「働けるうちはいつまでも」働きたい60歳以上が約4割 ~60歳以上の労働災害による死傷病数も増加傾向


最近、「人生100年時代の生活設計」に関するセミナー依頼が少しずつ増えています。しかし、これが中々難しいテーマなのです。何故なら主催者は、いかにして資産を増やし、最後まで枯渇させないか、というマネープラン講座を期待しています。ですが、お金・健康・生き方の格差が大きいのも高齢期の実態です。長く生きて身につけた知識・経験をもとにお話できればと思いつつ、レジュメ作りに奮闘する日々です。
「現場での気付きから新しい発見を増やせる機会がある限り、仕事を続けたい!」が、既に高齢者である私の今の本音です。中年から仕事を始めた当初はこんなに長く働くとは思っていませんでした。働くのがイヤでないなら、時代の波に乗ってみるのも悪くないものです。

長寿化で各人の持ち時間が長くなり、高齢になっても働く人が今後益々増えるでしょう。高齢期の就労は健康維持にも貢献します。まさに、「働くことは生きること」。今回は、統計から見えてきた「働くこと」に絞った課題を「我が事」として受け止め、これから先の長い人生を生き抜くための参考にして欲しいという気持ちを込めてまとめました。


60歳以上で収入のある仕事をしている人は約4割 ~そのうち約4割が働けるうちはいつまでも働きたい

60歳以上で収入のある仕事をしている人は約4割~そのうち約4割が働けるうちはいつまでも働きたい
60歳以上の男女で収入のある仕事をしている人は37.3%、男性の60~69歳と女性の60~64歳は6割以上が仕事をしています。年齢が上がるにつれ割合は減少していますが、前回調査(平成28年)と比べ割合は増えています(女性80歳以上を除く)。

収入のある仕事をしている人の割合(性・年齢別)


高齢者白書 令和2年版 就業

現在仕事をしている60歳以上の人の約4割が、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しています。下表からも高齢者の就業意欲は高いことが分かります。公的年金がらみの老後資金の不安も関係しているのかも知れません。

あなたは、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか


高齢者白書 令和2年版 高齢化の状況

70歳までの就業機会確保 (改正高年齢者雇用安定法)

少子高齢化で人口が減少する中、この法改正により、経済社会の活力化を維持するため、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境をつくることを目指しています。

事業主に対し65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として以下の①~⑤のいずれかの措置を講ずる努力義務 (現行は①②③いずれかを義務付け・平成25年以降の適用者は原則として希望者全員) を設ける。
・努力義務について雇用以外の措置(④及び⑤)による場合は、労働者の過半数を代表する者等の同意を得て導入。


高年齢者就業確保措置の新設~令和3年4月1日施行

法改正は、働く意欲がある高齢者にとってありがたい後押しです。だからこそ、制度を上手に利用して充実感のある高齢期を過ごすために、今からできる準備の必要性に気づけばよりベストでしょう。

高齢期、金銭目的のみの就労より「生きがい」をもてる就労が重要

65歳以上の高齢就労者において、金銭のみを目的としている人は、生きがいを目的としている人に比べて2年後の主観的健康感の悪化リスクが1.42倍、生活機能悪化リスクが1.55倍高いという統計がでています(地方独立行政法人・東京都健康長寿医療センター)。


金銭のみを就労の目的としている者は、より多くの収入を得るために、長時間・危険・重労働などによる身体的および精神的負担が大きく、健康悪化リスクが高いと考えられています。
逆に、生きがい又は生きがいと金銭の両方を目的とする者は、金銭が上位の目的ではないので、就労によるストレスが小さいと考えられるでしょう。高齢期の健康リスクを小さくするには、生きがいが実感できる仕事選びも重要なのですね。

個人的には、今、生きがいと金銭の両方を目的にできる仕事をできていることをうれしく思っています。やりたい仕事をして人に感謝され人との交流もでき、それなりに収入を得られ、その分自由にお金も使えて、満足度大です。
勿論、生き方は人それぞれ、人と比べるものではなく、強制するものでもありません。

高齢期・就労目的を自由に選べる状況にしておく準備も ~お金と健康の備えとぶれない生き方を身につける

長い高齢期を快適に過ごすには、何歳まで働くか・何のために働くのか目的をイメージした準備が欠かせません。雇用されて、請負で、自営で、起業して働く等に対応が必要です。

仮に、趣味に生きるとしても、基盤となる生活費が準備できてこそ可能です。仕事を選ぶならスキル磨き(今の延長上、もしくは新しいことにトライする等)も必要でしょう。60歳又は65歳から10年~15年働けるならそのための投資も無駄ではありません。そのとき必要なお金と健康も今の仕事などをしながら時間をうまく使って、身につけていくのが基本です。人生100年時代は収穫が2回あると考えれば、準備にも励みがでますね。50歳代からの準備がその決め手です。

<参考までに>
エイジフレンドリーガイドライン (高年齢労働者の安全と健康感補のためのガイドライン)

厚生労働省は、令和2年3月にエイジフレンドリーガイドライン(以下、ガイドライン)を策定しています。働く高齢者が増加し、60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍に増加、特に商業や保健衛生業を初めとする第三次産業で増加しました。死傷者数の、60歳以上の労働者数が占める割合は26%(2018年)と増加傾向。労働災害率発生率は、若年者層に比べ高年齢層で高く、転倒・墜落・転落などが高く、女性で顕著とのことです。大企業に比べ小規模企業の方が雇い入れ時の説明不足・情報の共有不足等もありケガ等が多い傾向にあるそうです。

ガイドラインは、雇用される高齢者を対象としていますが、他の働く高齢者にも参考になります。連れ合いの経験からも、高齢期の体力は、本人が思っている以上に低下していることを認識。50歳ころから身体機能の維持のために、厚生労働省作成の転倒等リスク評価セルフチェック表などを活用してもいいでしょう。準備に早すぎるということはありません。

[エイジフレンドリーガイドライン]
https://age-friendly.chosakai.ne.jp/guideline