成年後見人などの待ったなしの「養成」と、問われる「質」
日本人の平均寿命は着実に伸び、多くの人は正に人生90年時代に突入したが実感です。実際に私が見学した介護付などの高齢者施設でお聞きした入所者の平均年齢は、ほぼ85歳前後、入所者の中には100歳を超える人もいます。 長寿の人が多いのは、その国が平和であることを示しており嬉しいことです。ただ、個人レベルの暮らしの中身の安全面での不安は、長生きした分増えるのは確かです。今回は、これからの高齢者等に益々利用が増えそうな「成年後見制度」の課題についてお話ししましょう。100歳以上の高齢者数
総数 | 男性 | 女性 | |
100歳以上の高齢者 | 47,756人 | 6,162人(12.90%) | 41,594人(87.10%) |
23年度中に100歳になる高齢者 | 24,952人 | 3,728人(14.94%) | 21,224人(85.06%) |
厚生労働省 平成23年9月1日現在
成年後見制度、さらっとおさらい
成年後見制度は、判断能力が不十分な人などがお金の管理や生活面で不利にならないよう支援をする制度です (※詳細は、社会保障の落とし穴 2009年7月参考)。 具体的には、親亡き後の知的障害を持つ子が将来施設に入所するときの手続きやお金の管理、自分の年金を子どもの浪費から守りたい、高額な浄水器を親が購入して困っている場合などの支援が可能です。但し、実際の後見事務が動きだすのは判断能力が不十分な人が対象です。成年後見制度を利用する人も増えるにつれ、支援する成年後見人などの不正も増えてきました。増えてきた成年後見制度利用者
成年後見制度は、平成12年に介護保険制度と同時に施行されました。 制度の内容が浸透するにつれ近年の申立総数、中でも全面的に代理権がある後見開始の件数が増加しています。即利用しないと困る人が多いということでしょう。 一方、判断能力があるうちに将来のために支援者と支援内容を契約(公正証書で作成・公証人からの嘱託により登記)し、判断能力がなくなったとき家庭裁判所に申し立て後、任意後見監督人が選任され支援者の後見事務が始まるのが、任意後見人制度です。契約して任意後見事務が始まるまでに期間がかかるとはいえ、契約数に比べ監督人選任数が少ないのも気になります※。判断能力がなくなったとき適正な申し立てが行われていない可能性の疑問もありそうです。後見人などの解任件数が増加
最高裁判所の統計によれば財産管理をする後見人などが、本人の財産の使い込みなどで家庭裁判所から解任されたケースが増えているそうです。平成21年は276件、平成22年は286件と2001年の51件の5.6倍の増加です。第3者の後見人などに限らず、親族の不正も増えているようです。

後見人などが行った仕事ごとに記録をつけ1年後に報告義務もあるのは、親族も第3者後見人も同じです。基本的に親族は無料のケースが多く、大切な自分の時間を提供するのですから大変な作業です。また、本人のお金と後見人などのお金のけじめがつけられずに不正につながることもあります。親族の中には親本人の年金を当たり前のように生活費に組み込んで暮らしている人もいるからです。
第3者後見人は行った仕事に対して報酬を受けます。不正に繋がる理由として、後見事務にかかわって約1年後の報酬の申立て、本人の資産により報酬が決まる例が多く(財産がない人などの市町村申立などのケースでは市町村の補助があった場合の在宅者月2.8万円上限・施設入居者月1.8万円上限)、何度も本人のところに訪問せざるを得ないケースでも身上監護の苦労が報われない報酬規程なども少しは関係しているかも知れません。