ニュースで話題の『定額減税』とは何か教えてください。共働き世帯も対象となる場合、どのような手続きが必要ですか?


今回、回答いただく先生は…
 
髙柳 万里先生(たかやなぎ まり) プロフィール
  • 定額減税とは、所得税と住民税の税負担が軽減される仕組みです
  • 一度に満額減税される訳ではありません
  • 満額減税できない場合、調整給付金にて調整されます

 三山 康弘さん(仮名)のご相談

ニュースで話題の『定額減税』について、仕組み がよくわかりません。最近の物価高騰の影響で、食費や日用品をはじめ、あらゆる支出が増えているため、我が家の家計のやりくりは以前より厳しくなっています。少しでも減税されるとありがたいのですが、共働きで、住宅ローン控除を受けている我が家はそもそも対象となるのか、また、どのような手続きが必要なのか等、具体的に教えて頂けますと助かります。

三山 康弘さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 税込年収
三山 康弘さん(本人 40歳 会社員) 約400万円
三山 優子さん(妻 37歳 会社員) 約300万円
長男 (中学2年生)
次男 (小学5年生)

※お子様2人は康弘さんの扶養に入っている
※住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)適用中
☆前年度もご夫婦ともに同様の税込年収

所得税と住民税から一定額が差し引かれ、税金が安くなります。会社員(給与所得者)の場合は、会社が手続きをしてくれます。

三山さん、この度はご相談ありがとうございます。2024年6月にスタートした定額減税ですが、まだまだ内容が一般に周知されていないため、仕組みがよく分からないという方が少なくありません。今記事では会社員(給与所得者)の場合の定額減税の概要を解説します。

定額減税とは?

定額減税とは、近年の物価上昇による国民の経済的負担を軽減することを目的として、2024年6月よりスタートした、税収の一部を国民に還元する制度です。

対象となる人は?

定額減税の対象者は、所得税と住民税で異なります。

【所得税の定額減税対象者】

2024年分の所得税の納税義務者のうち、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の人

※国内居住者に限る

【住民税の定額減税対象者】

2024年の所得税の納税義務者のうち、前年2023年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の人

※国内居住者に限る

※均等割のみ課税される納税義務者は定額減税の対象外

したがって、三山さん世帯は今回の定額減税の対象となります。

減税額は?

【所得税の定額減税額】

納税者本人(国内居住者に限る)→30,000円

同一生計配偶者または扶養親族(いずれも国内居住者に限る)→1人につき30,000円

【個人住民税の定額減税額】

納税者本人(国内居住者に限る)→10,000円

同一生計配偶者または扶養親族(いずれも国内居住者に限る)→1人につき10,000円

つまり、所得税3万円+個人住民税1万円=4万円となり、1人あたり合計4万円が減税されますので、三山さん宅の場合、4万円×4人=合計16万円が減税される計算となります。ただし、一度に16万円が全額減税されるわけではありません。

手続きの流れ

ご夫婦ともに会社員(給与所得者)である三山さん宅の場合、基本的に会社が定額減税の手続きをしてくれますので、三山さんご自身が特に手続きをすることはありません。
所得税と住民税、それぞれの実施方法は以下のようになります。

【所得税の定額減税】

給与所得者の場合、特に手続きをしなくても、2024年6月1日以降、最初に支払われる給与または賞与から源泉徴収(給与天引き)される所得税額から、定額減税の控除額が差し引かれます。その際、控除しきれない分があれば、6月以降年内に支払われる給与や賞与で源泉徴収される税額から順次控除されます。それでも控除しきれない場合は、年末調整で控除されます。

【住民税の定額減税】

給与所得者の場合、2024年6月分の住民税は徴収されません。
そして、定額減税による控除分を差し引いた税額が、2024年7月から2025年5月までの11ヵ月間で均等に分割して給与天引きされます。

定額減税の実施方法(給与所得者の場合)・所得税:〈6月以降の給与支払時〉月次減税事務、扶養親族の人数を確認→正しい税額と定額減税の控除額を精算→〈年末調整時〉年調減税事務、定額減税の控除額をもとに年間の所得税額を精算。・住民税:2024年6月分の住民税は徴収されない→2024年7月以降~2025年5月までの11カ月で、定額減税による控除分を差し引いた税額を、均等に分割して給与天引きされる。

※図は筆者作成

※参考(2024年7月22日時点)国税庁 令和6年分所得税の定額減税Q&A

満額減税できない場合は?

三山さんは現在、住宅ローン控除の適用を受けているとの事ですが、『住宅ローン控除により所得税や住民税の負担が軽減されている場合、定額減税分の満額の減税は受けられないのでは?』と思われるかもしれません。このように、住宅ローン控除の適用などで所得税や住民税から定額減税分が満額引ききれないと想定される場合、その不足分については、お住まいの市区町村から『調整給付金』が支給される事で調整されますのでご安心ください。

調整給付金とは?

調整給付金とは、定額減税を十分に受けられない方に対し、所得税と住民税の控除不足額の合算額を基礎として、1万円単位で切り上げて支給されるものです。
調整給付金の支給額は、2024年の所得税(推計)及び住民税の課税状況に基づき試算されます。

(例)

  • ・所得税の控除不足額→79,000円
  • ・住民税控除不足額→12,000円

上記のケースの場合、控除不足合計額は91,000円となり、調整給付金額は10万円となります。なお、税額が修正され、給付額に不足額が生じた場合等は、2025年以降に追加給付される予定です。

今回の定額減税は、2023年11月に閣議決定された『デフレ脱却のための総合経済対策』(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinkaigi/joukyou_dai3/pdf/siryou9.pdf) において、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するための特例措置として実施されるものです。あくまでも1年限りの施策ですが、手取りが少しでも増えるのは嬉しいものです。ぜひ、定額減税により増えた収入を、有効にご活用くださいね。

(※2024年7月現在の情報です。今後の情勢により制度内容が変更となる場合がありますのでご了承下さい)

 

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