一口に将来の老後資金の準備といっても、その方法には、職業や勤務先などによって大きな違いがあります。また、私的に選択できる準備手段も、一人一人の価値観などで変わってくるでしょう。
老後資金だから、どうしても年金商品でないとダメということではありません。今回は、あなたが既に利用している老後資金準備法と、今後あなたが選択できる老後資金準備法について整理してみたいと思います。
老後資金準備で既に利用している制度(国や企業の制度など)
まず、日本国民はみな国民年金に加入することになっているので、皆さんは以下のいずれかの年金制度に該当しているはずです。
▼会社員の方の場合
会社員の方であれば、厚生年金保険料を負担することで、基礎年金と厚生年金を利用できます。更に一部の企業では公的年金に上乗せする福利厚生制度として、厚生年金基金や確定拠出年金(企業型)などの年金制度や、また企業独自の退職金制度も利用できる人が多いので、一度ご自身の会社の制度をチェックしてみましょう。
▼公務員の方の場合
公務員の方であれば、共済年金保険料を負担することで、基礎年金と共済年金を利用できます。更に退職金や、一部の職場では職域年金もプラスして利用しており、現在のところ、公務員の方は公的年金制度が比較的充実しています。
▼自営業者の方の場合
自営業者の方であれば、国民年金保険料を負担して、基礎年金部分のみの利用になるので、会社員や公務員の方に比べて、公的年金の額は少ないといえます。また、会社員や公務員の方のような退職金もありません。
▼会社員や公務員に扶養されている配偶者の方の場合
会社員や公務員に扶養されている配偶者の方は、国民年金保険料は負担していませんが、基礎年金部分は受け取れます。ただし、それ以外の確定拠出年金などの制度は利用することはできません。
このように公的年金制度は、大きく4つの層に分類されて、利用できる制度などが決まっています。しかし、今会社員の方でも、終身雇用の約束はなく、転職や独立などで職業を変わる人も増えてきています。老後を控えて慌てないためにも、ご自分の利用できる老後資金準備法を確認し、これから自分でできる選択肢(手段)もしっかりと押さえておくことが大切でしょう。
これから老後資金準備で利用できる手段
前述した公的年金や企業年金などで、どの程度老後資金が足りるかは、あなたの価値観や老後生活の仕方しだいといえます。ですから、どこで誰とどのように生活するのか、まずイメージを持ち、今から準備できる手段に何があるかを確認してみましょう。
▼会社員の方の場合
企業年金のない会社員の方は、手続きをすれば確定拠出年金(個人型)を利用できます。この確定拠出年金は、運用手段を自ら選び、受取年金額はその運用しだいとなる年金ですが、一定の所得控除(年間拠出額21.6万円まで)があります。また、誰でもできる預貯金のほか、個人年金保険(定額・変額含む)、投資信託や株式・債券などによる運用によって、将来の老後資金準備も可能です。
▼公務員の方の場合
公務員の方は、確定拠出年金を利用できないので、自分で準備する手段としては、誰でも利用できる預貯金、個人年金保険(定額・変額含む)、投資信託や株式・債券などによる運用があげられます。
▼自営業者の方の場合
自営業者の方は、公的年金が少なく、さらに退職金もないので、特に自分で意識して準備することが必要です。申し込めば、事業主の退職金のように使える制度として、小規模企業共済があり、掛け金全額が所得控除の適用を受けられるメリットがあります。また、手続きをすれば、国民年金基金や確定拠出年金(個人型)を利用できますが、所得控除が適用されるのは、国民年金基金の掛金とあわせて年間81.6万円までです。その他、預貯金による貯蓄や、個人年金保険(定額・変額含む)、投資信託や株式・債券などによる運用ももちろん選択肢に入ってきます。
▼会社員や公務員に扶養されている配偶者の方の場合
会社員や公務員に扶養されている配偶者の方は、確定拠出年金なども利用できないので、完全に自分で一般の金融商品(預貯金・個人年金保険・投資商品)から選んで老後資金準備をしていく必要があります。(夫婦でのマネープランが基本になりますが)
このように任意に選んで利用できる商品にも、制度的に一定の条件が設定されているものもあるので、自分が何を利用できるのかをよく把握しておくことが、効率的な老後資金準備につながります。そして、老後用に商品化された年金商品だけでなく、ご自身で取れるリスクを考えて、株式や投資信託などによる長期投資も含めて、幅広い選択肢の中から老後資金を準備する方法もあるということを知っておいて欲しいと思います。
<対象別の老後資金準備法の全体イメージ>
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
吹田朝子