第64回:生命保険の更新が近づいた、何から考え、どう対処する?


加入している生命保険の更新時期が近づくと、さてどうしたものかと悩むことがあります。このまま更新すると保険料がアップしてしまうし、これまでの保障内容でこのまま更新してしまって本当にいいのでしょうか?今回は、生命保険の更新の際の見直しについて、具体的な手順とライフステージごとのポイントを見ていきましょう。

生命保険の更新が近づいた!さあどうする?

定期保険や定期付終身保険、定期型の医療保険などは、契約や特約が満期になると一定年齢まで自動更新することができる商品です。こうしたタイプを「更新型」といいますが、更新型を同じ保障額のまま更新をすると、その時点で保険料が再計算され、必ず保険料はアップします。

では、更新が近づいた時、何も考えずに更新をしていいものでしょうか?
この疑問は、「生命保険は入ったままでいいの?」という疑問に等しいといえるでしょう。答えはもちろん「NO」ですね。生命保険は入っておしまいではなく、ライフステージの変化や時間の経過でメンテナンスを行う必要があります。実は、更新の時期は、生命保険の見直しを行う一つの良いタイミングと見ることもできます。

生命保険の見直しの手順は?

生命保険を更新するかどうかに限らず、見直しの手順はほぼ同様と考えられます。具体的には、次のように整理することができます。

<1>保障額は合っているか?

保険の見直しをするには、まず、「保険で備える保障額(死亡保障・医療保障)はいくら必要か?」を見極めることが大事です。加入している保険が、自分(家族)に必要な保障額とかけ離れていないかをしっかりとチェックしましょう。保障がオーバーしているときは減額する方法を検討し、足りないときは保障を増やす方法を検討しましょう。また、今の保険をベースに考えるか、あるいは新規に入り直すのかも含めてよく検討しましょう。

<2>保険種類や保険料はどうか?

死亡保険でいえば、終身保険や養老保険よりも定期保険の方が保険料は安く、定期保険でも収入保障保険や逓減定期の方が保険料は安くなります。また、同じ保険種類なら健康体割引や非喫煙割引のあるタイプの方が保険料は安くなります。このことから、更新の際には、保障額を下げずに保険料アップを抑えたい場合は、同じ保障額をより安くカバーできる保険種類に乗り換えるといいでしょう。

<3>特約を見極める?

各種特約については、本当に必要なものかどうかをしっかりと見極めましょう。保険はできるだけシンプルに加入することも結構大事です。

<4>見直し実行!

<1>~<3>の結果に基づき、見直しを実行しましょう。なお、見直しが特に不要な時は、そのまま更新を行います。

生命保険のライフステージごとの見直しポイントは?

では、ここからは、ライフステージごとに更新時の見直しポイントを見ていきましょう。

(1)シングル男女の方は・・・

まず、死亡保障については、下記の保障額の目安を参考にして、大き過ぎる保険に加入していた場合は減額をして更新するといいでしょう。ただし、親に残したい、あるいは死亡時に借り入れが残るなどの場合は、死亡保障を多めに設定するのも一つの手です。

次に、医療保障については、それまで加入していた保険が定期型の医療保険や、他の契約の医療特約の場合、更新を機に終身型の医療保険に切り替えるのも一つの方法といえます。

〔保障額の目安・・・執筆者(豊田眞弓)作成〕

ステージ 性別 職業 死亡保障 入院保障(日額)
シングル 男女 会社員 300万~500万円 5,000円程度
自営業 300万~1000万円 10,000円程度

(2)DINKS男女の方は・・・

まず、死亡保障については、下記の保障額の目安を参考にして大き過ぎる保険に加入していた場合は減額を、不足している場合は増やしましょう。「増やす」方法としては、不足分だけ新規の保険に加入する方法と、1本で保障をカバーできる保険に加入して元の保険を解約する方法もあります。また、いずれ子供を予定していて、妻が仕事を辞める予定だという人は、保険料がかさむ終身保険などに高額に入るのは避けた方がいいでしょう。

次に、医療保障については、それまで加入していた保険が定期型の医療保険や他の保険の特約になっている場合は、更新を機に終身型の医療保険に切り替えるといいでしょう。特に、女性は妊娠が分かると医療保険の見直しがしにくくなる(加入できても子宮部位不担保の条件付きになりやすい)ので、ここでしっかりとした医療保険に加入しておくと将来的にも安心です。

〔保障額の目安・・・執筆者(豊田眞弓)作成〕

ステージ 性別 職業 死亡保障 入院保障(日額)
DINKS 男女 会社員 1000万~2000万円 5,000円程度
自営業 1500万~2500万円 10,000円程度

