現職僧侶が語るお葬式セミナーに参加してきました ~少し刺激的だった入棺体験!


この2年間で、私の身近な人が8人亡くなりました。内3人は母の弟とその配偶者たち、5人は成年後見制度で支援していた5人です。80代後半の1人を除き、皆90代でした。
多分、私は他の人よりは葬儀に列席した回数は多いのではないでしょうか。誰もが感じていると思うのですが、世の中の葬儀の形態、葬儀に対する考え方も年々変わってきています。

過去、何度か葬儀関係者のお話をお聞きしたことがありますが、受講生の関心はもっぱら費用のこと。なぜ葬儀をするのかなど、根本的な話には興味がなさそうでした。私自身何となく違和感を感じていたところに届いたのが、お寺(僧侶)さんの立場からのセミナーのお知らせでした。
私は即受講希望の連絡をしました。また、自分の中のもやもや感を解消できれば、という期待もありました。

今回は自宅近くの稲城市にある普門禅庵主催の「現職僧侶が語る葬式セミナー」に参加して気づいたことを、お話します。まずは世の中と自分の現状を整理することから、と言うわけです。
「人の死」は生まれたからには誰もが必ず通る経験です。葬儀やお墓について具体的に考える機会を持っておくことは大切だと思います。

葬儀の費用 ~基本を抑えておく

誰もが気になるのが葬儀にいくらかかるのか?でしょう。かかる費用をざっくり分けると固定費変動費寺院へのお礼(お布施)の3つ。規模、葬儀の形式、どこで葬儀をするのか、何に重きを置くかで異なってきます。

葬儀の費用のイメージ
葬儀そのものに関わる費用
  • 式場使用料
  • 葬料(公営は無料)
  • 棺・車・写真・骨壺
  • 供花 等
葬儀に伴って発生する費用
  • 返礼品
  • 飲食代 等
香典で一部補充も可
布施
葬儀の形態で不要なことも

セミナーのレジュメ・お話を基に著者が作成

現状 ~変わる世の中・着実に増え続ける死亡数と意識の変化

少子高齢化により2005年に死亡数(1,084千人)が出生数(1,063千人)を超え、その後死亡数は着実に増え団塊ジュニア世代が65歳になる2040年には、1,679千人になると予測されています。

2019年までは厚生労働省「人口動態統計」による死亡数、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)の死亡中位による推定結果を基に著者作成

核家族化や、生涯未婚を含めた単身世帯も増え、今や3世帯同居家族は珍しく、一生のうちに人の死に遭遇する機会も減っています。自宅にお仏壇がある家も、減っているそうです。
進学・就職などで都会に出て自由に生きてきた人は、職場が少ない・意外と人間関係のしがらみがある田舎を敬遠しがちなのも仕方ないのかも知れません。わたしたち夫婦も田舎に戻りませんでした。行動範囲の拡大、少子化、経済的な事情等から過去のしきたりを守りたくても守れない人も増えていそうですね。

私と連れ合いの葬儀は、「家族葬で」と決めています。我が家にはお墓がありません。連れ合いは「散骨」が希望ですが、子供から「お参りはどこへ行けばいいの?」と質問をされ、気持ちが揺らいでいる様子。一方私は「一定期間納骨室に安置後、合葬」が希望。今後話し合いが必要です。

私が支援した人もすべて単身世帯、後見人等は原則、死後事務をしませんが、諸事情により止むを得ず葬儀に関与します。上記の5人のうち1人は家族葬、4人は参列者不在でした。式の形態はその人の予算も考慮して一日葬と直葬。生前に本人に協力してもらい、ポーズを取った遺影を飾ることができたのが救いでした。おしゃれ好きだった女性には少し費用がかかりました。きれいにお化粧もしてもらい、読経していただいたお坊さんのお寺に永代供養もしていただきました。関わる人がいるのが前提ですが、豪華・質素な式に関係なく、心を込めた供養はやり方次第で可能です。

葬儀形式・取り扱い件数等の変化

今後「一般葬」や「社葬」が減少し、「家族葬」や「直送」など小規模な葬儀の増加は時代の流れかも知れません。

増加傾向にある葬儀の種類 家族葬 51.1% 減少傾向にある葬儀の種類 一般葬 68.8%
直葬 26.2% 社葬 24.3%
一日葬 17.1% 直葬 3.1%
一般葬 5.4% 家族葬 2.5%
社葬 0.3% 1日葬 1.5%

公正取引委員会 「葬儀の取引に関する実態調査報告書」2019年

公正取引委員会 「葬儀の取引に関する実態調査報告書」2019年 より著者作成

葬儀の主な種類と内容

葬儀の主な種類と概略内容は以下のとおりです。

種類 内容
一般葬 参列者50名以上の葬儀 出席者の範囲が広い伝統的な葬儀、通夜・告別式・火葬を実施
家族葬 親族や親しい友人等親しい関係者のみ出席 通夜・告別式・火葬を実施
一日葬 家族や親しい友人等親しい関係者のみ出席 告別式・火葬を実施
直葬 家族や親しい友人等親しい関係者のみ出席 火葬のみ実施
社葬 企業の創業者・会長・社長等に顕彰の意味を込めて企業が主体になって執り行う葬儀。後継者のお披露目的な意味もある。社葬の前に遺族・親族による密葬が行われるのが一般的

公正取引委員会 「葬儀の取引に関する実態調査報告書」2019年 より著者作成

家族葬は人数も少ないので葬儀費用は安価にできます。但し、香典をいただかないことが多いので、葬儀のあと等の飲食代等の負担も考慮が必要です。私も家族葬に参加しましたが、事前に香典は辞退する旨言われました。人数・やり方次第では、コストがかかります。
葬儀後の弔問客への対応に追われることもあるので、事前の調整も必要かも知れません。

11月に高齢者施設に入所していた叔父を亡くしました。叔母は常々姪の私に、どちらかが万が一のときは「家族葬」とする旨伝えていました。予定どおり葬式は3人の子とその関係者のみの「家族葬」を実施。叔父を乗せた車が実家と、叔母が入所している高齢者施設の前を通りお別れの挨拶をしてくれたそうです。従妹から、心温まるいい葬儀だったと連絡がありました。叔母は90代ですが、自分の意志で決定し、実行したことに感心しました。

葬儀をする意味

高齢化が進めば、当然、親しい友人や知人の数も減ります。少子化で子世代の負担は増加しています。葬儀の形が縮小するのも止むを得ません。今回のお寺のセミナーで聞いた、「葬式は、大切な人の死を受け入れるプロセス」という言葉が心に残りました。幸せであればあるほど別れが辛い。逆に、いい人生を過ごした証拠。「それを知るのが葬式」である。その言葉が胸に響きました。大切な人とは、1人称(自分)や3人称(第3者)ではなく、2人称(あなた・君)のことです。

更に、当日は、体験入棺もしました。棺に寝て、上から蓋をされると真っ暗! 棺は予想外に狭く、「死んだら何も持っていけないな!」、これからは「もの」でなく生きている間に「思い出」を沢山つくろう、と思わず思った次第です。葬儀に対する僧侶の視点からのセミナーは、思わぬ収穫でした。
時代は移り変わることを認識しつつも、日々の生活の中でぶれることのない生き方の積み重ねが高齢期こそ大切なのですね。