第1回:より快適な生活を求めてリフォームする人が増えている


高額なローンを背負う買い換えよりリフォーム

わが国では長い間、結婚当初は賃貸アパートに住んで、少し蓄えができたらマンションを買い、その後余裕ができたら一戸建てに買い換えてアガリという「マイホーム双六」が続いてきました。しかし、いまそれが大きく変化しています。簡単に買い換えできる時代ではないため、首都圏や近畿圏を中心に新築マンションは「マンションブーム」といわれるほどに多数の物件が売り出され、しかも順調に売れていますが、一戸建ては極度の不振がもう何年も続いているのです。

その理由は簡単です。いったんマイホームを買ってしまうと、簡単には買い換えできないからです。たとえば、4000万円の新築マンションを、3500万円のローンを組んで買ったとします。かつてなら、10年もすれば4000万円で買ったマンションが5000万円、6000万円になって、ローンを一括返済しても手元に一戸建てに買い換えるための資金が残りました。しかし、現在ではそうもいきません。10年前に買ったマンションだと、地域によっては半額以下に相場が下がっているところもあります。仮に半額の2000万円になったとして、年利4%、35年返済のローンだと住宅ローンはまだ2930万円も残っています。930万円ほどの担保割れになっているわけです。この930万円を自力で用意しない限り売却はできません。売却できたとしても、次の買い換えのための頭金はどうすればいいでしょうか。初めて買う人が多いマンションが好調なのに比べて、買い換えの比重が高くなる一戸建ての不振が続いているのも十分に納得できます。

ここまで極端なケースではないにしても、失業率が依然として5%台の高水準にあるいま、高額のローンを新たに組んでマイホームを買い換えるのには不安が残ります。

それよりは、現在の住まいをリフォームして自分たちの生活に合った住まいに作り替えようとする人が増えても当然のことです。ここ数年、住宅のリフォームが増え、ブームのような状況になっているのは理由のないことではありません。

もっと快適な生活を求めてのリフォームが増加

そうした傾向は、最近のリフォームの目的をみると一目瞭然です。かつてのリフォームといえば、住まいや設備の老朽化に対応したものが大半でしたが、最近ではそうではなくより快適な生活を求めてのリフォームが中心になっているのです。

財団法人日本リフォームセンターの調査によると、リフォームの目的では、「もっと快適に」という回答がトップに上がっています。「住宅が古い」「設備が古い」という理由から、その補修や更新などを目的とするリフォームも依然少なくありませんが、いまのままでも十分住むことはできるけれど、もっと快適な生活をするためにリフォームを行うという人が増えているのです。この人たちは、かつてであれば、マイホームの買い換えに向かった層だったはずです。それが、いまはリフォームによって、より快適な住まいを考える時代に変わってきたということができます。

その背景には、簡単には買い換えできなくなっているという事情とともに、近年の新築住宅の基本性能が大幅にアップしていることが上げられるでしょう。かつての分譲住宅だと、10年、20年が経過するとあちこちに傷みが目立ち、快適な生活を営むのにはさまざまな障害が出てきたものですが、最近の住宅は住宅保証制度の充実などで10年、20年たっても構造躯体にはほとんど問題が出てこないシッカリとした物件が増えています。ですから、リフォームすれば、十分に快適な生活を送ることができるわけです。