国民年金に加入しておけば良かったと嘆く遺族厚生年金受給の妻
国民年金の保険料の納付者が減少しています。統計によれば納付しない主な理由として、(1)保険料が高い(2)経済的に払うことが困難(3)年金制度の将来が不安で信用できない(4)国民年金はあてにしていないなどがあります。但し、年金の相談を受ける身で感じるのは「国民年金」は皆さんが思っている以上に優れた制度です。
若いときは高齢になること、配偶者の死に遭遇することもあること、障害状態になることもあることを他人ごとのように考えています。しかし、実際に年金を受給するとき、きちんと国民年金の保険料を納付していた人とそうでなかった人の65歳からの金額の差に驚くのがよくあるパターンです。今回は、会社員の夫に先立たれ、65歳前から遺族厚生年金を受給していた妻の場合を想定した対策をお話しします。65歳以降の年金額を知り納付しておけば良かったという妻が増えているからです。
国民年金の納付者は48.6%と前回調査より5.3ポイント減
国民年金の第1号被保険者1737.1万人の保険料納付状況をみると、納付者が843.5万人(総数の48.6%)(うち完納者38.4%、一部納付者10.1%)、1号期間滞納者455.2万人(同26.2%)、申請全額免除者229万人(同13.2%)などとなっています。総数の50%強の人が納付していない実態をみれば、国民年金の保険料納付をソントクで考えてしまうのも無理は無さそうですね。 そうは言いつつ、特に平均寿命が長い女性は、止むを得ない場合を除き納付可能ならきちんと払っておくことをお勧めします。
国民年金保険料納付状況 ・平成23年
納付者 | 完納者 | 一部納付者 | 第1号被保険者 期間滞納者 |
申請 全額免除者 |
学生 納付特例者 |
若年 納付猶予者 |
48.60% | 38.40% | 10.10% | 26.20% | 13.20% | 9.90% | 2.20% |
5.3ポイント減 | 2.6ポイント増 | 2.0ポイント増 |
※法定免除者・任意加入者・外国人・所在不明者除く・ポイントは前回調査比
事例で学ぶ 会社員世帯・会社員だった夫が亡くなった時の妻の年金
夫 厚生年金20年以上加入または在職中に死亡・夫が生存していれば受給できた報酬比例部分120万円と仮定
(※妻は、遺族厚生年金受給の一定の要件を満たすとする)
<参考>
原則厚生年金に20年以上加入または、在職中に夫が亡くなった場合、夫死亡当時65歳前の妻には遺族厚生年金に中高齢寡婦加算58.99万円が加算され、65歳以降の妻には経過的寡婦加算が加算されます。但し、経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以降生まれの妻には加算されません。
なお、現在65歳を迎えている妻(昭和22年4月2日~23年4月1日生)には経過的寡婦加算は17.7万円です。ちなみに昭和2年4月1日以前生まれの妻には経過的寡婦加算58.99万円が加算されます。つまり経過的寡婦加算の額が減少するこれからの世代は、国民年金の保険料の納付済期間が短いと65歳以降の年金額が65歳前より少ないこともあるのです。経過的寡婦加算が少ない世代のリスクが分かりますね。なお、年齢は平成24年4月1日現在、年金額は平成24年度(総報酬制考慮せず)で試算しています。
経過的寡婦加算額
昭和23.4.224.4.1 | 157,300円 | 昭和26.4.2~27.4.1 | 98,300円 | 昭和29.4.2~30.4.1 | 39,400円 |
24.4.2~25.4.1 | 137,700円 | 27.4.2~28.4.1 | 78,700円 | 30.4.2~31.4.1 | 19,700円 |
25.4.2~26.4.1 | 118,000円 | 28.4.2~29.4.1 | 59,000円 | 31.4.2以降生 | 0円 |
事例1 |
妻(夫死亡時55歳・昭和32年4月2日生まれ) 専業主婦 |
妻は夫が亡くなった後60歳になるまで国民年金の保険料を納付すれば40年の加入となり、65歳から老齢基礎年金は満額の78.5万円受給できます。併せて遺族厚生年金を受給できます。結果65歳からの受け取り額は65歳前より19.66万円増加します。
事例2 |
妻(夫死亡時55歳・昭和32年4月2日生まれ) |
妻は夫が亡くなった後60歳になるまで国民年金の保険料を納付しないと国民年金の保険料納付済期間は26年となり、65歳からの老齢基礎年金は51.12万円の受給です。65歳からの受け取り額は65歳前より7.87万円減少します。
<参考>
60歳以上65歳未満で、遺族厚生年金と妻の60歳代前半の老齢厚生年金を受け取れる場合、どちらか1つを選択します。65歳以降、遺族厚生年金と妻の老齢厚生年金を受け取る場合、原則(1)が優先され、(2)と(3)より低額になる場合は(2)と(3)のうち金額が多い方との差額が遺族厚生年金として受け取ります。
以下の事例3は、(3)と(1)との差額が遺族厚生年金なったれいです。
事例3 |
妻(夫死亡時55歳・昭和32年4月2日生まれ) |
65歳からの年金を楽しみにしていたのに・・・
今回の事例の場合、65歳前の遺族厚生年金には中高齢寡婦加算が58.99万円加算され、65歳以降は経過的寡婦加算が加算されますが生年月日で金額が異なります。だからこそ力を発揮するのが国民年金の納付済期間と言う訳です。年金制度のしくみを理解すれば、安易に未納を選択しなくなるでしょう。
相談を受けた妻の中には夫の死亡後、遺族厚生年金を受給できるから「納付しても意味がないと思っていた」など思い込みで納付しない判断をしていた人も少なからずいます。家計が許すなら是非65歳からの国民年金からの老齢基礎年金額を増やしておきましょう。経済的に困難なら免除申請も相談してみましょう。65歳からの年金額を笑顔で確認できるように・・・