さりげなく厳しくなる高齢期の実態を知っておこう!
平成27年度の年金額はマクロ経済スライドが初めて発動されます。マクロ経済スライドとは、物価や賃金の上昇率により伸びる年金額を抑えるしくみで、伸び率から一定の調整率を引きます。調整率は現役世代と高齢者の数などで決定。平成27年度の物価上昇率は2.7%、賃金上昇率は2.3%、物価が賃額を上回る場合は賃金で年金額が改定されます。平成27年度の調整率は0.9%、特例水準の解消分0.5%(過去分の払い過ぎ)を考慮して年金額は0.9%の引き上げとなります。 これだけみると、平成27年度の年金額は平成26年度より増えるイメージですが、今までの流れからいくと少しニュアンスが異なります。年金制度を継続的に維持するために止むを得ないことを理解しつつ、公表された数字にも注目が必要です。今後、社会保険の負担増が予想される中、年金が高齢期に占める重みが増します。とは言え、ただでさえ難しい年金制度、マクロ経済スライドを理解するのはそう単純ではありません。【平成27年度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金月額の例】
平成26年度 | 平成27年度 | |
国民年金 老齢基礎年金(満額) | 64,400円 | 65,008円 (+608円) |
厚生年金 ※ (夫婦2人分の老齢基礎年金含) | 219,066円 | 221,507円 (+2,441円) |
なお、賃金や物価が前年度を下回ったときは年金額の引き下げにマクロ経済スライドは 適用されません。賃金や物価が上がってもマクロ経済スライドを適用すると年金額が下がるときは前年度の年金額が保障されます。但し、年金財政が厳しい中、将来変わる可能性もありそうです。高齢期の家計管理に甘めは禁物でしょう。
ところで他の人はどのくらいもらっているの?
年金相談で多い素朴な質問が、「ところで他の人ってどのくらいもらっているの?」。 年金額は加入期間や給与などで異なり一律にお応えできないので、そんなときお応えするのが、上記の厚生労働省が公表している標準世帯の年金額です。多いか少ないかの受け止め方は人それぞれですが、自分の方が多いと一様に機嫌がよくなります。 但し、平成26年度発表の標準的な会社員世帯の年金額は約22.7万円でした。平成27年度発表のみみれば平成26年度比増えていますが、マクロ経済スライド発動により、これまでの金額を一旦リセットして計算(本来水準の計算式)し直して、平成26年度公表の年金月額を例示しているので、年金額も違ってくるのが分かりますね。あくまでイメージで捉えて下さい。【平成26年度公表の年金月額の例】
平成25年10月~ 平成26年3月 | 平成26年4月以降 | |
国民年金 老齢基礎年金(満額) | 64,875円 | 64,400円 (-475円) |
厚生年金 ※ (夫婦2人分の老齢基礎年金含) | 228,591円 | 226,925円 (-1,666円) |
本来水準と特例水準の年金額改定の推移
平成26年度までの年金は、過去物価下落時に年金額を据え置いたため特例的に本来より高い年金額が支払われていました(特例水準)。このままでは年金財政も厳しいため、平成25年度から平成27年度までの3年間で特例水準が解消されマクロ経済スライドが発動されます。【特例水準2.5%の解消の流れ】
平成25年10月~ | 平成26年4月~ | 平成27年4月 |
マイナス1% | マイナス1%の予定が、物価が0.3%上昇し実際はマイナス0.7% | マイナス0.5% |
【平成27年度の年金額改定について】
※出典:厚生労働省