令和4年度の公的年金支給額・前年度より0.4%減 ~標準的な厚生年金世帯で年約1.1万円減は相当厳しい!


厚生労働省は、総務省発表の令和3年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品含む)を踏まえ、令和4年度の年金額を前年度より0.4%引き下げると公表(令和4年1月21日)しました。
老後生活のベースとなる公的年金額の維持が難しい現実を受け止めた上で、生き方(働き方、家計・健康管理)対策に本気で取り組むときを迎えたようです。

最近、生鮮食品(果物・野菜・魚・ケーキ等)の値上げも増え、特に魚の値段に驚き購入をためらうことも。一方、最寄り駅の百貨店の総菜売り場は相変わらず高齢者を含めた人々で盛況です。
令和4年度4月分・5月分の年金が口座に入金になるのは6月15日、その少し前に届く振込通知書の額をみて驚く高齢者の姿が目に浮かびます。

我が夫婦も年金受給者、年金額減に敏感でサイフを預かる主婦の立場から、ごく標準的な厚生年金世帯の60代後半の年金が年約1.1万円減は他人事ではありません。一般的に高齢期は現役世代と異なり収入源は限られているからです。

今回は、年金額が減ると嘆く前に、情報の後追いでなく「では、今どうする」に取り組む最終時期と気づいて欲しい希望を込めてお話しします。

新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例 (令和4年度)

国民年金1人分は年3,108円(259円×12月)減、厚生年金世帯は年10,836円(903円×12月)減。高齢者は勿論、未来の高齢者はより厳しさが予想されます。

(図表1)令和4年度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例

年金月額 令和3年度 令和4年度
国民年金
(老齢基礎年金(満額):1人分
65,075円 64,816円
(前年度比▲259円
厚生年金
(夫婦2人分の老齢基礎年金含む標準的な年金額)
220,496円 219,593円
(前年度比▲903円

標準的な収入(平均標準報酬(賞与含月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金の給付水準:厚生労働省

<参考>令和4年度の年金額改定

  • 物価変動率(以下物価)令和3年平均の全国消費者物価指数・生鮮食品を含む総合指数
    ▲0.2%
  • 名目手取り賃金変動率(以下賃金)
    ▲0.4%
  • マクロ経済スライド調整率
    ▲0.3%(繰り越し分・令和3年度▲0.1%+令和4年度▲0.2%)
    賃金・物価ともにマイナス→賃金▲0.4%&物価▲0.2%→年金額改定は▲0.4%で実施

賃金がマイナスで、賃金が物価を下回る場合、賃金に合わせて年金額改定(令和3年度施行)
令和4年度の改定率がマイナスなので、マクロ経済スライドによる調整は実施せず、未調整分は翌年度以降に繰り越し。改定率がプラスになると未調整分控除で年金額減。

マクロ経済スライド(平成16年度施行)
被保険者減少と平均余命の伸びにより設定された調整率を、賃金と物価の変動がプラスの時改定率から控除する制度→今後当分の間厳しさが続くと予想される

知っておきたいモデル世帯の年金額の内容 (昭和16年4月2日以降生)

(図表1)は、20歳から60歳になるまでの40年(480月)年金に加入した人の年金月額です。

  1. ① 国民年金から支給される老齢基礎年金(満額)は、77万7,800円(令和4年度)。
    40年加入して満額支給される人の年金額(月) = 77万7,800円÷12月 ≒ 64,816円
  2. 厚生年金世帯の例では、夫が厚生年金に40年加入、妻が国民年金40年加入とします。
    厚生年金に加入した夫には、老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されます。

(図表2)モデル世帯の年金額

上記の年金額は、あくまで標準的なイメージ。実際に支給される年金額は、加入月数や報酬・賞与、加入時期なども関係し以下(図表3)のような統計もでています。
ざっくり、モデル年金額は40年加入で試算ですが、保険料を給与から天引きされる厚生年金加入者と異なり国民年金加入者は、未手続、免除申請期間等で受給年金額も減額されるため、国民年金に40年加入して満額受給している人は図表3からも少ないことが分かります。
ちなみに、金額には厚生年金世帯で要件を満たせば加算される加給年金額と振替加算の額は含まれていません。

(図表3)制度別受給者平均年金月額

国民年金 厚生年金(第1号※3) 基礎年金額含
受給者平均年金月額 56,362円 受給者平均年金月額 102,251円
新規裁定者※1
(25年以上)
54,191円 老齢年金平均月額
(25年以上)
145,770円
25年未満加入※2 19,348円 通算老齢年金 62,319円

※1 新たに老齢基礎年金を受給できる人
※2 受給資格期間10年で受給資格を得た基礎年金受給者
※3 旧共済組合員は除く 厚生労働省年金局・社会保険事業月報・令和3年7月現在

主な年の国民年金の保険料と満額年金額の推移

月額 昭和51年度 昭和61年度 平成11年度 平成18年度 平成28年度 令和4年度
保険料 1,400円 7,100円 13,300円 13,860円 16,660円 16,590円
満額年金 390,000円 622,800円 804,200円 792,100円 780,100円 777,800円

参考:令和5年度の保険料は、16,520円

消費者物価指数から見えてくること

令和4年度年金額改定に使う物価は、前年令和3年の総合指数(生鮮食費品含む)で令和2年を100とすると99.8で▲0.2%減。但し、実態は年平均の統計に反映しておらず昨年秋ごろから物価はジワジワ上昇。以下の総務省統計(図表4)で2020年と2021(令和3)年の同月と比べてみます。消費者物価指数(総合指数)の令和3年12月分は、前年12月比で0.8%上昇。生鮮食品を除く総合指数は0.5%上昇。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は0.7%下落。前年12月に比べ、生鮮食品やエネルギー(電気代・都市ガス代・プロパンガス・灯油等)の上昇が顕著です。

(図表4) 総務省 2020年基準 消費者物価指数

コロナの関係などから世界的に、エネルギー関連・生鮮食品関係が上昇しており、物価上昇は続きそうですが、我が国の賃金の上昇は見込めず我慢の日々が続きそう・・・。
実質物価上昇だが年金額減は庶民にとって一大事ですが、ま坂(さか)と驚かない人も増えています。
長寿化だからこそ全世代に頼りになるのが公的年金、存在の重さに気づき対策を取って欲しい。
金額をみてため息をつき、喉元過ぎれば忘れる繰り返しから、今こそ立場で異なる各自の課題に向きあい、なんだ坂(さか)こんな坂(さか)と足元を固める行動が今求められます。