時々の金利情勢などにより、発行のつど決められます。利払いは年2回行われるのが一般的です。
社債の利率と発行会社の安全性
今年発行された社債の利率(今年売り出された商品の一部)
利率 | 期間 | 格付け(格付会社) | |
日産自動車 | 1.0% | 3年 | BBB(R&I) |
アイフル | 2.0% | 4年 | A-(R&I) |
近畿日本鉄道 | 1.05% | 4年 | A-(R&I) |
四国電力 | 0.25% | 3年 | AA+(R&I) |
住友不動産 | 1.85% | 4年 | BBB(JCR) |
景気低迷が長引き、上場企業の倒産も珍しくなくなった今、社債の利率決定に最も大きな影響を及ぼすのは、発行会社の経営の安全性です。発行会社の信用力が高いほど利率は低くなります。逆に信用力が低い会社の社債は利率が高くなります。表の住友不動産の社債は、四国電力の社債と期間が1年しか違わないのに、利率は7倍以上高くなっています。住友不動産の方が格付け(経営の安全性の指標の1つ)が低いと評価されているので、そのリスク分として利率が上乗せされているのです。
取り扱い
証券会社で購入できます。社債の売り出しは不定期なので、電話やインターネットで新規発行&売買情報を調べて、購入申し込みをする必要があります。購入単位は10万円または100万円というのが一般的です。
換金
満期まで保有すれば、元利金は社債を発行している企業が保証してくれますが、満期前に売却すると時価取引となり、元本割れの可能性も。また満期までに発行会社が破綻すれば、元本は一部しか手元に戻りません。
- 社債投資のポイント
- 購入資金は基本的には満期まで換金せずにすむお金であること。
- 購入者は、社債を保有中、企業の経営状況(格付け等)を定期的にチェックしていくことが大切。
- 格付けが急低下したり、発行企業が経営的に危なくなってきたetc…とような場合に、損切り(売却損を覚悟で社債を途中売却し、元本を少しでも回収する方法)を検討できる決断力も必要。
以上のようなポイントがクリアできるなら、社債はトライしてみたい商品の一つといえるでしょう。2、3について自信がない場合は利回りは劣るものの、最も信用度が高い債券である「国債」の方が安心して投資できるのではないかと思います。
用語解説
国債
特徴
国債とは国が発行する債券です。発行が多いのは「利付国債」というタイプのもので、半年ごとに利息を受け取ることができます2年・5年・10年利付国債は、ほぼ毎月発行されますが、金利情勢によって利回りはそのつどかわります。
利率(2002年4~5月現在)
現在では2年ものが0.1%程度、5年ものが0.5%程度、10年ものが1.5%程度です。
取り扱い
銀行、証券会社、郵便局などで購入できます。5万円、10万円、100万円といった券種もあるので少額でも気軽に投資することができます。
換金
国債は満期まで持っていれば利子と額面(元本)の支払いを国が全額保証してくれますが、途中で換金となると市場で売却することになります。購入時より価格が高くなって売却益を得られることもありますが、価格が下がって売却損を被ることもあります。元本割れを避けたいなら、満期までおいておけるお金で投資することが大切です。
格付けとは?
格付けとは「社債等の発行会社が、投資家に元利金の支払いをきちんとできるかどうか(債務の支払い能力)」について、格付け機関が評価するものです。「発行会社が経営破綻するかどうか」という信用リスクそのものを評価したものではありませんが、会社の経営&財務内容などの健全性を判断する重要な指標の一つといえることは確かです。格付けでは、健全性の評価をA、B、Cなどの記号で判定し、ランク付けがされます。
- 格付けのメリット
- 一般の人には難解な、事業会社などの決算書などの財務資料を直接読みこなせない人でも、格付けを見れば会社の健全性の判別ができる。
- 複数の事業会社や金融機関の健全性を比較しやすい。
- 中立的な評価が行われている。
- 複数の格付機関があるので、格付けが妥当かどうか見比べることができる。
- インターネットの普及で、リアルタイムの情報が手に入る。
- 格付けのデメリット
- すべての事業会社や金融機関が対象となっていない。
- 格付けの評価は絶対的なものではない。
→評価機関によって、判定が異なる場合がある。
→会社の財務内容の悪化のスピードに、評価替えのスピードが追いついていない場合がある。 - 格付けは時々刻々変化する(将来の安心を保証するものではない)。
→格付けは事業会社などの健全性の判断材料の1つに過ぎないと自覚することが大切。
- 格付けを利用する方法
- インターネットで格付け機関のホームページにアクセスして調べる。
- 各地の証券取引所で各格付機関が発行した冊子を閲覧する。
- 会社四季報や新聞、雑誌の格付情報を見る。
- 証券会社等金融機関の担当者に尋ねる。 といった方法があります。
格付けの評価の目安
高 ↑ 債 務 の 支 払 能 力 ↓ 低 |
AAA | 確実性は最も高い。 |
AA | 確実性は極めて高い。 | |
A | 確実性は高い。 | |
BBB | 確実性は平均水準。 | |
BB | 確実性は当面問題ないが、将来性に不安要素あり。 | |
B | 確実性に問題あり。絶えず注意すべき要素あり。 | |
CCC | 債務不履行の可能性あり | |
CC | 債務不履行の可能性大 | |
C | 債務不履行に陥っているか、その懸念が極めて強い。 |
注1:補助記号(+,-or1,2,3など)は同一格付けの中の差を示します。
注2:格付機関によって、定義は多少異なります