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村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール |
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大石由加里さん(仮名 31歳 会社員)のご相談
万が一に備えながら、将来のための資産形成にもなればと思い、外貨建て個人年金を始めました。今までは、生命保険には全く加入していなかったので、年末調整の書類も名前を書いてハンコを押すだけでした。今年は、生命保険に加入したので、送られてきたはがきの金額を書いて提出しました。記入すると、税金が戻ってくるそうですが、どのくらい戻ってくるものなのでしょうか? 実は秘かに期待しています。
大石由加里さん(仮名 31歳 会社員)のプロフィール
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戻ってくる金額は、それほど大きくありませんが、〝お得〟なのは確かです。
1.生命保険料控除という〝減税策〟があります。
大石様、こんにちは。
今年から生命保険に加入されたということで、年末調整の書類の生命保険料控除の欄に、支払い保険料の記入をされたのですね。記入欄が複雑で、記入は大変だったと思います!
改めて、生命保険料控除について確認してみましょう。
まず、〝控除〟というのは、所得税(収入に応じて国に納める税金)と住民税(同じく、都道府県と市区町村に納める税金)の対象としない、ということです。大石様の年収は、約300万円とのことですが、このすべてが税金計算の対象になっているわけではなく、対象外の部分が多くあります。「サラリーマンの必要経費」と言われている「給与所得控除」も対象からはずれる金額です。さらに、生命保険に加入していると、年間の保険料に応じて一定の金額を、課税対象からはずします。税金計算の対象が小さくなるわけですから、その分所得税や住民税が安くなります。つまり、〝減税策〟だということです。生命保険は、死亡や病気、老後への備えです。国としては、多くの人々に、普段からしっかりと備えをしておいて欲しい、ということで、生命保険に加入して保険料を払っていると、税金を安くする制度を設けているのです。これが生命保険料控除です。
2.どれくらいの減税になるのか?
生命保険料控除は、保険の種類によって3つのタイプに分けています。
- 介護保険や医療保険の保険料
- 個人年金保険の保険料
- その他の保険料
それぞれ別枠として、1年間に払った保険料に応じて、課税対象からはずすことができます。
平成24年以降に加入した保険からは、以下の金額となっています。(それ以前に加入した保険については、金額が異なります。年末調整の書類が複雑なのは、そのためです。)
1年間に支払った保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払った保険料の金額 |
20,000円超~40,000円以下 | 支払った保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超~80,000円以下 | 支払った保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
1年間に支払った保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払った保険料の金額 |
12,000円超~32,000円以下 | 支払った保険料×1/2+6,000円 |
32,000円超~56,000円以下 | 支払った保険料×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
3つのタイプの保険をうまく組み合わせて加入すれば、所得税では最大12万円を、住民税では最大84,000円を、課税対象からはずすことができます。もっとも、この控除額の金額が減税となる金額ではありません。課税の対象からはずれる、ということですので、実際に減税となる金額はもっと小さくなります。
大石様の場合は、加入した保険が個人年金の保険料控除の対象になる商品でした。今年は、月額15,000円で6ヶ月加入していたとのことで、1年間の支払い保険料は9万円です。上記の表に当てはめると、所得税については4万円、住民税については28,000円が、課税の対象からはずれます。そして、税率が所得税では5%、住民税は10%となります。控除額に税率をかけた金額が、減税額の目安となります。その結果、所得税は2,000円、住民税は2,800円の減税となります。
年末調整がされると、12月の給料で調整がなされます。生命保険料控除以外の調整もありますので、あまり気が付かないかもしれませんが、減税になっているのは確かです。
3.年末調整していなかったら、確定申告もOK
もし、年末調整の際に生命保険について記入しないで提出してしまった場合は、年明け後に税務署で確定申告をすると、減税を受けられます。その際は、源泉徴収票とともに、生命保険会社から送られてきている生命保険料控除証明書を持参してください。マイナンバーカードも必要です。(マイナンバーカードがない場合は、個人番号確認書類と本人確認書類が必要です。)確定申告は郵送でもできます。
いかがでしょうか?期待したほどではなかったかもしれませんが、年収が増えれば、減税の効果も大きくなります。
もちろん、税金が安くなるとはいっても、そのために加入するのは本末転倒です。ご家族の状況や将来への不安を考え、それに備えるために加入を検討し、その上で利用できる減税策は有効に活用する、という姿勢が大切です。
減税のための貯蓄、ということであれば、iDeCo(イデコ;個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ;小額投資非課税制度)などもあります。
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