「保険に入らないと相続で損をする」とはどういうことですか?


今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生(もりた かずこ) プロフィール
  • 生命保険には相続税が非課税になる部分があります。
  • 相続税のかからない場合があります。
  • 配偶者は1億6,000万円まで非課税になります。
  • マイホーム購入後の保険の見直しは慎重に。

  三枝 博人さん(仮名 38歳 会社員)のご相談

マイホームの購入を検討しています。家を買ったら保険を減らそうと考えていますが、知人から「保険に入っていないと相続で損をする」と言われました。どういうことでしょうか。いくら入ればよいのでしょうか。

三枝 博人さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年間収入
三枝 博人さん(38歳・会社員)年収630万円
妻(33歳・パート勤務)年収96万円
長男(7歳・小学2年生)
預貯金 920万円
加入中の生命保険:
定期保険 保険金額 2,700万円
医療保険 入院給付金日額5,000円

死亡保険金には相続税が課税されない部分があります。保険の見直しは相続と保障の両面から考えましょう。

こんにちは、三枝さん。ご相談ありがとうございます。マイホーム購入は保険を見直すのに良いタイミングですね。一般的には世帯主の保障を減らせるタイミングとなります。一方、死亡保険金には非課税になる部分があるので、相続では有利になります。しかし、相続で不利にならない程度に保険を減らすことが良いとは限りません。一緒に考えていきましょう。

生命保険には相続税が非課税になる部分があります

生命保険に加入している人が亡くなって支払われるものに死亡保険金があります。三枝さんが加入している定期保険からも万一の場合には死亡保険金が支払われます。死亡保険金には相続税が非課税になる部分があり、「500万円×法定相続人の数」で計算される金額までは非課税です。

死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

三枝さんに万一のことがあれば、法定相続人は奥様とお子様の2人ですから、死亡保険金のうち500万円×2人で計算される1,000万円が非課税となります。仮に1,000万円が預貯金であれば、そのままの金額が相続税の対象になりますが、死亡保険金であれば非課税です。知人の方が「保険に入らないと相続で損をする」と言うのには一理あると言えます。

相続税のかからない場合があります

とはいえ、財産を相続すれば必ず税金を納めるわけではありません。財産があっても相続税がかからない場合があります。相続税を計算する時には、非課税になる部分があります。「基礎控除額」と呼ばれるもので、財産が基礎控除額以下であれば相続税は課税されません。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される金額です。三枝さんの場合は、3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。相続財産が4,200万円以下であれば、相続税は課税されないことになります。

相続の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税率は財産が多いほど高くなる

現在、三枝さんの資産は920万円で、万一の場合の死亡保険金を合わせても4,200万円以下ですが、マイホームを購入した後は4,200万円を超えそうです。「相続税がかかったら大変だ」と不安に思われるかもしれませんが、財産の額によって相続税率は異なります。10%~55%の累進課税なので、相続財産が少なければ相続税も少なく、財産が多ければ相続税も多くなります。相続財産が基礎控除額を少し超えただけで、多額の相続税が課税されることはありません。
基礎控除の4,200万円を超えても、例えば課税される金額が500万円であれば、適用される税率は10%となり、相続税は50万円になります。

配偶者は1億6,000万円まで非課税になる

また、配偶者には特別の軽減制度があり、配偶者が相続する財産は1億6,000万円まで非課税になります。現在の家計の状況であれば、持家の他に保険金や退職金があったとしても、財産は1億6,000万円以下に収まりそうです。過度に相続税の心配をする必要はないでしょう。

また、マイホームを購入すると団体信用生命保険に加入します。ローンの契約者が死亡した場合などには保険金で住宅ローンの残りが返済されます。遺族にはローンのない家が残るので、マイホームを買う前と買った後では、保険で準備しておくべき保障の大きさが変わります。「家を買ったら保険を減らせる」と言われるのはこのためです。ただし、子育て中の世代では、持ち家があっても万一の場合に生命保険で備えておく必要があるのが一般的です。保険の解約や減額は慎重に行いましょう。相続での損得に係わらず、保険の担当者やファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談しながら保険の見直しをすることをお勧めします。


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