長生きの時代、老後の生活費とともに、介護状態になった場合の経済的な出費も気になりますね。公的介護保険はありますが、そのサービスは、要介護認定を受け、その認定度ごとに介護サービスを受けられる限度額が設定されています。そして、その範囲内ならば、自己負担は1割ですが、その限度を超えて利用する場合は、全額自己負担になります。
よって、公的介護保険だけではやはり経済的に不安で、いつ必要になるかわからないという点から民間の保険で準備する方法も当然考えられます。
民間の保険会社の介護保険商品
介護に関して給付がある保険商品は、生命保険会社と損害保険会社の両方で取扱っており、「機能障害」または「痴呆」による保険会社所定の要介護状態が一定期間続いた場合に給付が受けられるというものです。
従来は、生保の介護保険は、契約した一時金や年金が受け取れるタイプ、損保の「介護費用保険」は、一定金額+実費部分(保険金額を上限とする)が給付されるタイプが多かったのですが、最近は、生保・損保とも所定の要介護状態が続いたら、契約時に設定した「一時金」と「年金」が受け取れるという商品が増えています。
なお、介護保障を得られる商品には、単独の介護保険と、主契約にオプションとして介護特約などをつける方法、そして終身保険や個人年金から介護保障へ移行する方法の3つがあります。
単独商品や特約で付ける場合は、その分保険料負担が増えますが、終身保険などから移行する場合は、保険料負担はありません。また、保険料負担のない特約として、ソニー生命の「ナーシングニーズ特約」は、介護状態になった時点で介護のために保険を使うか死亡保障として残すかの選択ができます。
以下に、民間の介護保険商品を選ぶ際の注意点を整理してみましょう。
注意点1:要介護状態の認定基準が様々
「保険会社所定の要介護状態」というのは、生命保険会社も損害保険会社も、どのような状態になったら給付金を支払うのかという基準を独自に設定しています。ただ、わかりにくいという意見も多く、最近では公的介護保険の認定と連動させるタイプも登場しています。
中には、「公的介護保険要介護度2~5程度」などという表示をしているところもあり、加入前には必ずチェックすることが必要です。
注意点2:給付までの待機期間
実は、保険会社所定の要介護状態になっても、通常、すぐに給付金が受け取れるわけではなく、何日かの待機期間があります(ソニー生命のナーシング特約は除く)。
介護保険が登場したばかりの頃は、180日以上所定の要介護状態が続いてやっと給付金が受け取れるタイプが多かったのですが、最近は、90日以上、30日以上なども登場してきました。一般に待機期間が短いと保険料はその分高くなる傾向がありますが、待機期間が長いのも辛いので、短めのものを選んだほうが安心といえます。
注意点3:保障はいつまで続くか
単体の介護保険では、介護保障の期間が終身というものが多いですが、特約では、10年更新というタイプもあります。当然10年更新のほうが最初の保険料は安くなりますが、長生きの時代、介護についても終身保障されるほうが安心だと思います。
このように介護保険商品や介護関係の特約は、保障内容のみでなく、給付の基準などでもいろいろな違いがあるので、ご参考までに以下に主なものをまとめてみました。
< 主な介護保険商品や特約の比較 >
商品名 | AFLAC 「一生やさしい介護保険」 |
AIGエジソン生命 「AIGエジソンの介護保険」 |
ニッセイ 「介護保障特約」 「介護保障定期保険特約」 |
ソニー生命 「ナーシングニーズ特約」 |
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保障期間 | 終身 | 終身 | 10年更新、 終身など |
終身 |
保障内容 | 介護一時金 介護年金 (無制限) |
介護一時金 介護年金 (10年間、5年間、無制限など) 健康祝金支払い特則など |
介護年金 (終身、有期年金、確定年金など)。 介護一時金 (10年)。 |
死亡保険金の一部または全額 (3,000万円以内) |
要介護の 基準 |
公的介護保険の要介護1~5程度(一時金)、 2~5程度(年金)など。 |
ADL (歩行、食物の摂取、衣服の着脱、排泄、入浴、洗身)の全面介助が必要な状態が1つまたは2つ以上。 |
公的介護保険制度の要介護3以上など。 | 65歳以上で公的介護保険要介護度4~5 |
待機期間 | 180日 | 90日 | 180日 | なし |
最後に…介護への備えは、公的保険と貯蓄をベースにバランスを考えて
実際に、介護に関する出費を全て保険で準備しようとすると、かなりの保険料負担になると思います。保険で準備しても介護状態にならかった場合には返戻金が少ない、全くないという保険もありますし、健康祝い金特則をつけるとそれだけ保険料負担はアップしてしまいます。
よって、現時点では、まず公的保険ではカバーできない部分に貯蓄をベースに準備し、それでも不安な部分に保険を検討されてはいかがでしょうか?
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
吹田 朝子