金利上昇を控え、今のうちにマイホームを取得しようとする人が多いが…
最近は、景気回復の兆しがみえて、長期金利も上昇していることから、更に住宅購入ブームになっているように思います。「頭金ゼロでも」とか「家賃よりも安い住宅ローン」といったキャッチコピーのチラシもよく見かけますよね。
確かに、不動産業者の話では、頭金がなくても物件価格の全額分の(場合によっては諸費用分も上乗せして)住宅ローンを組むことが可能です。ただし、その場合は、住宅金融公庫の融資や公庫の新型ローンや住宅ローン会社のグッドローンなどの「長期間固定金利タイプ」の商品を利用することは難しく、通常は民間の銀行の「変動金利型」か、当初一定期間は固定金利で、その後金利見直しがある「固定金利選択型」を利用することになります。
しかも、今各銀行は、少しでも顧客を獲得しようと金利競争をしており、キャンペーンなどで「固定金利選択型」の金利を低く設定しています。なので、購入当初は、住宅ローンの金利が低く、返済額も今までの家賃より少ないといったことは実際多くあるようです。
金利が途中で見直される住宅ローンは、金利上昇時にどうなる?!
ところが、一旦組んだ住宅ローンは、今後30年前後もの長い期間にわたり返済していく人がほとんどです。その間、世の中の金利が上昇し、住宅ローンの金利も見直しによって上昇することは、十分考えられますよね。
たとえば、キャンペーン金利などで3年固定1%のローンを活用し、3,000万円を期間35年で借入れた場合、その後の金利上昇の影響はどうなるのでしょうか?
現在の住宅ローンローン返済 | 3年後に適用金利が2%アップ | 3年後に適用金利が3%アップ | |
---|---|---|---|
金利 | 1% | 3% | 4% |
毎月返済額 | 8万4,685円 | 11万2,787円 (33.2%アップ) |
12万8,551円 (51.8%アップ) |
35年間の総返済額 | 金利が不変なら 3,557万円 |
4,636万円 | 5,241万円 |
備考 | 当初借入3,000万円、35年返済のケース、3年後の残高は2,782万円 |
実は3年固定1%といった金利は、既に現在の金利水準から意図的に低く設定されているものです。ですから、固定金利期間が終了した後は、金利が上昇している可能性が高いといえますよね。
返済期間が何十年と長い場合は、最初の固定金利期間が過ぎてもローン残高があまり減っていないため、仮に金利が3%になると、先の表のように、毎月返済額は当初の返済額より3割以上アップし、また金利が4%になると、毎月返済額は当初の返済額より5割以上アップすることになるのです。
ちなみに過去20年間の住宅ローンの平均金利は、約4.5%なので、返済期間中にこのように家計を圧迫する可能性も十分考えられます。
頭金ゼロで買うと、金利上昇時に打つ手がない?!
ここで注意したいのは、頭金ゼロで買おうとする人は、金利上昇時に住宅ローンの返済負担を軽くするために、どんな方法が取れるかという点です。
より低い金利が長期間適用される住宅ローンへ借り換えることができるか?
通常、住宅ローンの借り換えをする際には、希望借入額が住宅の担保価値よりも小さいことが望ましいといえます。ところが、頭金なしで住宅ローンを組んでしまった場合は、ローン残高があまり減っていないため、希望借入額が住宅の担保価値よりも膨れ、残念ながら期待する借り換えがうまくできないことがよくあります。やはり、最初に頭金を準備しておき、住宅ローンの借り入れは物件価格の8割までにしておけば、こうした借り換え対策も比較的とりやすくなるのです。
借り換えができないなら、貯めていた貯蓄で、一部繰上返済ができるか?
家計に余裕がある人なら、貯蓄から一部繰上返済をすることで、借入元金をその分減らし、金利上昇による負担増を抑えることができます。ところが、頭金ゼロで借りてしまった人は、もともと貯蓄がない状態だったので、住宅ローンを返済しながら、繰上返済できる資金を十分に確保できているかどうか、非常に微妙なところでしょう。
頭金準備は、将来のリスクヘッジのために重要!
将来の金利動向が読めない今は、やはり、貯蓄を計画的に進めるという癖を日ごろからつけておき、マイホーム購入についても、頭金を最低2割は確保して、住宅ローンを組むことが大切です。というのも、物件価格の8割以内の借入額なら、比較的長期間、安定的に返済できる「長期固定金利タイプ」の住宅ローンを利用できたり、途中でより条件の良い住宅ローンへ借り換えることができたりと、金利変動リスクの影響を少しでも和らげることができるからです。
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))
吹田朝子