桜の花も膨らんで、うららかな日々が続いています。春は進級、進学、卒業、就職など、新生活スタートの季節。新鮮な気持ちになって、元気がみなぎる季節でもありますね。そんな時だからこそ、「お金」のことを改めて考えてみませんか?
なぜ今、「お金」を学ばなければいけないの?
私事ですが、ファイナンシャル・プランナーとして個人相談業務に携わるようになって、いつの間にか9年目となりました。さまざまな家計を拝見する中でとても強く感じているのが、ここ最近、厳しい家計が増えていることです。もちろん、いわゆる「持てる人」も増えていて、富裕層の方のご相談を受けることもありますが、印象としては、厳しい家計の方のご相談が増えているように感じます。
私たちが生きている今の日本は、親の世代が今の私たちに近い年齢だった20年ほど前と比べると、とてもドラスティックに変わりました。たとえば、かつてはこんな感じでした――。
- 会社は終身雇用制で、年功序列で給与も上がっていった。退職金もしっかり出た。
- 大手企業が倒産することなど考えられず、「リストラ」などという言葉もなかった。
- 厚生年金は60歳からもらえ、ほぼ老後を暮らすには十分だった。
- 保険は貯蓄を兼ねたタイプが主流だった。
- 一般の人のお金の運用の中心は預貯金(間接投資が主流だった)。
- 地価が上がったので家を持つことが資産形成になった。
- 株が右肩上がりのトレンドだった。
- 介護は家族の手でなされ、お金で介護サービスを「買う」発想はなかった。
- 消費税はなかった。
1つひとつ読んでも、ああなんていい時代だったんだろうとうらやましくなりますよね。今はこれが、以下のように大きく変わってしまったわけです。
- 終身雇用・年功序列が崩れ、実力主義へ。退職金がない会社も増えてきた。
- 大手企業であっても倒産する。人員整理を意味する「リストラ」も、他人事ではなくなった。
- 厚生年金は段階的に65歳からの給付になり、その給付水準も下げられる可能性大(今国会で審議中)。
- 保険は予定利率(積立て部分の運用利率)の低下で、「保険で貯蓄」はナンセンスに。必要な保障を保険料を抑えて加入するのが主流に。
- 一般の人も、「自己責任」でリスクを取るのが当たり前に。ペイオフ制度が導入された。
- 地価が下がるので家を持つことは資産形成にならない。
- バブル崩壊以降、株価は低迷。
- 介護の社会化・コスト化が進み、お金で介護サービスを「買う」時代になった。
- 消費税が取られるようになった。
そんな劇的な変化によって1億総中流だった時代は終わりを遂げ、貧富の差が広がりつつあるのが現状といえるでしょう。上の項目を見ると、今の生活が非常に不安定でリスクフルなものになっていて、運用にも「自己責任」が問われるようになっています。つまり、確実な未来が描きにくい時代なのです。だからこそ、広く「お金」、つまり日常生活の金融・経済について学び、上手に家計を切り盛りしていくことが大事なのです。
何も考えずに、親の世代の消費スタイルや運用スタイルをマネていては、行き詰る可能性があります。今の時代、お金について知らないと大変なことになってしまうのです。
「お金」に強くなるには?
では、「お金」すなわち日常生活の金融・経済について強くなるにはどうしたらいいでしょうか。私は何より、身の周りの「お金」について関心を持ち、知ろうとすることが大事ではないかと思います。わからないものをわからないまま放置せず、積極的に調べてみようと努力する姿勢があれば、自ずと「お金」に強くなれるはずです。「数字は苦手で・・・」「金融や経済ってわからない」などと苦手意識を持っている人は、壁をとり払うところから始めましょう。
新聞を読むようにして、関心を持ったことを話題にして誰かと話してみるのもいいでしょう。話題になっている公的年金や、あるいは理解までに時間がかかる保険など、ちょっと関心のあるものであまり難しくない本を1冊読んでみるのもオススメです。よくわからなかった言葉があればネットでキーワード検索をして、出てきた記事を読むのもいいでしょう。わかり始めると、とても楽しくなるはずです。
また、実際に行動する中で学べるものもあります。それが、家計に関する部分です。たとえば、今後の支出を伴うライフイベントを書き出してライフプラン表を作成したり、貯蓄プランを立てて、金融商品を選んで行う積立はすぐにでも始めましょう。
あるいは投資についても、小口で投資信託(株価指数に連動するETFがオススメ!)を買うなどして、ハラハラドキドキとともに株価の動きや経済の動きを追いかけてみたり、外貨預金を買って為替の動きを体験してみてもいいでしょう。ただし、投資にはリスクが伴うので、運用に回せる資金(予備費以外で、5年以上使わない資金の1~3割程度)の範囲でトライしましょう。
結局は、「知ろう」「学ぼう」「やってみよう」とする姿勢こそが大事なのだと、私は思います。
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田真弓