貯めたお金を「自分のために有効に」使えるかで決まる
高齢期の不安3Kは、①経済(お金・年金) ②健康(認知症) ③孤独(生きがい)です。中でも長寿化による②認知症に対する不安はすべての年代が抱えている問題です。介護される人、介護する人の人生に深く関係するからです。しかし、イザ、判断の能力が不十分な高齢者等に次々おこる変化に対応できる高齢者本人、支援する家族、支援する制度にも限界があるのも現実。このままでは、本来嬉しい筈の長寿を生かせず、高齢期が単に消化人生になる人も増えそうで気になります。今回は、誰もが最期まで自分らしく生きるために、自分(夫婦)が貯めた(稼いだ)お金を、自分のために有効に使って欲しい気持ちを込めてお話しします。
3Kは微妙に絡んでいる
実は、高齢期の3つの不安①経済(お金・年金) ②健康(認知症) ③孤独(生きがい)は微妙に関係しています。例えば、
① 年金。
年金の加入歴は生き方・働き方の歴史、ある意味人生そのものの記録。被用者年金加入者に比べ国民年金加入者の年金額は低いのが一般的だが備え不足の人もいます。
② 認知症。
認知症になり在宅、施設入所などの選択時、支援する人の頭によぎるのは金銭的なこと。本人の資産金額の多寡に関わらず、本人が考えていたありたい暮らしに思いを巡らせる支援者は少ないかも知れません。
③ 孤独。
子のない夫婦の夫が、妻を亡くした喪失感から定年前に仕事もやめて引きこもり、加齢とともに判断能力も衰え孤独死となるケースもありました。退職後は自分から社会と関わりを持たない限り誰もが孤独になりがちです。
中には①少ない年金で③病気やいろんな事情から人との繋がりを絶ち②終末期のある時期
から判断能力の低下により、若いとき予想すらしていなかった貧困の老後を過ごす人も。
高齢期こそ ~ たくましく、厚かましく、しなやかに 生きられたら最高 ~
- ◆何が起ころうと、くじけずたくましく生きる生き方を自然に身につけておく
→ 若い時から大小の壁につきあたったとき、逃げず乗り越える積み重ねが宝となる - ◆どんなときも疑問があれば、厚かましく(遠慮せず)自分の意見や気持ちを伝える
→ 日頃から、自分と向き合い自分の考えをまとめ、当事者としてする発信が次に繋がる - ◆こだわりを捨てて柔軟な発想でしなやかに人とコミュニケーションをとる
→ どうでもいいプライドは捨て、相手を受け入れる心地よい居場所が心の安心となる
若い人や高齢者に限らず、学校・職場・家庭などで居場所がなく悩む人が増えています。
居場所づくりには時間が必要です。かつ、本人が居場所の必要性に気づくことが第一。
判断能力の有無に関わらず、高齢期を上手に生きていらっしゃる人は、さりげなく時間をかけてその都度迷いながらも行動して来られたかもしれません。
とは言いながら、増え続ける認知症高齢者の課題である財産管理は家族・親族が支えている実態が以下の統計■(みずほ情報総研株式会社が、2016年10月、認知症の人に対する預貯金・財産の管理を支援したことがある40歳以上男女2000名対象)からも見えてきます。
認知症の財産管理 ~ 成年後見利用6.4% ~
認知症高齢者は年々増加しており、団塊世代が75歳以上となる2025年には約700万人になると予想されています。現在、判断能力が不十分になった人などを支援する制度に①成年後見制度や②地域福祉権利擁護事業などがあります。
但し、認知症で預貯金等の管理・解約等が必要と推定される人数に対し、成年後見制度を利用している人はわずか6.4%、成年後見制度を利用するつもりがないが55.4%、今後親のお金を巡って家族間のトラブルか増えそうで心配です。
親族の場合、親のお金と子などのお金の認識不足が課題です。高齢期の高齢者施設の費用や社会保険料、高額介護療養費などは口座を通してのやりとりがほとんどで、現金決済はあまりありません。また、高齢者などの判断能力が不十分なとき親族が大きな契約するケースは問題ですが、現実は介護付有料老人ホームでも成年後見人を認めず親族のみ契約可もあり疑問が残ります。
現在、家庭裁判所は、成年後見制度利用者の不正防止を、後見制度支援信託や監督人の増加で乗り切ろうとしています。ちなみに成年後見制度利用者の不正状況の統計です。家庭裁判所の監督のもとでも、不正事案の9割以上は親族などの専門職以外のケースです。成年後見制度の利用が進まない今後、資産をめぐり親族等のトラブルの増加が予想されますね。
後見人等による不正の状況
お金に関する私のスタンスを今から育てておこう
高齢期のお金の使い方、使われ方は家庭により様々。統計からもわかるように、こんな環境だからこそ、お金に対する意識は日々こまめに育てておきたいものです。「高齢だからお金の
管理はすべて子に任せる」などの一言で済めば楽ですが、誰もが任せて安心の家族ばかりではありません。子とは言え、各々中年になってからの経済状況は異なっているからです。
せめて、日頃から親子間のお金に対する意識を統一しておきましょう。
何歳まで生きるかは人それぞれですが、最期まで自分ができることを手放さないで (人に任せず) 活用する期間を長くすることが、豊かな生活期間を長くするコツでしょう。単に節約、ケチに徹するのではなく、お金を活かして使うスタンスを若いときから身につけておきたいものです。そのために少額からでよいのでゆとりのお金を増やしましょう。続けることでゆとりのお金が増え、そのゆとりがあなたの経済の感性をより育ててくれるでしょう。