第3回:自己責任時代の金融機関選び


今年5月のりそなホールディングスへの公的資金注入は記憶に新しいところ。破綻には至らずとも2003年3月期の決算は、大手銀行グループはすべて赤字決算でした。また、生命保険の予定利率の引下げが可能になった背景には、逆ざやでの経営悪化が懸念されていることが挙げられます。不良債権処理や長引く株価低迷で、金融機関の経営はますます厳しさを増してきていると言わざるを得ません。

一方でビッグバンによって外資系の金融機関が参入してきたことをきっかけに、護送船団方式が崩れ、商品もサービスも横並びから各金融機関ごとの特徴を出すようになってきています。当然ながら会社の体力にも差が出てきているということ。そして、私達はその違いをしっかり把握し、どの金融機関が自分に合っているのかを選択する時代になったということです。では、たくさんの金融機関の中から、どのような観点で金融機関選びをしていったらよいのでしょうか。

金融機関の保護制度

預金をしている銀行が潰れたら、自分が入っている生命保険会社が破綻したら、自分の資産はどこまで守られているのでしょうか。

銀行預金等

普通預金、当座預金等は2005年3月まで全額保護。定期預金、ビッグ等は合算して元本1000万円とその利息までを保護。1000万円を超える部分は破綻金融機関の財産状況に応じて支払われることになっています。2005年4月以降は普通預金も同様の扱いとなる予定であり、全額保護されるのは利息がつかない等一定の条件を満たす預金のみとなります。
預金保険制度で気をつけなくてはいけない点は、預けている金融機関が外国銀行の場合にはどんなに少額でも保護の対象にはなっていないということです。また、日本の銀行であっても、預け入れている商品が保護対象外であれば、金額に関係なくやはり保護の対象にはなりません。

生命保険、損害保険

保険会社が破綻した場合に、救済保険会社に対する資金援助や救済保険会社が現れない場合には保険契約の引受けなどを行うため、保険契約者保護機構が設けられています。全保険契約が補償対象で責任準備金(将来の保険金支払いのために積立てられているべき準備金)の90%まで補償されます。
損害保険については、自動車損害賠償責任保険、自動車保険、火災保険(保険契約者が個人・中小企業等の場合)、地震保険、傷害保険等が補償対象。自賠責保険、地震保険の場合は100%まで、その他は90%まで補償されます。

上記のように、預金者や契約者を保護する仕組みはあるものの、100%の保護は受けられないということです。自分の資産を守るためにも金融機関選びはしなくてはなりませんね。選ぶポイントの一つとして「経営の安全性」を確認することも大切です。

経営の安全性を知る指標

銀行のチェック

銀行の決算数字の中で自己資本比率や不良債権比率は重要な指標の一つと言えます。これらの数字を比較してみることが大切です。自己資本比率は、貸出残高や保有する有価証券などの総資産のうち、資本金や引当金などのいわば自前の資金ともいえる内部資金の割合です。海外に営業拠点を持つ金融機関の場合は8%以上でなくてはならず、また、海外に営業拠点を持たない銀行の場合にも、自己資本比率を4%以上とすることが求められており、高ければ高いほど健全と言えます。

不良債権比率は、全ての貸出金・債務保証等の合計額のうち、実際に返済が不能なものや一定期間以上滞っているものがどれくらいあるかを表しており、この比率が低いほど健全とされています。決算数字は半期に一度しかわかりませんが、格付けや株価をチェックすることで今現在の状況をある程度把握することも可能です。

<大手銀行の自己資本比率と不良債権比率>
銀行名 自己資本比率 不良債権比率
みずほ銀行 9.39% 5.33%
東京三菱銀行 10.24% 4.99%
UFJ銀行 10.23% 8.34%
三井住友銀行 10.49% 8.41%

金融庁「主要行の平成15年3月期決算状況(単体)<速報ベース>」より

保険会社のチェック

保険会社の経営体力を知る一つの指標はソルベンシー・マージン比率です。大災害や株価の暴落など通常の予測を超えるリスクが発生したとき、保険会社が対応できる「支払余力」があるかどうかを判断する行政監督上の指標です。このソルベンシーマージン比率が200%を下回ると、金融庁が業務改善命令を出します。

