株式投資を始めた途端のコロナ禍で先が見通せません。老後に備えてどのようなスタンスで臨めばよいでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 景気が悪い中、株価が上昇することもあります。
  • 株式相場の先を予想して投資するのは簡単ではありません。
  • 予想をするのではなく、少しずつ継続的に投資を続けていくとよいでしょう。

  渡辺 誠さん(仮名 51歳 会社員)のご相談

子どもの教育費はおおむね目途が立ちましたので、老後に備えて昨年から株式投資を始めました。投資を始めた途端に株式相場が暴落し、あわてて資金を引き揚げたら上昇するなど、株価の動きに振り回されています。今でもコロナがどうなるかわからず、先が読めません。株式投資はどのようにすればよいでしょうか?

渡辺 誠さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年齢 年間収入
ご相談者 渡辺 誠さん 51歳(会社員) 年収840万円
ご家族 48歳(会社員)
長女 23歳(会社員)
長男 21歳(大学生)

株式相場の先を読もうとするのではなく、継続的に積立投資を続けていくことをお勧めします。

1.景気が悪い中、株式相場が上昇したわけ

渡辺様、こんにちは。老後に向けて、資産形成を考えられているとのこと。お子さんの教育費がかかる期間が終わってからリタイアされるまでは、貯蓄を増やす絶好の時期です。この期間にどれだけ資産を形成できるかで、老後のゆとりが違ってくると言ってもよいでしょう。生活費に余裕がある今は、株式投資を始めるには良いタイミングです。ただ、新型コロナの感染拡大が続いており、経済環境は不透明です。株式投資をするのには慎重になってしまいますね。

昨年(2020年)の2月に、新型コロナの感染が中国からヨーロッパ、アメリカへと広がると、世界の株式相場は暴落しました。ヨーロッパやアメリカでロックダウンや外出自粛の措置が取られ、経済活動がストップしました。日本でも3月に小中学校の休校措置、4月に緊急事態宣言が発令され、人出が激減したのは記憶に新しいところです。2020年4-6月期には、景気の状況を表すGDP(国内総生産)の成長率が、比較可能な1980年以来最低となるマイナス7.8%となりました。
株価は景気を映す鏡」とも言われますが、景気が悪くなれば株価も下落するのが自然です。株式を購入するということは、企業のオーナーになるということであり、企業の業績が悪ければ成長も期待できないため売られ、下落するからです。
ところが、株式相場の方は2020年3月に入ると下落が止まり、その後は上昇を続けました。景気が悪い中で、株式相場だけが上がっていったのです。
株式相場は常に先を読む」とも言われますが、コロナ禍が終息した後の景気回復を見越して株式が買われたという見方があります。それも1つの要因ですが、世界的な金融緩和であふれたマネーが株式市場に入ってきたという要素も見逃せません。

景気悪化を抑えるために、アメリカ、ヨーロッパ、日本の中央銀行(日本では日本銀行)が、大量の資金を放出したのです。企業の資金繰りが改善することを狙ってのことですが、その資金の一部が株式投資に回ったようです。
実際の景気と株式相場の状況が一時的に離れても、やがては近づいていくことが多いのですが、株価が実際の景気に近づく場合もあれば、景気が株価に近づく場合もあります。株価が今の景気実態に近づくのであれば株価は下落すると考えられますが、景気が良くなって先に上昇した株価に近づくこともあります。
今後、株価がどのように動いていくかは、景気の回復状況にかかっていると思われます。それには、新型コロナの終息がいつ頃になるかがポイントになるでしょう。

2.今後の予想をしないで株式投資をする

「これから上昇しそうだ」という状況で購入し、「もう下がりそうだ」というタイミングで売却できれば、株式投資で利益を上げることができます。しかし、株式相場の予想は簡単ではありません。ネットや雑誌には、多くの専門家による見通しが掲載されていますが、一口に専門家とはいっても意見はまちまちです。中には、かなり強い口調で予想をする専門家もいますが、経済の専門家でも経済予測ははずれることも少なくありません。ましてや、新型コロナの終息時期など、株式の専門家が予想できるものではありません。1つの意見として、冷静に見ておくのがよいでしょう。
もっとも、今後の見通しがわからなければ株式投資はできない、というわけではありません。むしろ、あえて先行きを予想しないで株式投資をする方法もあります。そもそも予想をしなければ、予想がはずれることもありません。株式相場が思ってもみなかった動きをしても、あわてずに対応ができます。その手順をご紹介しましょう。

まずは保有資産のうち、どれくらいを株式に投資しても良いかを決めます。株式相場が下落して、保有している株式が損失を抱えても、生活に差しさわりがない程度に抑えます。下がっても気にならない、というのは無理にしても、株式が気になって他のことが手につかなくなるようでは困ります。今後使う予定がある金額と1年分ぐらいの生活費を確保したら、あとはお気持ちで決めてよいでしょう。

株価が上昇するときだけ保有して、下落する間は手放しておく、ということができればよいのですが、先が読めない以上、うまい具合にはいきません。そうであれば、上がる期間も下がる期間も、持ち続けておくことをお勧めいたします。企業が成長していくのであれば、上下を繰り返しながらも、やがては上昇していくはずです。短期間の変動は気にしないで、企業の成長とともに株価が成長していくのを待つのです。
株式を購入する際は一度に全額をつぎ込まないで、少しずつ何度かに分けて行うのがよいでしょう。最初に予算額の全額で購入してしまうと、その後に下がった場合になすすべがありません。あとから予算額を増やしてしまうと、投資に振り回されてしまいます。
その点、始めの購入額を少なくしておくと、下がった時に以前より安い価格で買い増しをすることができます。その後に株価が回復すると、安い価格で買い増したおかげで早く利益が得られるようになります。最初に購入した後に上昇すると、「始めにもっと買っておけばよかった」という気にもなりますが、保有株式は利益が出ていますので、気分は悪くないはずです。
少しずつ購入すると、株価が下がっても前向きな気持ちになれるのが、この投資法の最大のメリットです。株式投資に充てる予算が100万円であれば、1年目に10万円、2年目に10万円と、10年かけて購入するぐらいのつもりで考えるとよいでしょう。

毎回の金額を決めて、定期的に購入していくことを「積立投資」といいます。株式相場の先が読みにくい場合に、あえて「先を読まない」で投資するのが積立投資の醍醐味です。
そして、購入する銘柄は、特定の株式に絞るよりも、幅広くさまざまな銘柄に分けた方が、リスクが小さくなります。株式市場全体の動きを反映するETF(上場投資信託)や、多くの株式を保有する投資信託を購入するのもよいでしょう。これは、「どの株が上がるのか」ということを考えない、これも「先を読まない」投資法です。


定期預金だけではもったいないと友人に言われました。投資は不安ですが少しは興味があります。何から始めればよいでしょうか。
投資に関心がありますが、どのように始めれば良いでしょうか。
投資信託で資産運用を始めようと思っています。 どの制度を活用するのが良いのでしょうか。