第9回:入院時への備え、どう準備する?


生命保険の中で、死亡保障と並んで保障の柱となるのが、病気やケガで入院した場合の保障。死亡の保障は必要ない人でも、老若男女を問わず備えておきたいのが医療の保障です。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(平成13年度)によれば、自分自身がケガや病気をすることについて「不安感あり」という人が87.8%、その不安の内容で最も多かったのが「長期の入院で医療費がかさむ」(59.1%)でした。この結果からもわかるとおり、多くの人が入院した場合の医療費を心配しているようです。

では、入院した場合はどのくらいの費用がかかるのでしょうか?上記調査によれば、1日あたりの自己負担費用の平均は12,900円。ひゃー!もし1カ月も入院したら、約40万円の出費?

私の入院保障、1日5,000円しか付いてないから、足りないじゃないっ!!
・・・と慌てないで。もしもの入院について経済的にどのように備えたらよいか、考えてみましょう。

入院した場合の自己負担額の内訳

入院した場合にかかる費用には次のようなものがあります。

  1. 病院に支払う医療費
    公的医療保険に加入していれば、医療費の自己負担は現在3割です。つまりある月の医療費が100万円かかったとすると30万円が自己負担額となります。
    ところが、公的医療保険には「高額療養費制度」というものがあり、1カ月あたりの医療費が一定額を超えた場合には、超過分が健康保険から払い戻されます。
    ※70歳未満の場合

    上記の例で計算してみると、実際の自己負担額は79,890円です。20日間の入院とすれば、1日あたり約3,995円の負担金となります。

    一般 72,300円+(医療費-241,000円)×1%
    上位所得者 139,800円+(医療費-466 ,000円)×1%
    上位所得者とは標準報酬月額が56万円以上の者。自営業の場合は、総所得額が670万円を超える世帯が該当する。

  2. 食事療養費(1日780円)
  3. 差額ベッド代
    差額ベッド代は、個室や少人数の部屋に入った場合に大部屋との代金の差額としてかかります。かかるのは、全病床の約13%とされていますが、かかるか、かからないかは、入院してみないとわからない、というのが実際のところです。差額ベッド代がかかった場合の約68%が5,000円以下となっています。(下図参照)
<差額ベッド代(平成11年厚生省調べ)>
1,000円以下 12.1%
1,000円超2,000円以下 17.4%
2,000円超3,000円以下 15.6%
3,000円超4,000円以下 11.2%
4,000円超5,000円以下 11.4%
5,000円超10,000円以下 22.1%
10,000円超 10.2%

この例で見てみると、上記1~2の合計で1日あたり4,775円となります。これに差額ベッド代が仮に5,000円かかったとすると9,775円となり、入院1日あたりどのくらいの自己負担金になるかは、差額ベッド代の金額が大きく影響することがわかります。

入院時の費用負担をどうカバーするか?

厚生労働省の平成11年「患者調査」によると、入院した場合の平均在院日数は、35歳~64歳で38.5日、65歳以上が58.9日となっています。もちろん、病気によってこの日数はかなり違ってくるのですが、60日入院したとして試算してみましょう。

1日あたりの自己負担金を1万円とすれば、60日で60万円となります。
さて、A社の医療保険の保険料を見てみますと、次の通りです。

  • 入院日額5,000円の場合、月払い保険料2,950円
  • 入院日額10,000円の場合、月払い保険料5,900円
    (120日型、1泊2日から保障、保険期間終身、終身払い、35歳男性)

60日間入院した場合の給付金は、日額5,000円の場合が30万円、日額1万円の場合が60万円で、差額は30万円です。毎月の保険料の差額2,950円を貯蓄に回していれば、9年弱で埋まる差額というわけです(もちろん、何回も入院を繰り返せばこの差額は大きくなる可能性もあるのですが)。

収入減をどうカバーするか?

入院した人が働き手の場合は、入院費用ばかりでなく休業による収入減も考えられます。健康保険の加入者(サラリーマン)は、「傷病手当金」という制度があり、4日以上休業した場合に4日目から、1年6カ月を限度に、標準報酬日額の60%相当額が支払われますので、ある程度の収入減はカバーできるでしょう。ところが、自営業者など国民健康保険の加入者にはこのような制度がないため、収入が途絶えた場合の準備がより必要ということになります。

このように入院した場合の負担は意外に大きいもの。それを、全額保険で補おうと考えるか、なるべく貯蓄でカバーし保険で一部を補う、と考えるかの選択が医療保険選びのスタートになりそうです。

医療保険の比較のポイント

最近では、医療保険だけでも複数の保険会社から、いろいろなタイプのものが発売されており、どれを選んだら良いか迷うことも多いでしょう。同じ日額5,000円の保障でも、商品によって保険料がかなり違ってきます。保険料に影響を及ぼしている主なポイントは以下のとおりです。商品を比較する際には、必ずチェックしてください。

  1. 終身型か更新型か
    同じ年齢で加入する時点での保険料を比較すれば、更新型で期間が短いほど保険料は安くなります。ただし、更新型の場合は更新毎に保険料がアップしていきますので、自分が希望する年齢まで払い続けられるかどうかを確認しましょう。

  2. 1入院の給付日数
    医療保険には60日型、120日型、360日型などがありますが、これは1回の入院で入院給付金が給付される日数の上限です。つまり90日入院した場合でも、入っている保険が60日型の場合には60日分しか給付されないということ。保険料は、1入院の給付日数が小さいものほど安くなっています。

  3. 死亡給付金の有無
    死亡給付金がないタイプの物の方が、保険料は安くなります。他の保険との重複に気をつけましょう。

  4. 解約返戻金の有無
    解約返戻金のないものの方が、保険料は安くなります。

当然のことながら、保障内容が充実すればするほど、保険料は高くなります。自分自身は、入院の備えに対して、どこまでを保険に求めるのかをはっきりさせた上で、商品選びをしたいですね。

マネーカウンセリングネットWealth
ファイナンシャルプランナー
高田晶子