日銀の金融政策により、3月に量的緩和政策が解除されたのに続き、7月にはゼロ金利政策が解除されました。長い間、集中治療室に入っていた日本経済が、ようやく一般病棟に移り、リハビリを始めて社会復帰を目指している感があります。
金利感覚、さびついていませんか?
「ゼロ金利」が解除されたのは、政策金利といわれる「無担保コール翌日物金利」で、誘導目標が0%から0.25%にアップ。これによって、住宅ローンの変動金利や、銀行の預金金利などが上がりました。
ただ、ゼロ金利が解除されたとはいえ、日銀は急激に金利(短期金利)を上げるわけではなく、徐々にコントロールして上げていくようです。実際のところ、ゼロ金利を解除して政策金利を0.25%に上げて以降、まだ再利上げの様子はありません。
しかし、5年にわたって続いた「ゼロ金利時代」のおかげで、すっかり金利が上がらないことに慣れ、金利を意識した資産運用など忘れている人も多いのでは? 今回は、金利感覚をさびつかせてしまった人のために、ゼロ金利解除後の資産運用のポイントについて整理してみます。
ゼロ金利政策解除後の預貯金は変動で!
まずは預貯金について。時期は不明ながら、ちょっとづつ追加利上げが行われることを考えると、今後は3年や5年満期などの定期預金よりも、1年満期や半年ごとに金利が見直される変動金利型の定期預金がいいでしょう。
ゼロ金利解除前は、1年定期が0.03%、普通預金が0.0001%だったものが、2006年8月24日現在は、銀行にもよりますが、1年定期が0.24%、普通預金が0.10%などとなっています。
場合によっては、0.03%の1年定期に預けている人は、同じ1年定期に預け替えをするか、あるいは、解約をして普通預金に預けた方が、金利がつくことになります。一般的な定期預金であれば、解約しても元本が割れることはないので、これはすぐに実行しましょう。まずは通帳をチェックして、預けている定期預金の金利を確認してみましょう。
お勧めの安全運用は個人向け国債
安全資産の運用法としてお勧めできるのは、個人向け国債の変動型です。1万円から預けられ、利率は銀行金利より高めで、金利は半年ごとに見直されます。1年経過後は、解約コストがかかるものの、中途解約も可能。満期まで持てば不要なコストはかかりませんので、できれば10年置いてもいい資金で買いたいものです。
ただし、一部の銀行・証券会社では口座管理料がかかるところもあり、金額によってはそのコストで金利がすっ飛んでしまうので、口座管理料がかからない金融機関で始めた方がいいでしょう。
金利上昇で為替は円高基調に?
中には、外貨預金や外貨建てMMFなど、為替投資が好きな方もいるでしょう。米ドルとの関係で言うなら、米国の金融政策を決める米連邦準備理事会(FRB)がこの7月に17ヶ月連続で行ってきた利上げを休止したところで、今後日本が利上げを行う予定であることから、日米金利差が縮小傾向に向かい、円高・米ドル安の傾向が高まりそうです。
為替は他の要因も複雑にかかわるので一概には言えませんが、金利差で言うなら、その傾向が続く可能性があります。
そのため、「外貨で使う」ことを想定しないで行う、為替投資としての外貨預金や外貨建てMMFへの投資は、今後しばらくは難しくなるかもしれません。
金利上昇に弱い金融商品に注意!
ところで、金利上昇に弱い金融商品もあり、そうした金融商品を利用している人は、資産のウエイトを変えるなど見直しが必要かもしれません。
その代表がJ-REITと呼ばれる「不動産投信」です。配当利回りの高さで注目されてきた商品ですが、金利が上がると借入れコストが上昇するほか、他の安全資産との差が小さくなることから、価格が下がるリスクがあります。また、配当利回り狙いの「優先出資証券」と呼ばれる金融商品も同様のことが言えます。
貯蓄型保険への影響は来年以降・・・
最後に「貯蓄型保険」はどうでしょう? 貯蓄型保険とは、生命保険で言えば、個人年金保険や養老保険、学資保険、解約返戻金のある終身保険、損害保険で言えば、積立型傷害保険、積立年金保険などが挙げられます。
ゼロ金利解除や、その前提となった景気回復により、保険会社にとっても運用環境がよくなっているのは事実です。しかし、保険会社は結構慎重で、予定利率を上げたのは一部の一時払個人年金保険や積立傷害保険のみ。他の貯蓄型保険の予定利率がアップするのは、来年以降になりそうです。
金利上昇期に貯蓄型保険に入る際には、予定利率が上がるのを待つか、少なくとも配当があるタイプを利用することが大事です。
金利上昇の恩恵を 受ける商品 (安全運用型) |
預貯金 | 普通預金、貯蓄預金、期間の短い定期預金、変動金利型の定期預金・・・ |
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投資信託 | MMF、MRF | |
債券 | 変動型の個人向け国債 | |
保険 | 貯蓄型保険(予定利率に注意) | |
金利上昇に影響を 受ける商品 |
為替商品 | 外貨預金、外貨建てMMF(金利差に注意) |
株式取引 | 信用取引(資金コストの上昇に注意) | |
金利上昇に弱い商品 | 投資商品 | 不動産投信、優先出資証券 |
以上、金利上昇期の資産運用についてポイントを見てきましたが、今後、ほぼ確実に金利は上がっていきます。そのため、金利上昇期の運用に苦手意識を持たず、金利感覚のアンテナを張っていくことが大事ですね。
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田真弓