第67回:保険金・給付金の受け取り方、事前にこれだけは知っておこう!


保険は、万が一の時のために加入するものですが、実はイザという時の保険金・給付金の「受け取り方」について、十分に理解している人はそれ程多くありません。「万が一(もしも)」は起きないのが何よりです。でも、実際に起きてしまった時には後で請求漏れがないよう、あらかじめ知っておきたいポイントを今回は整理してみたいと思います。

保険金・給付金請求の流れは?

保険金」とは、主に被保険者が死亡・高度障害状態になった時などに支払われるお金を指します。通常、保険金が支払われると保険契約は消滅します。一方で、「給付金」は、主に被保険者が入院・手術をした時などに支払われるお金を指します。こうした保険金・給付金を請求できる事由が起きた時の流れは、大まかには次のようにSTEP1からSTEP4までの流れになっています。

<保険金・給付金請求の流れ>

STEP1 契約者または受取人が保険会社へ連絡する。
STEP2 保険会社から必要書類の指定を受け、また必要な用紙等が郵送される。
STEP3 必要書類(請求書類)を揃えて保険会社に送る。
STEP4 保険会社で審査。不備や内容に問題がなければ、保険金・給付金が支払われる。

実際に保険金・給付金を請求できる事由が起きた時には、何はともあれ、保険会社の担当者、または代理店の担当者、通販商品ならコールセンターなどに連絡することが第一歩となります。そして、必要書類を揃えて請求の手続きを行うことになります。

<主な必要書類の例>

死亡保険金 保険証券、死亡保険金請求書
保険金受取人の戸籍謄本(抄本)・印鑑証明書
被保険者の住民票、死亡診断書、事故状況報告書(災害死亡保険金請求の場合)
入院給付金 給付金請求書、入院・手術等診断書(保険会社所定のもの)

保険金・給付金で「こんな時は受け取れない」を押さえよう!

実は、上記の保険金・給付金請求の流れにおいて、STEP1の「保険会社へ連絡する」の前に、保険金・給付金を請求できる事由かどうかを「判断」する作業があります。

この作業を行うには、どんな時に受け取れる保険に入っているのかを正しく理解しておく、あるいはいつでも確認できる体制を整えておくことが大事です。保険証券やご契約のしおり、約款などはきちんとファイリングして、日頃から気になったら広げてみるくらいはしたいもの。もちろん、保険会社や代理店などで、随時、確認するのもいいでしょう。

とはいえ、なかなか約款などまで見ている方は少ないのではないでしょうか。しかしながら、保険金・給付金の支払事由に該当しそうでしないケースもありますので、ある程度は知っておくことが必要です。一般に、保険金・給付金が受け取れないのは、(1)支払事由に該当しない、(2)免責事由に該当する、(3)告知義務違反による解除、と主に3つのパターンが挙げられ、それぞれの例には下記のようなものがあります。

ただし、保険会社や商品によって内容が一部異なることがありますので、自分が加入している保険はどうかについては、やはりご契約のしおりや約款などをよく確認しておきましょう。

<保険金・給付金が受け取れないのはこんなとき>

(1)支払事由に該当しない例
  • その保障が有効になる「責任開始日」より前に生じた病気や事故を原因とする高度障害保険金や入院給付金など。
  • 人間ドックを受けるための入院など、治療を目的としない入院の入院給付金。
  • 骨折治療の後、骨を固定するボルトを抜く手術を受けた場合の手術給付金。
  • 手指や足指の手術を受けた時の手術給付金。
  • 子宮頸管ポリープの摘出術を受けた時の手術給付金。
  • 抜歯術、扁桃摘出術、皮膚の良性腫瘍の手術、外傷を縫い合わせる手術を受けた時の手術給付金。
(2)免責事由に該当する例
  • 契約した保険の責任開始日から一定期間内(1~3年)に被保険者が自殺した時の死亡保険金。
  • 契約者または受取人の故意によって被保険者が死亡した時の死亡保険金。
  • 契約者、被保険者、受取人の故意または重大な過失で被保険者が死亡・入院した時の死亡保険金や入院給付金など。
  • 被保険者の犯罪行為や精神障害・泥酔が原因の事故による死亡保険金や入院給付金。
  • 被保険者が無免許運転・酒気帯び運転で生じた事故による死亡保険金や入院給付金。
  • 入院日数が所定の日数に満たない場合や支払限度日数を超えた場合の入院給付金。
  • ガン保険の保障が始まるまでの90日間の「待ち期間」中にガンとわかった場合のガン診断給付金やガン入院給付金。
  • 三大疾病保険(特約)で、急性心筋梗塞や脳卒中になったけれど、所定の日数(通常は60日以上)が経過せずに回復した時の三大疾病保険金。
(3)告知義務違反による解除