(3)ファミリー世帯の男性の方は・・・

まず、死亡保障については、子供のいる世帯の大黒柱の方は、職業や妻の状況、持ち家かどうかにもよりますが、高額の死亡保障が必要になります。更新時点でこれまで加入していた保険の保障額が不足している場合は、保障を増額しての更新を考えるか、不足分だけ新規に加入するか、あるいは必要な保障に合わせて新規に加入するか、のいずれかを選ぶといいでしょう。一方で、保障額がオーバーしている場合は、減額して更新をします。

ただし、保障額が足りない場合もオーバーしている場合も、保険種類の見直しや、健康体割引や非喫煙割引のあるタイプを選ぶなどして、もっと安くカバーできる保険がある場合は乗り換えをするとさらにいいでしょう。

次に、このライフステージの方は、子供が巣立つまでの期間だけ医療保障を厚めにしておくと安心です。例えば、日額5000円を終身型の医療保険でカバーして、それに日額5000円の定期型の医療保険を組み合わせて加入するのも一つの方法です。また、子供の教育に目途がついたら、終身型の医療保障だけを残せば、合理的に保障がカバーできます。

〔保障額の目安・・・執筆者(豊田眞弓)作成〕

※子供は1人の場合。1人増えるごとに年齢・進路に応じて★500万~1500万円プラス

ステージ 性別 職業 妻は? 住まい 死亡保障※ 入院保障(日額)
子有り
家庭
男性 会社員 専業主婦・パート 持ち家 2000万~3000万円★ 5,000~1万円
賃貸 3000万~4000万円★
フルタイム勤務 持ち家 1500万~2500万円★
賃貸 2500万~3500万円★
自営業 専業主婦・パート 持ち家 3000万~4000万円★ 1万~1万5000円
賃貸 4000万~5000万円★
フルタイム勤務 持ち家 2000万~3000万円★
賃貸 3000万~4000万円★

(4)ファミリー世帯の女性の方は・・・

まず、死亡保障については、子供のいる世帯のママの保険は後手に回りがちで、死亡保障が不足しているか、一切入っていないという人も結構います。子供が幼い時期(10歳くらいまで)には、専業主婦であっても万一の時のリスクに備える必要があり、できるだけ死亡保障も加入しましょう。具体的には、子供が10歳くらいになるまで、10年満期の定期保険などでカバーするといいでしょう。

次に、医療保障については、夫の保険の特約になっている例も多いですが、老後のことも考えて(女性の方が長寿)、できれば単独の医療保険に加入しておきたいものです。さらに可能であれば、医療保険は終身型に加入しておくと将来的にも安心でしょう。

〔保障額の目安・・・執筆者(豊田眞弓)作成〕

※子供は1人の場合。1人増えるごとに年齢・進路に応じて★500万円プラス

ステージ 性別 職業 死亡保障(子供が10歳くらいまで) 入院保障(日額)
子有り
家庭
女性 扶養でないが従たる働き手 1000万~2000万円★ 5,000円
専業主婦・パート 500万~1000万円★

2008年8月
マネーカウンセリングネットWealth
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田眞弓

執筆:豊田眞弓(とよだ まゆみ)
ファイナンシャル・プランナー、住宅ローンアドバイザー、シニアリスクコンサルタント、認定テクニカルアナリスト。フリーライターを経て、95年より独立系FP。2001年、マネーカウンセリングネットWealth共同主宰。現在は、「家計のリスク管理」「人生転機のマネー術」を柱に、個人相談のほか、コラム寄稿や記事監修、講師等で活躍。監修本・著書に『資産台帳』『住宅ローン賢い人はこう借りる』(PHP研究所)ほか多数。「心もお財布も豊かに暮らす」ための水先案内人を標榜。

加入時のライフステージにおいて必要だった保障額は、10年や15年後の更新時には、通常、加入時よりも小さくなっています。例えば、生まれたばかりの子供がいる家庭と、まもなく就職する予定の年齢が高い子供がいる家庭とでは、必要な保障額は 当然違ってきます。

そこで、いろいろなライフステージに合わせての保障の見直しが必要となりますが、保障額の大きさとともに定期保険と終身保険の性質の違いをしっかり把握してから選択することも大切です。

また、定期付終身保険に医療保障の特約を付けて加入されている方も多いかと思います。そのような場合には、保障の内容をしっかり確認して、主契約と特約部分を区別してそれぞれを見直し、時には特約の部分だけの減額や他の保険への乗り換えを考えた方がいいケースもあるでしょう。

■定期保険と終身保険の主な特徴

「定期保険」・・・ 期間限定で、大きな保障を、軽い保険料負担で確保したい時におすすめです。更新毎に保険料がアップしますが、当初保険料が軽いメリットを利用したい保険です。
「終身保険」・・・ 一生涯保障が続き、一定期間を過ぎると解約した時に契約期間に応じて保険料が戻ってくる、貯蓄性も兼ね備えた保険です。保険料の負担が大きいので、あまり大きな保障額には向きませんが、定期保険と違って保険料がずっと一定であることへの安心感があります。