「終の棲家」確保のために人は生きる? ~高価格の高齢者施設の見学会が増えている~


私の強みは何でも興味を持ったら即行動すること、得とかソンとか、仕事や人生において役に立つか立たないかに関係なくその対象現場に行って調べることです。今、興味があるのは高齢者施設見学です。地元で「介護保険を研究する会」に参加し、成年後見人を複数受任していることもあり、今では見学にいった施設は200カ所を超えました。
この6月、7月も仕事の合間に3カ所見学してきました。その3カ所の特徴は高級な高齢者施設であること。私たちがあくせく働いて貯めたお金が終の棲家獲得のため消える?と感じるほど高額な費用がかかる施設に接するとき、ごく普通の金銭感覚の私は虚しくなると共に、改めて高齢者の貧富の格差がよくわかりました。今回は最近見学会が増えている入居時自立の高級高齢者施設についてお話しします。
お金があるから高級な施設に入居、ではなく、一生を通してどんな暮らしをしたいのか、何のためにその施設を選ぶのか、目的をはっきりさせておくことも大切だからです。各施設の特徴と実態を自分で知って感じての選択が求められます。

一時的に生活を過ごすホテルと高齢期の生活全てを過ごす高齢者施設では役割が異なる。豪華なロビー・大浴場・広い食堂に浮かれず、利用率や入居率などの確認は必須だね

高齢者施設の特徴を知る
①入居時自立 ケア付き高齢者住宅(「介護付き有料老人ホーム」明日見らいふ南大沢) ~65歳以上 夫婦2人なら2人とも65歳以上~

高齢者施設といっても様々。この施設は、入居時の要件は自立だが要介護状態になり一般居室(37.22~57.24m²・定員1~2人)での生活が困難になると介護棟に移るタイプ(2018年度は11名・平均年齢は89.5歳、男性2名、女性9名)。残念ながら一番見学したかった介護棟の居室(50室・20.48m²)の見学はできませんでした。
この施設の一番の特徴は、事業主体が「東京都住宅供給公社」、運営業務受託者は「社会福祉法人聖隷福祉法人」で職員はみなし公務員であること。当日の参加者約10名に対し説明案内人の数は豊富でした。最寄りの京王相模原線・南大沢駅からシャトルバスで5分、環境も施設設備も素晴らしいが高級な施設です。
現在東京都には、介護付き有料老人ホームは875施設あり、うち入居時自立型のみは8施設とのこと。できる限り施設で元気に過ごせる期間を長くしてもらうために、レクリエーションなどに力を入れているとのことです。定員482名、全370の居室に、豪華ロビー、温水プール、大浴場、テニスコート、図書館、生涯学習室などの共用施設があります(施設案内より)。
入居に必要な費用は以下のとおり高額です。

費用入居時費用月額費用+ ( 介護サービス利用料 + 日常生活費等 )

入居時費用 (前払家賃+前払特別介護費) 1人入居の費用 (終身一括プラン) 47.68m²
入居時年齢 (想定居住期間) 前払家賃 前払特別介護費※ 入居時費用
終身一括払プラン 65~70歳 (20年間) 4,846万円
(1,815万円)
8,442,500円
(8,442,500円)
56,902,500円
(26,592,500円)
71~74歳 (16年間) 4,244万円
(1,613万円)
7,848,500円
(7,848,500円)
50,288,500円
(23,978,500円)
75~79歳 (13年間) 3,710万円
(1,376万円)
7,403,000円
(7,403,000円)
44,503,000円
(21,163,000円)
80歳~(11年間) 3,448万円
(1,220万円)
7,106,000円
(7,106,000円)
41,586,000円
(19,306,000円)

高齢になって入居すると入居時の費用はお得になるしくみ。想定居住期間より長生きする程コスト割安。
なお、終身プランには月払併用と1年間お試しプラン有。( )内は2人目の場合

月額費用
1人入居 2人入居
管理費 ※ 83,600円 130,900円
食費  ※ 70,260円 140,520円

※2019年10月1日からの予定 食費は(1日3食、30日分の場合)

②入居時自立「介護付き有料老人ホーム」コンフォートロイヤルライフ多摩 ~65歳以上 夫婦入居は、1人が65歳以上かつもう片方が60歳以上~

この施設の一番の特徴は、協力医療機関「多摩丘陵病院」に隣接し素晴らしい自然環境に恵まれていること。運営主体はセコムフォート多摩株式会社。一般居室(43.39~98.65m²)、定員190名、全143戸、入居中に介護が必要になった場合は介護居室 (7室・14人、19.3~21.43m²)に異動となるが新たな費用は不要。なお、介護居室の見学はできませんでした。最寄り駅(京王線・小田急線)多摩センター駅よりシャトルバスで10分、環境も施設設備も素晴らしいが費用は高額。入居者の年齢や部屋の広さや階等で入居一時金等が異なるのは①と同じ。利用料は以下の通りで、一時金方式か月払いを選択します。併せて食費(1日3食30日分の場合)や管理費 (1人14.1万円・2人で22.2万円)です。

