10世帯中9世帯が何らかの生命保険に加入しているというのに、「生命保険ってわかりにくい」とよく耳にします。今回は、ご相談に来られる方の声を参考に、多くの人が加入している生命保険について、よくある間違った選び方や、マッチしていない例をご紹介し、みなさんの解決のきっかけができればと思います。
よくある間違い1(定期付き終身保険は老後に役立つ?)
定期付き終身保険に加入する人は、何を目的にしているのでしょうか?おそらく、責任の重い時代は保障を厚く、老後には終身保険部分が使えると思ってサインした方が多いと思います。ところが、実際の保障内容を見てみると…以下のケースがよく見られます。
- 老後まで続く終身保険部分の金額が200万円前後と少なめ。
→ 老後の死亡保障として備えが十分とはいえない → 老後に終身保険部分を年金受取コースに移行しても、原資が少なすぎるので、受取り年金はとても少ない - 契約後数千万円もの死亡保障があっても、そのほとんどが期間10~15年の掛け捨て部分。
→ 終身部分の保険料払込が終わる60歳ごろまでは死亡保障を更新できるが、その後は死亡保障額(終身保険部分)が極端に減ってしまう
冒頭のように4,000万円の死亡保障と思っていても、内訳は定期保険特約3,800万円、終身保険200万円のようなケースが多いようです。保険料も、60歳払込で30歳代の方なら毎月15,000円程度が多く、年間では18万円、更新までの15年間で総支払額は270万円にものぼります。更新後まで保険料を支払い続けてやっと老後を迎えた際に、終身保険部分が200万円しかないとわかって愕然とするお客様を私も多く拝見してきました。
このように多くの定期付き終身保険では、お客様が実際の内容以上に終身保険部分へ期待しすぎている点、死亡保障額がある時期を境にガクンと減少し、必要な保障内容とマッチしていないという点が問題視されています。実際には、私たちに必要な保障は、以下の図のように、子供の成長やマイホーム購入などの家庭の変化に応じて、変動してくるはずです。本来の目的に合っているのかどうか、今一度、ご自身の生命保険契約をチェックされてはいかがでしょうか?
よくある間違い2(学資保険の目的は?)
学資保険は、従来から子供の進学資金を貯めるための商品としてよく使われてきましたよね。子供の成長に合わせて祝金や満期金が受け取れるので、目的別貯蓄に合っていると思われがちです。ところが、最近の学資保険の保険料と受取保険金について、代表的なかんぽのHPからチェックしてみると???
学資保険18歳満期コース | 育英年金付き学資保険 | |
毎月の保険料 | 14,340円 | 15,300円 |
払込合計 | 309万7,440円 | 330万4,800円 |
払込合計(元本分)に対する受取額の割合 | 96.8% | 90.8% |
子供0歳で契約者に万一の育英年金合計 | 0円 (保険料免除は最大308万円) |
648万円 (保険料免除は最大308万円) |
なんと、上記の例では、特約もなく、子供の大学進学時(18歳)にのみ受け取る一番シンプルな例でさえ、払込合計(元本に相当)を上回らない状況です。払込方法を工夫しても、元本トントンがせいぜいというところでしょう。これには、次のように通常の貯蓄とは学資保険の性格が違うという点が隠れています。
- 満期時のみでなく、子供が18歳までの死亡保障も満期金と同額ついている点(かんぽ以外では、子供の死亡保障が払込保険料相当分というところもあります)。
- 契約者に万一の際には、以後の保険料負担が免除されるため、最大で加入2カ月目から308万円もの保険料分が保障されていることになる点。
- 更に、育英年金付きでは、契約者に万一の際に満期まで育英年金が約束されているので、その分契約者の死亡保障がセットになっている点。
このように、貯蓄と思っていた学資保険に貯蓄性がなかったことを知って「あらら」と思う方が非常に多くいます。一方、保険嫌いのパパを説得してパパの死亡保障もというように保障目的を考えるならば、パパの死亡保障を別建てで契約するよりも、育英年金付きタイプのほうが楽だという使い方もあります。
契約後にショックを受けないためには、まず、私たちは目的が貯蓄なのか保障なのかを考えて、保障目的ならば必要保障額に常にマッチするように、貯蓄目的なら必ず事前に支払う保険料合計と受取額を計算してみる癖をつけるようにしましょう。
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))
吹田朝子