ところが、今まで現実に破綻した会社の直前期末の決算では、200%を超えている会社もあるのです。保険会社にも「更生特例法」が適用できることになりましたから、ソルベンシーマージン比率に関わらず、債務超過に陥った保険会社が自らある日突然法的処理手続きに入る可能性もあります。

これ以外に格付けも参考になります。格付けとは社債等の元利金支払いの確実性などを専門的な第三者である格付機関が評価し、信用度の高いものから順にAAA(トリプルA)、B(シングルB)などの記号で示されます。この記号は格付け会社によって表記の仕方が異なりますので、会社間の格付けを比較する場合は、同じ格付け会社の中で比較してください。また、格付け会社によって評価は違いますので、複数の格付けを確認すると良いでしょう。そしてこの格付けは随時変更されますので、折りに触れてチェックすることも大切です。

<生命保険会社ソルベンシー・マージン比率(%)>
アイエヌジー生命 1317.1 大同生命 860.2
あいおい生命 1995.7 太陽生命 681.5
あおば生命 468.2 チューリッヒ生命 2830.9
アクサ生命 848.5 ティ・アンド・ディ・フィナンシャル生命 1033
アクサグループライフ生命 392.2 東京海上あんしん生命 1917.8
朝日生命 360.4 日動生命 2281.5
アメリカンファミリー生命 1292.1 日本興亜生命 2743.1
エイアイジー・スター生命 1267.6 日本生命 630.6
オリックス生命 813.1 ハートフォード生命 1192.2
カーディフ生命 880.7 ピーシーエー生命 1268.4
共栄火災しんらい生命 2359.6 富国生命 650.5
クレディ・スイス生命 1673.5 富士生命 3158
ジー・イー・エジソン生命 911.7 プルデンシャル生命 1096.8
ジブラルタ生命 1123.8 マスミューチュアル生命 740.3
スカンディア生命 13969.2 マニュライフ生命 770.4
住友生命 497.9 三井生命 410.4
ソニー生命 1354.2 三井住友海上きらめき生命 1549.2
損保ジャパン・ディー・アイ・ワイ生命 1898.2 三井住友海上シティインシュアランス生命 7741.5
損保ジャパンひまわり生命 1206 明治生命 532
第一生命 543.5 安田生命 617.6

五十音順、平成14年度決算より

金融機関も目的にあわせて分散を

以上のような金融機関チェックを行った上で、その金融機関を利用する目的をはっきりさせ、商品・サービスの内容を比較することで自分にあった金融機関選びができるのではないでしょうか。

例えば、子供の教育資金や老後生活資金の準備のためとしては、「こども保険」や「個人年金」が代表的な金融商品ですが、保険商品のみならず預貯金や投資商品で準備することも可能です。保険会社と銀行を併用することにより、リスクの軽減にも繋がります。そして、もちろん必要な保険に必要なだけ入っているかの検証が何よりも大切です。必要な保障をなるべく有利な商品で準備するという見直しをすると、保障ごとに異なる保険会社を選ぶことになるかもしれません。

銀行は何のために利用してますか?お財布代わりにしばしば銀行に行くのであれば近くの銀行を、時間外や土日の出金が多いという人であれば時間外手数料が無料になるサービスを利用できる銀行を、振込みが多い人であればインターネットでの振込みを利用することで手数料が安く抑えられます。また、ネット専業銀行では定期預金金利が高めに設定されているところも多く、当分使わないお金であれば利用価値が高いですね。

このように目的にあった商品・サービス内容を探していくと、自ずと金融機関も分散されていくことが多いでしょう。金融機関の分散は結果としてリスクの軽減にもつながります。

(ご参考)

■預金保険機構 : http://www.dic.go.jp/
■生命保険契約者保護機構 : http://www.seihohogo.jp/
■損害保険契約者保護機構 : http://www.sonpohogo.or.jp/


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ファイナンシャルプランナー
高田晶子