一時金方式    1人入居  48.25m²  の場合
入居年齢 入居一時金(2人目の入居は一律1,400万円加算) 償却期間 (初期償却は一律15%)
70~75歳 10,040万円 14年
76~78歳 7,889万円 11年
79~81歳 6,544万円 9年
82~84歳 5,737万円 8年
85歳以上 5,020万円 7年

※夫婦同時入居の場合等は、若い方の年齢で計算 (70歳未満は問い合わせ要)

月払方式
1人入居 508,000円
2人入居 650,000円

大浴場の利用者も多く、食事も美味しく、食堂もそれなりに利用されていました。一緒に説明を受けた私と同年代の女性は気にいったらしく、病弱な自分が夫を残して先に死んでしまったら、入居してみてはどうか夫に勧めたいと話していました。但し、気にいったからといって自分が入居できるかどうかは別問題。元気なときの施設ライフを楽しむこの施設は、早めに入居しないと意味がないのですが、入居時に1億前後必要となると誰もが出せるお金ではありません。

③入居時自立 60歳以上 「住宅型有料老人ホーム」グランケール あざみ野 ~居室での介護保険は外部の事業者と契約~

東急田園都市線の急行停車駅・あざみ野から徒歩12分 (約960メートル)と都心などへのアクセスが便利な立地で、ロビー、大浴場、各種レクリエーション室などを備えた豪華な施設です。運営は東急不動産株式会社、介護保険の利用は外部事業者と契約、提携ホームのグランケアアザミ野に移ることも可能です(追加費用要)。一般居室(44.37~81.95m²)76室で共有部分が充実していますが大浴場やお昼の食堂の利用率は低そうです。
家賃の支払い方は、前払方式(入居時に終身にわたる家賃相当額を一括で支払う)と月払方式(家賃を毎月支払う)から選択できます。入居人数、年齢、部屋の広さなどで費用は異なります。

80歳 1人入居 1LDK 59.22m² の場合

前払方式 月払方式
入居時費用 入居時費用
前払金 52,704,000円 敷金 1,098,000円
月額費用 月額費用
月払家賃 0円 月払家賃 366,000円
管理費 60,000円 管理費 60,000円
サービス費 108,000円 サービス費 108,000円
168,000円 534,000円

①②③とも、居室の光熱費、通信費、食費、医療費、介護が必要になった場合は介護サービス費かつ生活費等は別途必要です。
なお、①②③の居室は利用権、①②は介護居室に移ったときの介護サービスは施設の職員の介護サービスを受け③は外部の介護事業者と契約となります。

高齢期の買い物は慎重に

高齢者施設のパンフレットに書かれた金額の内容を正しく理解しましょう。
何が含まれた金額か、今現在の状況だけで判断は禁物です。例えば、要介護状態が重くなったら、介護保険の利用料負担が発生。オムツ代も増えますが、市区町村によってはオムツ代に助成金(上限あり)がでます。病気になって入院したら入院費も必要ですが、併せて払う施設代はあまり変わらず結果負担増になります。夫婦2人で入居ならどちらかが亡くなれば年金収入も変わります。何よりこの長寿時代、それまで資金が持つか試算しておくのがよいでしょう。
サービスの内容の理解も必要です。逆にゆとりがあるなら自分たちが楽しめる使い方の工夫をしてこそ、大切なお金が生きる使い方に繋がるからです。

何にお金を使うかは、その人の自由だけど、お金があるから使うではなく、費用対効果と満足度も大切にしたいね・・・

体力の減少も視野に入れておくこと。大浴場の利用年齢や環境にも限界があります。本格的に介護が必要になった場合、①②は狭い介護居室に移るイメージもしておきましょう。
どうしても今現在の夢プランで資金や生活の計画をたてがちですが、途中で気が変わっても高齢期の転居は難しいのも現実。特に、1日3度の食事はメニューや味がしっくりくるか、自分の味覚に忠実に。介護が必要になったときのサービス利用形態と費用も確認しておきましょう。高齢期の環境の変化は予想以上に心理的な影響を与えます。

施設案内人の説明に何の疑問を持たずに、雰囲気だけで高い物件の購入を決めるのは避けましょう。
事前に取り寄せた資料で学び、自分の目でもきちんと確認して判断できるうちに見学を重ねておくことがベストでしょう。
今を楽しめてないのに施設に入居すれば全てがバラ色に変わる可能性は少ないのです。逆に地域の暮らしを楽しめている人なら、施設の実態次第で入居後も楽しめそうです。または、少し入居時期を遅らせそのときの体調にあった施設に入居することも可能です。
レクリエーションなどは、晴れの日の催しの盛大さだけでなく、日々の実態の確認も大切です。
今回の施設をざっくりとまとめると、高級マンションに生活相談・安否確認・フロントサービス等がついた施設。施設に求めるものは人様々。だからこそ見学を重ね、お金と心と体力に納得して選択を願っています。
私も高級高額施設の見学を重ねることで、私の身の丈にあった施設のサービス内容の良さに改めて気づかされた次第です。取りあえず今はもう少し自宅暮らしを楽しんでみます。