契約時に告知した内容が事実と異なる場合は、「告知義務違反」により契約・特約が解除となり、保険金・給付金が受け取れない場合がある。
※告知義務違反がわかると、責任開始日から2年以内なら保険会社は契約を解除できる。また、2年経過しても、支払事由が2年以内に発生していた場合は契約を解除されることがある。

保険金・給付金の請求漏れにご注意!

せっかく保険に入って万が一の事態(特定のリスク)に備えているのに、実際に保険金・給付金の支払事由が起きた時に請求が漏れてしまうのでは、加入している意味がありません。特に請求漏れが発生しやすいものとしては、契約が複数あったり、特約がたくさん付いていたりする場合などが挙げられます。

<1>契約が複数ある・特約が多い場合

たとえば、単体でガン保険と医療保険に加入している場合、ガン治療で入院した時には2つの保険から各種給付金を受け取れます。また、終身保険に医療特約と三大疾病特約をつけて加入している場合、ガンで入院した時に入院給付金のみの請求しかしなかったという例もあります(この場合、三大疾病保険金も請求できます)。

このように複数の保険に加入している場合は、すべての保険で請求漏れがないかをよく確認しましょう。なお、1つの保険に複数の特約が付いている場合も同様です。

<2>その他の場合

入院して手術を受けた後に亡くなった時に、死亡保険金しか請求しなかったケース(この場合、入院給付金や手術給付金なども請求できる)や、退院直後に入院給付金を請求し、その後の通院に対する通院給付金を請求し忘れていた例もよくあります。昨年来の不払い問題以降、保険会社側でも請求漏れがないようにチェックする体制も作っているようですが、入院・手術に関しては請求漏れが生じやすい点も頭に入れておきましょう。

なお、未請求分があると気づいたら、請求の時効(3年)を迎える前に必ず手続きをしましょう。もし請求などで納得のいかないことがあった場合は、なぜ支払われないのか、納得いくまで保険会社に説明してもらいましょう。また、生命保険協会でも相談を受けられるので、第三者の意見を聞いてみるのもよいでしょう。

指定代理請求制度を知っておこう!

最後に、請求漏れの一つに、病気の告知をしていないことが原因の場合があります。生存中の保険金・給付金の請求は被保険者本人が原則行うため、請求をすることが実質的な告知になってしまうことがあるため、請求をしない(できない)例も少なくありません。

こうした場合に備えて、「指定代理請求制度」が設けられています。これは、被保険者本人が病名や余命の告知を受けていない時や心神喪失状態などで保険金・給付金を請求できない時に、特約を付加することであらかじめ指定した代理人が請求できる制度のことをいいます。その対象となるものは、三大疾病保険(特約)、ガン保険(特約)、余命半年と診断されたときに保険金が支払われるリビングニーズ特約などのほか、入院給付金についても指定代理請求制度が適用できる商品もあります。

保険会社に指定代理請求制度があれば手続きは簡単ですし、費用もかかりません。ちなみに、指定代理請求人になれるのは、被保険者と同居または生計を一にしている被保険者の戸籍上の配偶者または3親等内の親族までとなっています。

2008年11月
マネーカウンセリングネットWealth
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田眞弓