自分や家族が亡くなったとき、あるいは病気やケガで入院した時の「経済的リスクをカバーするために加入するのが生命保険」ですが、場合によっては家計の負担になっていると感じることもあるのでは? 今回は、支払っている「保険料」から生命保険を考えてみましょう。
データで見る生命保険の「保険料」
生命保険と一言で言っても、死亡保険や医療保険、がん保険、養老保険、個人年金保険、こども保険(学資保険)と、さまざまなものがあります。あなたはどんな保険にどれくらい入っていますか?
まずは、データを見てみましょう。生命保険文化センターが発表した「平成15年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、全生保(民保、簡保、JA)で89.6%の世帯が何らかの保険に加入しています。世帯加入件数は4.3件で、世帯年間払込保険料は年間53.1万円。1カ月平均で4.4万円の保険料を支払っていることになります。
もちろんこの数字は、あくまでも平均。保険料がもっと多い人もいれば少ない人もいるのは、当然のことです。
どんな人が保険料が高くなるか?
保険料が家計に占める割合を考える前に、まずは「どんな人が保険料が高くなるのか」を見てみましょう。
保険はリスクに対して適切に加入するのが正しい入り方ですので、リスクが高い人はどうしても保険料は高くなり、そうでない人は低くなります。生命保険でいう「リスクが高い人」とは、ライフサイクルで見ると結婚して子供が生まれたばかりの人です。しかも、子供の数が多い人ほど保障は必要。死亡保障もそうですが、入院・手術時に備える医療保険も同様に、子供がいる世帯の方が、しっかり入っておく必要があります。
保険は貯蓄で補いきれないリスクをカバーするものでもあり、つまりは貯蓄が多い人は保障は小さくて済むことになります。また、万一の時の福利厚生などのサポートが手厚い人ほど、やはり保障は小さくてすみます。ですから逆に、貯蓄が少ない人や、自営業・自由業で亡くなった時や病気・ケガで仕事を休んだ時の福利厚生が薄い人ほど、保障が必要ということになります。
中には、保障はほどほどなのに保険料がやけに高い人がいるのですが、それは、いわゆる「貯蓄型」と呼ばれる保険にたくさん入っている人です。貯蓄型の保険とは、個人年金保険やこども保険(学資保険)、養老保険、終身保険といったもので、満期時にお金が戻ったり、解約すると戻る解約返戻金が大きめのものを指します。こうした貯蓄型の保険にたくさん入っている人ほど、また、同じ保障額をカバーするにも、掛け捨ての保険でなく、こうした貯蓄型の保険を多用してカバーしている人ほど、どうしても保険料はかさみます。
月収に占める「保険料」の割合は
では、ようやく本題というか、月収に占める保険料の割合について考えてみます。ただし、ここでいう保険料には、貯蓄代わりに入っている保険(個人年金保険やこども保険、養老保険の一部)は含まない前提です。貯蓄のための保険に入っている人は、その分を抜いた、保障分だけの保険料を算出してください。
普段のFP相談や雑誌の保険相談でも、「月収に占める保険料の割合はどれくらいが妥当でしょうか」と聞かれることがままあります。実は、この質問には正しい答えがあるわけではありません。家族構成や世帯年収、職業、貯蓄額、入っている保険のタイプなどによっても違ってくるからです。
よく言っているのは、「生命保険は手取り月収の1割程度」ですが、これは本来、保険料の目安を言うための数字ではありません。むしろ、家計の中で「保険料をそれくらいに抑えないと貯蓄ができなくなってしまうライン」を指しているのに過ぎません。
<家計の支出配分例>
~保険料は1割以内を目安に~
とはいえ、「手取り月収の原則1割以内」を目指すことは、家計のバランスを保つ意味で、まちがいではありません。ただし、どうしても必要な保障なら、たとえ15%となってもカバーする必要はあります。
世帯の所得が低い場合など、リスクをカバーするだけの保障額をつけると貯蓄ができなくなってしまう例もあります。その場合は、終身保険より定期保険、定期保険でも逓減定期保険や収入保障保険、しかも健康体型や非喫煙型を利用するなど、できるだけコストを抑えて入れる保険を選択しましょう。
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田真弓